業績書を書こう(2) ~教育業績編

研究業績の書き方の記事を先に公開しましたので、続いて教育業績の書き方についての記事も公開します。

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公募書類を書くとき、一番面倒なのがこの「教育業績」です。
当たり前ですが、教育経験がないと、この欄は書けません。
大学での非常勤講師の話がまわってきたら、可能な限り受けましょう。大学教員がまわってこない場合は、高校の非常勤や常勤のクチを探しましょう。

ここで問われるのは、

1.教育方法の実践例
2.作成した教科書、教材
3.教育上の能力に関する大学等の評価
4.実務の経験を有する者についての特記事項
5.その他

といった項目です。文科省指定のフォーマットで、多くの大学で同じことが問われます。つまり、一度データを作成してしまえば、あとは使い回しと書き足しでどうにかなる、わけですね。もっとも、公募の条件によって微調整は必要になりますが。

さて、まずは「教育方法の実践例」から確認しましょう。場合によっては「教育方法の改善」になっていることもあります。
最近は、どこの大学でもFD(Faculty Development)活動、つまり教育の向上が重視される傾向があります(形式的であるにせよ)。そのため、常に教育方法を改善し、より実効性の高い教育を行っていることが(かたちの上だけかもしれませんが)重要だと考えられています。

とはいえ、何についてどう書いたらいいのかわからない、ということもあるでしょう。私も、当初はどういうことを書けばいいのか、さっぱりわかりませんでした。今思えば、かなりとんちんかんな業績書を書いて出してしまったこともあります(そりゃ、落ちるわな)。

その後、経験を積んだり書類を書き続けた結果、こういうキーワードを織り込めば、それっぽい文章になるんじゃないか、というものを見つけました。以下がそのリストです。

1.アイスブレイク
2.グループワーク
3.ブレインストーミング(ブレスト)
4.KJ法
5.マインドマップ
6.パワーポイント

それぞれの言葉について、詳細な内容は他の資料で確認していただくとして、ここでは私なりの解釈を示していくことにします。


1.アイスブレイク

自分自身が学生であったときでもそうでしたが、講義形式の授業で学生に何かを尋ねても答えてくれることはなかなかありませんし、演習形式の授業ですら、学生による「活発な質疑」が自然と行われることは、まったくもって皆無といっていいでしょう。

彼らの大半は、単位がほしいから授業を受けているのであって、自分の意見を主張し、議論をして自らを高めようなどとは考えていないからです…と言い切ってしまえばそれまでですが、彼らも、何か発言して、それが誰かに認められれば「楽しい」と感じるでしょう。そうすれば、授業に対するモチベーションも向上するはずです。

そのため、授業の空気を暖める必要があります。そこで用いるのが「アイスブレイク」です。これは、演習形式の授業で特に効果を発揮します。

授業に参加している学生は、もちろん、仲のいい友人といっしょに参加している場合もありますが、ほとんどが「他人同士」です。あえて他人と意見の交換をしようとは思いませんよね。そのため、授業に参加しているみんなが「他人同士でない」ように仕向ける必要があります。

アイスブレイクで重要なのは、学生が自分のことを語り、相手のことを聞くようにさせることです。そのため、簡単なゲームを行います。はっきり言って、茶番です。しかし、その茶番を全体で経験することで、お互いの心が氷解するのです。

一番簡単なアイスブレイクは、「自己紹介」です。これを、何らかのゲーム形式で行うことで、流れをスムーズにします。たとえば、「数珠つなぎ型」で、学生Aが自分の趣味などについて語ったあと、別の学生Bに語ってもらう内容を示す、だとか。


2.グループワーク

これも、演習形式の授業で効果を発するものです。

その名の通り、いくつかのグループに分かれてもらい、そのグループで作業をさせます。グループは自分たちで決めてもらう方法と、学籍番号等で教員が決める方法と、くじ引きなどで決める方法があります。一長一短あって、どれがいいとも言えません。

グループの構成が決まったら、リーダーを決めます。そのあと、グループごとに課題を与えて、調査や討論をしてもらいます。授業内容によって、その内実は異なります。

ここでは、グループによる役割分担やリーダーシップ、討論を学んでもらうのが主眼です。つまり、業績書にもそのように書く必要があります。


3.ブレインストーミング(ブレスト)

KJ法で有名な故川喜田二郎さんの『発想法』でも紹介されていたので、かなり古典的なスキルですが、いまだに古びません。

ブレストの基本は「とにかくたくさんの意見を、否定せずに出していく」ことにあります。というと、とりとめのない愚考がフィルタリングされずに提出され続けるような気もしますが、気にしないことにしましょう。
実際、どうにもならないような、突拍子もない意見が実は効果的だったりする、ということもないわけでもありませんし。

私見ですが、実際にブレストでどういうアイデアが得られたか、はそんなに問題じゃなくて、「応募者には学生に話をさせる能力がある」と思わせるのが大事だと思いますよ。


4.KJ法/5.マインドマップ

これらは専門の解説書があるので、それを参考にしてください。
というか、「研究」をしていれば、そういった思考法に触れる機会も多いでしょうから、すでにご存じかもしれませんね。


6.パワーポイント

自然科学や社会科学の方なら当たり前のツールであるパワーポイントも、人文系ではまだ否定的な扱いを受けることも少なくありません(分野によるでしょうけど)。

そういった状況で、授業の中でパワーポイントの積極使用を謳うことは、実は諸刃の剣です。「コンピュータに強い」あるいは「クリエイティブな授業をしている」というような評価を得られるかもしれない一方で、「浮ついてる」「伝統的でない」と評価されることもあるからです。中には嫉妬かやっかみみたいな評価もあるでしょうけど。
応募先の教員一覧を見て、積極的にコンピュータを導入しているひとが多いなら、書いてもいいと思います。


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ドクター修了間近のひとで、どうにも教育方法の実践例を埋められなかった方なんかには、参考になったような気がします。


で、これが一番大事なのですが、嘘を書いてはいけません
実際にはパワーポイントを使ってないのに使いこなしてると書くだとか、してもいないブレストのことを書くだとか。

なので、本末転倒だとは思いますが、業績書に書けるような授業を組み立てなければならないかもしれません。

ただ……

この項目、資料を読むひとたちはどれくらい真剣に目を通してるのか、個人的にはちょっと疑問です。実際には、ほとんど気にしてないんじゃないか、と思うこともしばしば。

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