自然科学と伝統鍼灸と気のもやもや3〜経絡を流れるとされる気〜

今回は、人体の気が流れるとされている経絡についてです。簡単に話ができる所で頑張ってみます。

4.経絡(けいらく)

 経絡は伝統鍼灸にとっては非常に重要な概念ですが、厄介なことにはっきりとした形態として確認されていません。なんせ、一連の話の主題である「気」が流れているのですから、「気」って見えますか?

 1960年代に「ボンハン学説」というのが出ました。経脈に該当するボンハン管、経穴に該当するボンハン小体が見つかったという事で鍼灸分野に衝撃が走り、多くの学者が追試にあたりました。いよいよ経絡と経穴の本体としてのモノが見つかるか?というような状況でしたが、結局よく分かりませんでした。最近は筋など様々な器官を包む「Fascia」と経絡の関連性が話題になっていますね。ちなみに私は、話題になった『閃く経絡』は本屋でちら見したのですが、まだ読んでおりません。

 経絡とは何かを考える前に、気や血が流れているとされている経絡について、まずは東洋医学ではどのように説明しているかを知る必要があると思います。

1)経絡という言葉について

 経脈と絡脈の総称、経絡には気血がめぐり、体を栄養し、臓腑や諸器官の機能の有機的な調和に働いている。となっています。脈管系と神経系を合わせたような機能ですね!両者の違いについては後で述べます 。

 鍼灸の古文献には、このような経脈ととその上にある経穴(ツボ)の図が載せられています。

岡本一包 『臓腑経絡詳解』京都大学図書館蔵
https://rmda.kulib.kyoto-u.ac.jp/item/rb00000298#?c=0&m=0&s=0&cv=53&r=0&xywh=-3030%2C-251%2C9287%2C4160

経脈は臓腑(内臓)に対応していて全部で12本あります。


2)経脈と絡脈の違い

 一般で、そして鍼灸師でも「経絡」とよく言っていますが、経絡は「経脈」と「絡脈」を合わせた言葉です。その違いは?経脈は人体を上下に流れ体の内外(臓腑と体表)を通じさせる経路であり、経絡の主幹である。そして身体の深部、分肉の間を流れるとなっています。

 絡脈は、経脈から分れた細くて小さい経路で、主に身体の浅部を流れる。そして経脈をつなぐ重要な絡脈が設定されています。

 経脈と絡脈の関係をモデル図にするとこうなります。

 筋と筋の間、皮膚と筋の間を分肉とするとそこを流れる経脈のモデル図はこうなります。


 中医学では経脈には営気(栄養する)、経脈の外を衛気(体を防衛す。)という気が流れているとしています。そして、血は気に押し出されているイメージです。
 

 物理的な器官の働きとしては、栄養としては自律神経系の制御を受けて心臓から血管を通じて血液を全身へめぐらせる一連の機能を指している様に見えますね。気血が全身をを潤滑にめぐることによって全身の機能は正常に働きます。
「衛気」については、皮膚の感覚受容器や神経の働き(皮膚刺激で治療できる→気が動くということ)とかバリア機能とかで説明できそうです。

3)経筋

 一般の方は、あまり耳慣れていないと思いますが経脈上の筋肉です。古文献に残されている経筋のルートは経脈のルートと似ていますが少し違うところもあります。
私は、経脈に対して川や地下水の流のイメージを持っているせいか経筋には土地のイメージを当てはめています。川は管でなく溝ですし、地下水が流れる通路は地層の間の隙間ですので、はっきり目に見 える器官として経脈を捉えにくいでしょうね。

 古典の経筋と実際の解剖図との対応については既存で見たことがないので、ためしにやってみました。こうなるのかな?なかなか面白いですね。ツボの細かい位置が見えてきそうです。
筋膜でつながった機能系として説明できるのは、どちらかというとこちらかもしれないと思います。

4)経脈を流れる気についての私見

 この「気」は経脈という機能系の個々の機能を指しているというのが一番すっきりするのではないか、いずれ全ての気の機能に関連す物理的、形態的背景がはっきりするのではないかと思っています。「衛気」の事を無視すればです。

 伝統的な鍼灸では、気が動けば血が動くと考えて鍼灸をします。体の表面や体内の筋をを物理的に刺激して血流を誘導させているのを気の働きとするのが一番すっきりしてそうです。ところが、鍼灸師の中には、体に鍼を刺さず皮膚というかツボに鍼をかざす治療を行って効かせている人たちがちらほらいます。(私も経験があります・・・

 鍼で「衛気」を操作してると説明されるのですが、皮膚表面の衛気の流れは皮膚の本当に表面だけでなくて厚みをもって流れてるんですか??? 
非常にもやもやしてきました。

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