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変わった役割 変わらぬ役割

2024年12月7日バスケットボールB3第11節ゲーム1
〇岐阜スゥープス 76-55 湘南ユナイテッドBC

圧倒的な守備力もクラブタイの7連勝を決めた要因

クラブ史上タイとなる7連勝を決めた湘南ユナイテッドとのゲーム1。勝敗のカギを分けたのは第2ピリオドだった。拮抗した展開の中でスゥープスの象徴・田中昌寛の3ポイントシュートが3連続で決まる。チームに勢いをもたらし快勝に導いた。久しぶりにチームのトップスコアラーになったベテランは、役割を変えながら今も光り輝いている。

田中と初めて会ったのは2013年、まだアマチュア時代のスゥープスが全日本クラブバスケットボール選手権大会で全国優勝を果たした直後だったと思う。当時某放送局でスポーツコーナーを担当しており、どんなチームか気になって取材に出掛けた。

そこで見たのはとんでもない光景だった。夜、仕事を終えたメンバーが集まり練習を開始する。中学時代にバスケットボールを経験していて、そのスポーツのしんどさは分かっていたが、彼らの練習はダッシュやパス&ゴーなどすべてにおいてハードだった。たぶん自分が参加したら5分も持たないだろう。あまり比較をしてはいけないが、某プロスポーツの選手よりも厳しい練習をしていると感じた。しかもスゥープスは1銭にもならないアマチュアである。

全体練習がない日、田中は小学校の体育館を借りて主にシューティングなどの自主練習をしていた。それは取材があるからではなく毎日の行動。自宅のリビングにはトレーニング機器を設置して奥さんを困らせていた。なぜそこまでバスケットボールに打ち込めるのか、「強いチームになって全国優勝したいから」(田中)。それだけが理由だった。

シュート以外のプレーでも成長を見せるベテラン

そこから、自分の中ではスゥープスがメインコンテンツの一つになった。たぶん、ただ単に全国優勝していただけでは心は動かされなかっただろう。努力の度合いが違ったことでがぜん興味がわいた。

愛知の小牧市を中心に行われた2014年の全国クラブ選手権はもちろんカメラを持って取材に。圧倒的な強さとチーム力を見せたスゥープスは見事に連覇を達成した。翌年は優勝こそできなかったものの、準々決勝だったと思うが、大接戦の第4ピリオドに田中が4本の3ポイントシュートを連続で決めたシーンが強く印象に残っている。今節の第2ピリオドと同じような「打てば必ず決まる」、そんな感覚だった。

その後スゥープスはプロ化し、田中も大逆転の3ポイントシュートをブザービーターで決めるなど、変わらずチームの中心として躍動してきたが、今季からはベンチスタートとなっている。もちろんそれは悪いことではなく、チーム内の役割が少し変化をしたということ。決まり出せば止められない、クラッチシューターは健在である。

もう一つ変化した役割があるという。出会ったころは夫婦2人暮らしだった田中も今は3児の父親だ。

「今日は久しぶりに家族が観に来てくれて、『努力をすれば結果が出るよ』ということを子供たちに見せることができたは良かったのかなって。実は昨日は一番下のこどもの夜泣きがすごくて、僕じゃないと泣き止まないので少ししか寝られなかったし、年末になってスポンサー回りもあって忙しかったですけど、その中でも勝てたことは良かったですね」と笑顔になった。

