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「お母さん、もう放っておいて!」思春期の娘の心を閉ざさないための声かけ3ステップ

「先生...…もう限界です。娘が全く言うことを聞いてくれなくて..….」

「先生、うちの子、最近部屋に閉じこもってばかりで...…。声をかけても『うるさい!』って。勉強のことを言おうものなら、もう完全シャットアウトです..….」

「朝、テスト勉強をしていない娘に『もっとしっかりしなさい!』と声を荒げてしまったら、泣きながら部屋に閉じこもってしまったんです」

思春期特有の難しさに直面されている保護者の方々、きっと似たような経験をされているのではないでしょうか?10年以上小学生の指導に携わってきた塾講師として、こうした相談を受けることは少なくありません。

今日は、特に学習面での声かけについて、現場での経験と子どもの発達心理の知見を交えながら、思春期の娘さんとの関係を良好に保ちながら、学習をサポートする方法をお伝えしていきます。

▶︎現在、X(旧Twitter)でも「無料相談」を受け付けています。



第1章:なぜ、いつもの声かけが裏目に出るのか

「宿題やった?」
「テスト近いわよ?」
「お姉ちゃんになったんだから、しっかりしないと」

どれも、お子さんのことを思っての言葉かけですよね。
しかし、なぜかうまくいかない……

そんな時、実はお子さんたちの中では、じわじわと大きな変化が進行していたのです。

・自己意識の芽生え
・友人関係の複雑化
・身体の変化への戸惑い
・学習内容の難化による不安

これらが重なり合って、お子さんたちの心は揺れ動いています。
実際に私が出会ったお子さんや、私の塾での対応を例にしながらお話します。

ある日の教室での出来事

「先生、私、もうダメかもしれません……」
いつも明るい小学4年生の女の子が、珍しく暗い表情でつぶやきました。

「お母さんが『お姉ちゃんはもっとできてたのに』って……でも、私、これでも頑張ってるんだよ……」

このお子さんもそうですが、思春期の子どもたちは「見えない重圧」を抱えています。

思春期のお子さんの脳で起きていること

実は、10-12歳のお子さんの脳では、驚くべき変化が起きています。

感情を司る扁桃体が急速に発達し、些細な言葉でも強い感情反応を引き起こすようになるのです。同時に、理性を司る前頭前野はまだ発達途上。子どもたちが反発するのは、勉強そのものではなく、「自分はダメな子なんじゃないか」という不安や恐れからなのです。

つまり、大人が考える「当たり前の声かけ」が、思春期の子どもにとっては想像以上の重圧(プレッシャー)となってしまうことがあります。

例えば、以下のような声かけです。

よくある「逆効果な声かけ」と、その理由

1. 「もっとしっかりしなさい!」
  - 子どもの受け取り方:「私はダメな子なんだ」
  - 心理的影響:自己肯定感の低下

2. 「お姉ちゃんの時は...」
  - 子どもの受け取り方:「私は期待はずれ」
  - 心理的影響:比較による劣等感

3. 「なんでできないの?」
  - 子どもの受け取り方:「私には能力がない」
  - 心理的影響:学習性無力感

では、どのような声かけが良いのでしょうか。
具体的な例とともに3ステップでご紹介します。

第2章:声かけ3ステップ

Step 1:「承認」から始める

* 効果的な声かけの例
- 「今日も粘り強く取り組めているね」
- 「自分なりの解き方を考えられたのね」
- 「少しずつうまくなってきているよ」

避けたい声かけ
- 「まだその程度なの?」
- 「もっと頑張りなさい」
- 「なんでこんな簡単な問題ができないの?」

Step 2:「選択権」を与える

▶︎心理学的根拠
思春期の子どもたちは、自己決定権を強く求めます。これは、アイデンティティの確立に重要な過程なのです。

「これをやってほしい」ではなく、「AとB、どちらを先にやる?」というように、選択肢を与えることで、子どもが主体的に行動できるように促します。また、「なぜ勉強しないの?」ではなく、「どうして勉強するのが難しいのかな?」と、問いかけることで、子どもは自分の考えを言葉にする機会を得ることもできます

効果的な対話例
母「今日の勉強、いつやる?」
子「うーん...」
母「夕食の前と後で、どっちが集中できそう?」
子「夕食の後かな...」
母「そっか、じゃあその時間に声かけようか」

「やるの?やらないの?」という2択ではなく、やることは前提として「いつやる?前?後?」と選択肢を与えてあげましょう。
このような会話は、子どもに主体性を持たせながら、学習習慣を築いていけます。

* 効果的な声かけの例
- 「勉強は、夕食の前と後で、どっちがやりやすい?」
- 「机で勉強する? リビングでする?」
- 「疲れてるよね。5分休憩してからにする?」
- 「その漫画面白そう! 内容を聞かせてくれない?」

