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ストップ! 初期にハマりがちなウイスキーの罠7選

ワシじゃ!

ウイスキーは美味くて奥が深いんじゃ。それゆえ様々な危険が待ち構えておる。初見殺しみたいなトラップが多いんじゃ。今回はそういう罠を7つ集めてざっくり語ってみた。気をつけるんじゃ。


罠1:漢字ラベルのウイスキー

「山崎や白州みたいなジャパニーズウイスキーが美味しいと聞いたことがあるけど、売ってない! と思ったら棚に日本語の漢字ラベルのウイスキーがある! やったあ! ジャパニーズウイスキーゲット!」……ちょっと待つんじゃ!

そこらで見かける漢字ラベルのウイスキーはワールドブレンデッドウイスキーである確率が高い。ワールドブレンデッドウイスキーとは、海外のバルクウイスキー業者からブレンド済みの原酒を大きなタンクで輸入して、追加で熟成したりしなかったりして加水し、瓶詰めし、ラベリングしたモノの事じゃ。つまり別に日本のウイスキーではないんじゃ。純日本製のモルトウイスキーは速攻で売り切れるので無雑作には売られておらん。

特に、商品説明に「厳選した原酒を使用し……」と書いてある場合は「これは……」と身構えるタイミングじゃ。輸入原酒は、あっちの法律の関係で、だいたい最初からブレンドされておる。ブレンド原酒同士を日本でブレンドする事も、まあゼロではないじゃろうが……。この辺のルールは法改正とかもあって謎じゃ。そこまでの手間をかけるかどうかは業者にかかっておる。「厳選」という言葉は主観的な態度にすぎないので何の証明にもならんのじゃ。「ワールドブレンデッドウイスキーに日本製を誤認させるラベルを貼るのはダメ」というルールが最近作られたが、罰則が無く、移行期間が長いので、特に守られておらん。まずネットでよく調べる事じゃ。

なお、ワールドブレンデッドウイスキーには自己申告しているモノもある。そういうのは大体アルファベットとかでひと目でわかるようにしてある。「嘘や誤魔化しをしていないワールドブレンデッドウイスキー」という事になるが、別に嘘や誤魔化しをしていないからといって美味いわけではないので、勧めはしない。ブレンデッドウイスキーなら、デュワーズとかバランタインとかブラックニッカとか幾らでもあるんじゃ。


罠2:新興蒸留所の高額ボトル

洋の東西を問わず、ウイスキーブームで新興蒸留所がポコポコ出来ておる。出来たばかりの蒸留所がリリースするボトルはマニアの注目が高く、その一方で生産数は限られておるから、ショップに出ても1秒で品切れになり、希少価値がついてしまう。そうすると、マニア、さらには転売屋が群がり、結果としてボトルの価格は定価以上の凄まじい金額に跳ね上がる。

高すぎる! 避けるのが無難じゃ。

モノの値段は需要と供給のバランスで決まる。つまり、転売屋と競わされる時点で、実際の味に見合った値段を超過するコストを背負わされる運命じゃ。ワシ自身が色々飲んだうえで忠告するが、過剰なプレミア価格がついた新興蒸留所のボトルを飲む必要はない。執着するとロクな事にならん。

もともとウイスキーというのは何処の蒸留所でも大概丁寧に作られている酒じゃ。新興蒸留所がどれだけ小規模生産の丁寧さをアピールしようとも、既存の蒸留所を圧倒するようなボトルが生まれる確証などないんじゃ。3年もののウイスキーは3年もののウイスキーでしかない。「面白い味。今後に期待できる」とコメントするぐらいしかできん。それに何万円も払うのはマニアだけでよいんじゃ。


罠3:メルカリのレアウイスキー

メルカリには響や山崎やマッカランの年数付きボトル等、レアなウイスキーが沢山出品されておる。

これは避けるべきじゃ。

だいたいそういう銘柄で検索をかけると、未開封品の他にも「空き瓶」「空き箱」が出品され、しかも売れている事がわかるじゃろう。いったい空き瓶を何に使うのか? 空き瓶に他のウイスキーを詰めて再度シュリンクを施す事は技術的に何も難しくない筈じゃ。ウイスキーはまっとうな酒店・ネットショップ等に限り、怪しい個人取引は最初から避けるのが無難じゃ。

