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価値の創出。




しゃあ!!


今し方、映画『潮時』に関わって下さったキャスト、スタッフ、事務所、全ての方にお礼とお金に関するメールを送ることができました。




薄給だけど、僕ができる限界の上乗せをして、お支払いをする。

お金を支払うことは、僕にとって、喜びでもあります。

経済学部卒ですから、貨幣で計れるものは明確な価値なのです。

価値創造ができていることが嬉しいのです。




だけど、そんな僕が言うのもなんですが、

お金じゃないんですよね。




俳優をやっていてもいつも思います。

お金のために受けた仕事からは、あまり幸せを感じられませんでした。

ギャラなんか要らない!と思って受けた仕事の方が断然実りがあったし、今でも心に残っています。



今の僕の現場は、お金以上の何かをみなさんにお返しできることを目指しています。これをベースにして作品を作っていくと、いつかお金も伴ってきて、本当に良いチームになっていくと信じているんです。

『良い作品を作りたい』
『良い仕事をしたい』

この気持ちは、絶対に間違いないんです。
ここからスタートすべきなんです。何事も。

お金は後からついてくる。







さて。

今日書きたいことはもう一つ別にあります。





立島文夫さん




映画『潮時』で、忘れられない出会いがありました。


僕たちに無償で邸宅を提供して下さった、立島さんです。



ロケハンをしている時に車の助手席に座っていた僕は、小高い丘の上にチラッと見えた一軒家を発見しました。

「あ!ちょっと止まって!あそこに家あるよ、行ってみよう」

と言ってなんとなくその家に行ってみたのが始まりです。


そこには立派で大きな邸宅がありました。

何度かピンポンを鳴らしても出てこなかったので留守だなぁと思って諦めようとしたら、うっすらラジオの音が裏から聞こえてきたんです。

そして裏に回ってみると小さな畑があって、そこで立島さんが農作業をしていました。「いた!!!」と思って「すみませーーーん!」と仕事中の立島さんを引っ張り出して、まずは何者かを説明しました。

いきなり家に押しかけて来て、どう考えても怪しげな奴らにしか見えないんですよ。この町の者でもなければ、セールスでもない。スーツ姿でもない私服のチャラチャラした奴が来るんですから、どう考えても怪しくなっちゃうんです。それも分かっているので直球で攻めるしかない。


「映画のロケ地で使わせて下さい!!!!タダで!!!」


と思い切って言ってみると、ちょっと食い気味で


「オールオッケー!好きに使ってくれ!」


と返ってきて逆にめちゃくちゃ面食らいました笑



よっしゃーーー!!!!!!!

と喜んだのもの束の間でした。

いざ家の中を見せてもらうと、ほとんど物がなくて、生活感の薄い家でした。それもそのはず。別荘として使っている家だそうで。はっきり言って無茶苦茶綺麗で広くて最高すぎる家でした。だけど!ロケ地としては使えない!!美術を入れ込みまくって作るか!?と一瞬考えたけど、それは費用が嵩みすぎる。かなり悩みましたが、泣く泣くロケ地としては手放すしかありませんでした。




待てよ。




自分でもその後に自分の口から出てきた言葉に驚きました。


田中「ロケ地としては使えませんが、ホテルとして貸して下さい!!!タダで!!」

立島さん「オールオッケー!!!」



ひっくり返りました 笑




世の中、いろんな人がいるもんですね 笑





かくして、この邸宅に何十人ものキャストスタッフがやってきたわけです。

「自由に使ってくれ!」

と言われはしましたが、本当に何もかも自由に使わせて頂きました 笑

そして立島さんは家をお貸しいただいただけでなく、川のロケ地を探してきてくれたり、ご飯を作ってくれたり、子供達やキャストスタッフのためにバーベキューまでご用意して下さいました。

一緒に土木作業もさせたり、どこまで俺はこき使うんだ!と自分を叱ってやりたくなりますね 笑







ゆっくりと立島さんと話す時間がありました。その時に立島さんから言われた言葉が忘れられません。


「監督。監督は俺の若い頃にそっくりだよ」


実は立島さんは40歳で会社を立ち上げて、ずっと横浜で社長をやっていらした人でした。以降30年間会社を大きくして、最終的にはその会社を売却。数年間売却先の会社で顧問をして引退。今に至るわけです。

色々と立島さんのお話を聞かせて頂きました。僕にとっては至高の時間なんです。シナリオハンティングで北海道に行った時に出会った人生の先輩方と過ごした時間は、僕にとってかけがえのない時間となりました。立島さんとの時間もまた、同じようなニュアンスが含まれています。

人生の晩年を迎えた方がかけてくれる言葉には重みがあります。



僕は目指しているものはハッキリしていますが、そこへの道は草むらだらけで、何一つ道なんて見えていません。そんな状態だからこそ、人生で成功した人から「似てる」と言われると嬉しい。勇気をもらえます。俺も成功するぞ!!とパワーをもらえます。



たった3日間の滞在だったけど、これは別れではないです。

僕はまたこの地を何度も訪れるのだと思います。

それが、「価値」です。

出会いも価値。

その後に続く時間もまた、新たな価値。



沢山の価値を生み出せたこの映画は、かけた時間と労力と金額分は既にペイしているんですよね。

既に勝った映画です。

だけど、僕は強欲ですから、大勝利に向けて、これから映画を完成させます。世界で評価してもらえるような作品に仕上げる。

それが、一つの恩返しになりますね。


それが一番じゃないのも分かっています。

一番の恩返しは、またこの地を訪れ、一緒に酒を飲んだりバーベキューをしたりして過ごす、他愛のない時間です。






だから







また、行きますね。











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