* 避けたい声かけ
- 「今すぐ勉強しなさい!」
- 「休み時間は30分までよ」
- 「また携帯見てるの?」
- 「いつまで漫画読んでるの?」

Step 3:「プロセス」を褒める

子どもの行動や努力を具体的に褒める言葉は、自信に繋がり、やる気を引き出すきっかけになります。

▶︎具体的な褒め方のヒント
- 結果ではなく、取り組む姿勢に注目
- 具体的な行動を言語化
- 比較は過去の自分(お子さま自身)

* 効果的な声かけの例
- 「この解き方、よく考えたね」
- 「ここまで粘り強く取り組めたね」
- 「昨日より集中して取り組めているね」

避けたい声かけ
- 「なんでこんな簡単な問題も間違えるの?」
- 「お姉ちゃんの時はもっとできてたのに」

第3章:困ったときの対処法

1. 勉強しない時の対応

▶︎即効性のある対処法
1. まず、深呼吸
2. 子どもの様子を5分観察
3. 別の話題で会話を始める

▶︎中長期的な解決策
- 学習環境の見直し
- 生活リズムの調整
- 興味関心の把握

2. イライラが爆発しそうな時

▶︎緊急対応プラン
1. その場を離れる
2. 気持ちを切り替える活動
3. 落ち着いてから対話

3. SNSや友達付き合いで困った時

▶︎コミュニケーションのコツ
- オープンな質問を心がける
- 判断を急がない
- 一緒に解決策を考える

第4章:明日から始められる具体的アクション

ステップ①:観察

朝:子どもの表情をよく見る
昼:行動パターンをメモ
夜:良かった点を3つ書き出す

1週間ほど、お子さんの様子を意識的に観察してみましょう。特に、どんな時に前向きな反応が見られるかをメモするのがオススメです。

ステップ②:実験しながら待つ

朝:新しい挨拶を試す
昼:承認の言葉を1つ
夜:その日の振り返り

朝の「おはよう」を、より具体的な言葉にしてみる。
  - 例:「今日も元気そうだね」「その服似合ってるよ」

また、「待つ」ことを意識することも重要です。
  - 声をかけた後は、3秒数えてから次の言葉を
  - 反応がなくても、すぐに追及しない

ステップ③:記録と調整

・うまくいった方法の記録
・新しい声かけの実践
・定期的な振り返り

成功体験を「記録」しておきましょう。
  - うまくいった声かけはメモに
  - 子どもの反応も具体的に書き留めておく

第5章:よくある質問と回答

Q1: 学習習慣が全くない場合は?
A1:まずは5分から。「ちょっとだけやってみない?」「5分でもいいよ」という軽い誘いかけから始めましょう。まずは、机に向かう時間を決めることから。そして、少しずつ延ばしていきましょう。

Q2: スマホが手放せない場合は?
A2:一方的なルール設定は逆効果になりがち。使用時間の相談がオススメです。「勉強に集中できる環境って、どんなだと思う?」と、一緒に考えるところから始めてみましょう。一方的な制限ではなく、一緒にルールを考えることが重要です。

Q3:友達との付き合いで勉強が疎かになる場合は?
A3:友人関係も大切な学びの機会です。「どんな話で盛り上がったの?」と興味を示しながら、時間管理のコツを一緒に考えていきましょう。

Q4: 友達との付き合いで悩む場合は?
A4:まずは話を聞く時間を作りましょう。共感と理解が、解決の第一歩です。

おわりに:完璧な親子関係なんてない

冒頭のNさんのその後をお伝えしましょう。

3ヶ月後、再びお話をうかがったときには、驚くほど明るくなっていました。

「先生、信じられないんです。昨日、娘が自分から『今日の漢字テスト、これだけできたよ!』って見せてくれて……。私が『すごいね!』って言ったら、照れくさそうに笑ってて……」

思春期の波は、確かに荒く、ときに私たち大人を不安にさせます。でも、その波の向こうには、必ず穏やかな海が広がっているのです。

一歩一歩、お子さんのペースに合わせて。
その歩みが、きっと素敵な親子の物語を紡いでいくはずです。

私たち大人にできることは、その過程に寄り添い、支え続けること。
完璧を目指すのではなく、ともに成長していく関係性を築いていくこと。

完璧な親子関係なんて、どこにもありません。でも、お互いを理解しようとする小さな一歩が、確実に心の距離を縮めていくのです。

思春期の荒波の中で揺れる子どもたち。その不安定な心に寄り添い、ともに成長していける関係性こそが、実は最高の学習環境なのかもしれません。

明日からでも、新しい声かけを始めてみませんか?
その一歩が、きっとお子さんの心に響くはずです。

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わたねこ|家庭学習アドバイザー
頂いたサポートは自己研鑽と子どもたちの未来のために使わせていただきます。ちなみに現在は、kindle本を執筆中!本を読み漁っております。そして、各種講座・セミナーなども随時実施していきたいと考えています……!