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パナソニックコネクトのチューナー搭載サイネージコントローラーは結構かゆいところに手が届いていそう
JX通信社/WiseVine 藤井です。公共営業という仕事をしていると、どうしても下半期は「どこに出張しているか」がイコール営業秘密なので、SNS上では低浮上になりがちです。そのうえ能登半島地震などあり、防災DXを本業とする身として、わたわたしていました。
JX通信社としての最近の取り組みは、会社のnoteをご覧ください。
ところで、Facebook上での広告などは本当によくターゲティングができているなぁと思うのですが、非常にニッチな新製品の広告がフィードに流れてきました。
実はこの製品、従来品になかった特徴を多数持っており、「まさにこういうのが防災サイネージとしてほしかった」と感じるところが多いので、メモしておきたいと思います。
防災用サイネージのドライバは難しい
藤井は前職で、デジタル放送波(i-dio)を使った緊急放送サービス「V-ALERT」を開発しており、その電波を受信して、必要なターゲットの端末だけが強制起動する受信機も、企画開発していました。
その中で、テレビに接続して使用するタイプの受信機も企画しており、「テレビオンボックス TO-01」という製品名で、初期ロットの製造まで関わっていました。放送自体が停波してしまったので今や幻の製品です。
![](https://assets.st-note.com/img/1709183907251-kTR4992vbn.png)
Androidベースで作っていて、緊急放送を受信すると、テレビの電源を入れたり、HDMI入力に切り替えたりすることができるのが売りでした。この機能はHDMI-CECという技術で実現していて、テレビの説明書では独自拡張を加えて「ビエラリンク」とか「ブラビアリンク」といった名前で、各社のテレビとHDDレコーダーを揃えると連携動作するよ、などと言われているものが、これの亜種のようなものです。
亜種がたくさんあるがゆえに、ちゃんと動作しない組み合わせもあるのですが、そもそもの出自が外部録画機器と連動した電源動作などを目的としたもので、例えば「強制起動はできるが、オフにはできない」とか、「テレビのチャンネルからHDMIに切り替えたと、再度テレビに戻すことはできない」といった課題がありました。外出中に電源が入ると、ずっと入りっぱなしになってしまうという…。
かつ、防災用サイネージ用途として使うにあたっては、安定的に動作することが必要ですが、Androidなどをつかって運用していると、どうしても長時間の動作でフリーズしたりすることが、なかなか避けられませんでした。
サイネージドライバは保守可能な専用品が望ましい
現職でもデジタルサイネージの事業者様とのやりとりがそこそこあるのですが、サイネージドライバの設計は本当に千差万別で、通常のPCを使ったものから、専用のボックスを用意したものまで、実に様々です。
屋内、屋外など環境要因に加え、例えば地下鉄駅などでは、駅施設に帰属する部分では夜間は突然駅ごと停電するとか、コンピュータ機器には厳しい条件があります。また、線路から鉄粉が飛んでくるので、防塵性も必要です。
そもそもサイネージ機器は保守しにくい場所に設置されがちなので、専用品で、遠隔監視して、壊れたら丸ごと交換できるようなものが望ましいと個人的には強く思います。
テレビそのものじゃだめなの?と思われる方もおられるでしょうが、普通のテレビはサイネージでよくあるような縦型に設置しやすいようにできていませんし、そのように設置すると視野角がおかしくなったり、故障しやすくなる場合もあります。
みずほ銀行がオシャレな青画面になっててワロタ pic.twitter.com/mGR2U8h0CI
— izm (@izm) December 29, 2019
こういう状況はあんまり見たくないですよね。
地デジ(ISDB-T)の緊急警報放送対応はうれしい
日本のテレビの放送規格はISDB-Tというもので、同じ方式を採用している国が非常に少ないがゆえに、昨今の日本国内のテレビメーカーが減少している状況では、ISDB-Tの放送に含まれるファームウェアデータの破損が原因でテレビが再起動を繰り返すとか、開発体制に難があるのだろうな…と感じるような事故も何度か耳にしました。
実は、日本のISDB-Tには、緊急警報放送(EWS)の仕様が組み込まれており、定期的にNHKでは試験放送も行っています。
この信号は「ピロピロ音」として一般に認識されていますが、アナログテレビ時代にはまさにこの音声自体がデータだったものの、地デジでは、MPEG2-TS内にあるAC信号という、デコードに電力をあまり使わない部分にデータが埋め込まれています(音声はわかりやすさのために残してあるもの)。
こうした仕様は海外メーカーではきちんと動作検証されにくく、実装自体が減りつつあります。EWSがきちんと実装されていて、動作も確認されている国内メーカーの機器というのは、ありがたいものだとおもいます。テレビそのものとしては売られていても、外付けのチューナーとして搭載されているのは貴重です。
(調べてみると、パナソニックはカーナビでもちゃんとEWSを実装しているみたいですね)
そういえば、CATVや自主放送にも対応しているのも、ケーブル局向けのSTBなども大量に製造しているパナソニックならではだと思います。
テレビと同一性保持権
もうひとつ、ちょっと珍しい仕様として、サイネージ部分と放送部分をミックスで表示できる機能が実装されているようです。
![](https://assets.st-note.com/img/1709201409450-RASQ8jreOL.png)
この図に「放送の一意性に要配慮」という注釈がついているのには深い事情があって、これまでテレビ局は、テレビメーカーに対して「どこまでが放送で、どこからが放送でないのかわかりにくいような表示」をするような機能を実装してはならない、という強い要請をしてきた歴史があります。これはテレビの内容だと思ってテレビ局にクレームが来るから、とか、著作権の問題とか、いろいろと合理的な背景事情もあるのですが、それによって、たとえばインターネットへのアクセス機能をテレビに搭載したりするときに、テレビを表示しながらコンテンツも表示するような機能の開発に、一定の制約がかかっていました。簡単に言えば、ニコニコ動画みたいな機能はだめだったわけです(そういう中で、torneは画期的なデバイスでした)。
今回、そこを乗り越えて重畳表示機能がついているのは、注目に値すると思います。
NHK受信料問題
ところで、テレビが受信できるということは、NHKの受信料がかかるということも意味します。事業所向け受信料は家庭用とは別の規定がありますが、特に公益性を重視した割引制度はありません。この経済的負担がネックで、これまで公共の場のサイネージに、テレビの受信機能がつかなかった、という話もしばしば耳にしています。
そんな中、東日本大震災をきっかけに、駅などで緊急時に限り、改札近くのサイネージでNHKの放映を行う取り組みが少しずつ広がっています。
この取り扱いについては、デジタルサイネージコンソーシアムが、NHKの見解をガイドラインの附章として掲載しています。NHKとの協定締結が必要なんですね。たいへんだなぁ。
https://digital-signage.jp/wp-content/uploads/DSC_saigaiunyouguide_ver2.pdf
というわけで、サイネージと防災について、若干マニアックな解説を交えて、かゆいところに手が届いているパナソニックのサイネージドライバのご紹介でした。なお、私はこのメーカーさんから特に何もいただいておらず、勝手に調べて書いておりますので、詳しいことはメーカーさんにお尋ねください。
私共JX通信社では、サイネージに限らず、様々な防災情報メディアに対して必要な情報をお届けするお手伝いをしています。弊社にお役に立てそうな事がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
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![藤井大輔(JX通信社/WiseVine)](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/49266086/profile_159d7439c7b6acea8d8a8f0e78620518.png?width=600&crop=1:1,smart)