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生殖記_20241101

新聞の書評欄に掲載されていた朝井リョウ氏の新作を読了しました。
前作の「正欲」から3年半ぶりだそうで、前作読んでからそんなに経ってるんだと感慨深げ。

物語の語り手(ネタバレ禁止らしいので明かせません・・・)が意外過ぎて「そう来たか!」と笑ってしまいましたが、朝井リョウ的なウィットに富んだ流れからすれば適切な語り手なのかもしれません。(彼自身はある意味辛い立場なのですが)

前作同様に性的マイノリティをテーマとして扱った作品で、前作が多様性とは?という点にフォーカスしていましたが、今作は常に「拡大、発展、成長」を本能的に求める異性愛者中心の実は排他的な社会(共同体)を次々と新しい商品やサービスを生み出さなくては価値がない資本主義と同様のものと捉えながら、「次」を生み出すことができずそんな社会に擬態して生きていくしかないマイノリティの存在を浮き上がらせている感じです。

こんな風に書くと真面目な新書みたいですが、語り手が軽妙なノリで語るので堅苦しくはありません。
ですが、この語り手が結構ズバズバと本質的なことを言うので、ヒトとして生きる身としてはマイノリティだろうがマジョリティだろうが、グサッと刺さる部分がありました。

それにしても語り手くん、寿命ごとにヒトのみならずいろいろな生物の●●器官を担当した相当なベテランさんだけど、違う器官になることはないんですかね・・・過去の記憶をもったまま転生してるから、仏教的な輪廻転生とは違うんでしょうが、ある意味地獄だなと。
話の本筋とは全然関係ないけど、そんな疑問を持ってしまいました。

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