会社の取締役、選手、子育ての3刀流。田中昌寛はクラブの変化に対応しながらプレーオフ進出を目指している。

【コメント】
田中昌寛

 もっと多く試合に出場したと思ったんですけど、結果的には13分でしたね。でも仕事はできたのでほっとしています。僕に求められているのじゃシュートを打つことなので、1本目はシュートブロックに遭いましたけど、それは24秒ギリギリだったので、『打ち切れているんだ』と自分に言い聞かせて、次からは気持ちがつながったシュートになったと思います。
 僕が出場するときのメンバーは毎回違って、第2クォーターはフォトゥ選手からのパスでしたけど、実際よく練習しているメンバーだったし流れだったので、ここに動けば必ずボールが来るだろうと、チームで決めたショットだったと思います。
 ベテランだからこそ、今のポジションで出来るんだと自分に言い聞かせていますし、ショットもそうですけど、今シーズンはこれまであまり関わって来なかったオフェンスリバウンドやディフェンスリバウンドも意識をしていて、今日は3本取っていますし、そういうところも自分の中で成長している部分かなと。シュート、リバウンド、体をしっかり当てる守備、この3つを意識してやれば、いい結果につながると思っています。
 7連勝ですが、自分としては連勝は意識していなくて、本当に目の前の1戦しか考えていませんし、内容的にも後半戦につながると思っています。スゥープスは若いチームですけど、多くの世代の方々が見に来てくれているチームなので、本当に自分と近い世代の方にも何かのメッセージを伝えられる試合ができたらいいですね。観客も平均1500人を超えていますし、自分も営業をやっている中で成績を出して、プレーオフに進出して盛り上げて、いい形でB1のライセンスがもらえるように頑張っていきたいと思います。

小林康法HC

 自分たちがやりたい強度で試合を進めることができました。選手が成功体験をして、勝利を重ねて自信を付けてきました。プライドを持ってやれるようになってきたことが誇り高いですし、勝利に大きく繋がっている部分だと思いますし、リバウンドとか50-50のボールを打ちが相手より上回れたことも、勝ちたい気持ちが出ていたからだと思うので、細かな部分ですけど「細部に神は宿る」という意味でも、勝ちにつながっている大きな要因かと思います。
 欲を言えば簡単なミスをしないでいいトランジションにつなげることが次の課題で、やっぱり簡単なターンオーバーは相手に余裕を与えてしまうので、今のチームとしての課題だと思います。
 湘南さんは本当にアグレッシブで、アタックメンタリティも持ってプレーしてきましたが、選手たちはよくやってくれたと思います。チェンジングディフェンスとかゾーンディフェンスで、うちがスローダウンしそうになったときに、本当に昌さんが思い切って3ポイントシュートを打ってくれました。うちはいいシューターが揃っているので、自信をもって打っていきたいと思います。
 昌さんはストイックですし、年齢を感じさせないくらい普段からの準備がすごいです。精神的にも安定しているので、安心してコートに送り出せる選手です。スタートメンバーというのはやっぱり価値があるので、そこを目指してもらいたいですけど、うちのチームに関してはそこにとらわれる必要はないし、全員ですが、試合に出た時に自分の役割を理解して遂行してくれることが大事で、みんなそういうところは安心して送り出せるので、うれしく思います。
 7連勝は通過点ですし、本当に目の前の試合で勝利を重ねていくだけです。明日新記録を達成して、新しい歴史をこのメンバーで築くのが目標ですが、それだけではなく、この後は東京ユナイテッドや岩手ビッグブルズの上位チームと当たるので、そこに向けてチャレンジしていきたいと思います。

ハンター・コート

PGとしてうまくゲームをコントロールをシューターの力を引き出した

 全体的に僕らのスタイルで1日を過ごせたと思いますけど、やっぱり隙もたくさんあった試合で、上位はそういう細かなところを突いてくるので、厳しくまとめて明日につなげないといけないとみんな考えています。
 僕らはディフェンスで相手がやりたいことをどれだけ邪魔できるのかにこだわっています。相手がやって来るものに対して守ろうではなく、やらせないという守備の仕方なので、明日も相手は新しいことを出してくると思いますけど、そこに対して先手を取らないといけない。小林HCに求められていることは、40分間やり切ることで、相手とか点数とか関係なくて、常に自分がどれくらい成長できるのか、どれくらい良いバスケができるのかです。一人ひとりがつながっていないと、隙間ができるスタイルなので、ミスをしたらちゃんと話し合って、次はどうするべきか意見を出し合っていけば、良い結果につながっていくと思います。
 今日は得点が少なかったですけど、そこまで気にしていません。オフェンスに頼るチームにはなりたくないので。ただ打つべきシュートを打てる試合だったと思うし、昌さんとか(岩松)永太郎とか(卜部)兼慎さんにはシュートをどんどん打ってほしい。先週、昌さんは出場した7分間で1本しか3ポイントシュートを打っていなくて、自分たちPGからしたら、それはもっと打たさないといけない部分で、俺にも責任があるところだと思います。どんどんいいタイミングで打てるようにコントロールしたいです。

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