バリ山行_20240826
第171回芥川賞受賞作が無造作に図書館に置かれていたので読了。
芥川賞受賞作、これまでのように今回も結局わからず仕舞いで終了するんだろうなぁと思いつつも、登山が題材になってるからイケるかも!と淡い期待を抱いて読み始めました。
結論から言えば、今回は読み物として理解できたし、とても面白かったです。
前職でリストラにあった主人公の波多、転職先では社内のつきあいにも積極的にならねばと親睦登山企画に参加してから山にはまり、同僚で社内で変人扱いされている妻鹿さんが通常の登山道から外れたルートをあえて選択する「バリエーション登山(通称:バリ)」をしていることを知る。
二人が勤める会社では、若い二代目が従来顧客の仕事を切って大手の下請け中心に経営方針を改めるが、工事の延期が相次いで不穏な状況になり、波多は再びリストラ対象となることに怯えているが妻鹿さんは意に介さず、会社の方針にも従わずに従来顧客の仕事を黙って続けている。
そんな中、波多がトラブル対応で妻鹿さんにフォローしてもらったのをきっかけに、妻鹿さんと「バリ」に出かけることになるが、その道中ですったもんだがあって・・・という展開。
登山を題材にしていますが、サラリーマンの悲哀が綴られているので、えらい共感できてしまい、主人公である波多よりも彼をバリ山行に導いた妻鹿さんの姿に自らを重ねてしまう始末・・・そしてラストは、サラリーマンにとっては結構泣ける場面な気がします。
仕事に対するスタンスは人それぞれ、会社のスタンスも上次第でコロコロ変わる、それを受け入れられずに対立したり、退職願を叩きつけたり、リストラされたり、鬱屈とした思いをもったまま居続けたり、それもまた人それぞれの生き方なのだと考えさせられます。
僕自身も、かつて上司のやり方にブチギレして退職願を叩きつけ、転じた先で狂ったように仕事をして病んだことがありましたが、その時に心を癒してくれたのが山でした。
山に入って黙々と先に進むときは仕事や日々の煩いを忘れ、ふと立ち止まった時に樹林帯の隙間から見える自然の雄大さに人間の矮小さを痛感し、無心の境地に至ることで心身ともにリフレッシュされました。
そんな「山」がきっかけで長野に移住してはや7年目、仕事へのスタンスも変わり余裕をもって生きることができるようになり、何より山が近いことで「逃避できる場」があるのは救いなのだと思います。
てなわけなんですが、タイトルの「バリ山行」が「バリエーション登山」の略称だそうですが私は存じ上げませんでした。
そして、「山行」は「さんこう」と読むそうですが、私は「やまぎょう」だとずっと思っており、普段から「滝行(たきぎょう)」と同様にある意味修行の一環として使っておりました。
その辺りが、今回の作品で引っかかった唯一のポイントでした(笑)
それにしても、芥川賞なのに読んで理解に至ったこととは奇跡なのか。
これはホントに芥川賞受賞作なのか!と自身に問いかけてしまいました。
もしかして審査員総入れ替えしてないよね・・・
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?