高額ボトルではなく、オールドボトルはどうか。メルカリとかで「サントリーローヤル」や「ジョニーウォーカー」「バランタイン」等で検索すると、特級時代の古酒が大量にヒットする。オールドボトルにはアンティークな凄みがあって、しかも値段は「家族が押し入れにしまっていましたが、飲む人が居ないので手放します」みたいな言葉とともに数千円で売られていたりするので、割安な気がして飛びつきたくなる。実際、値段を考えても詐欺の可能性は無いと思えるんじゃ。だが、これにハマり出すとかなりヤバいんじゃ。悪い意味での沼がここにある。

オールドボトルは何十年も前の製品じゃ。買われて以後、そのボトルがどんな環境で保管されてきたか闇の中じゃ。四畳一間の部屋の窓際で毎日日光を浴びていたとか、冷蔵庫に入っていたとか、横向きで寝かされてコルクがアルコールに溶かされて染み込んでいるとか、ミクロの隙間から中身が何十年もかけて蒸発してしまっているとか、そういう危険と隣り合わせじゃ。

オールドボトルはしばしば味が劣化しておる。そして厄介なのは、それが現代とは異なる嗜好にもとづいた味のデザインなのか、単に劣化した結果なのか、究極的には知るすべがないという事じゃ。ボケボケしたパンチのない味、ヒネて妙なニオイが染みた味、あるいは国会でインチキ製法がツッコミを入れられたりした闇の時代の国産ウイスキー、やたらと甘さを強調したブレンド……。これは勝ち目のないガチャじゃ。五里霧中の世界に投げ込まれ、買っては失敗し、納得いかずまた買っては失敗、を繰り返すうちに、夢は摩耗し、精神的にも金銭的にも消耗し、なんだかよくわからないコレクションが手元に残るだけじゃ。


罠4:抱き合わせ商品

山崎や響やイチローズモルトのリーフシリーズのような貴重なボトルと、その店の在庫余り品を抱き合わせたセット販売が後をたたない。山崎12年に謎の日本酒を5本ぐらい組み合わせたセットだとか、イチローズモルトに不織布マスク50枚を合わせたセットなど、ワシの常識を軽々と凌駕してくるセットがたびたび楽天ショップ等に登場する。こういうのは論外として、2本セットの商品等は頻繁に出てくるが、立ち止まってよく考えてもらいたい。

たとえば単品で20000円のボトルがあるとして……それに市価8000円ぐらいの特にほしくなかったボトルが抱き合わさって、25000円で売られているとする。

普通に買えば合計28000円だから、オヌシは3000円得したのじゃろうか? 違う! 20000円で買えるボトルを飲むという目的の為に、オヌシは何故か、買うつもりがなかった在庫処分品ボトルを追加し、余分に5000円を支払う結果となっているのじゃ!

それから福袋じゃ。ワシは福袋は買わん。特賞を狙って焦って買う前に、特賞が当たらなかった場合どんな事になるかも考えておくべきじゃ。まずオヌシは、You Tubeとかに多数上がっておる福袋開封動画を見てみよ。特定の銘柄がやたら出ていると思わんか?


罠5:謎日本語の詐欺ショップ

これは「今そこにある危機」じゃ。なにしろ、割高とかそういうこと以前に、明確に犯罪に巻き込まれて被害を受けてしまう危険なのじゃ。

レアなボトラーズウイスキーのボトル名でグーグル検索すると、検索結果の下の方に、グチャグチャで意味不明なドメインの謎のオンラインショップがヒットしてくる。だいたい商品名の頭には「超歓迎」とか「感動的な」とか、なんだか怪しい日本語の文言がついておる。

こうしたショップは異様な安値で超レアなウイスキーを取り扱っているように見える。39000円のウイスキーを15000円とかでディスカウントしておる。そして商品メニューは無秩序で、ウイスキーだけでなく、ゴルフクラブだとか、電化製品だとか、めちゃくちゃに大量のカテゴリが存在する。

これは詐欺ショップじゃ。認可番号や会社情報等はすべてダミーで、既存のどっかの会社からコピペして来ておる。写真もネット酒店からの無断コピーを使っておる。そして銀行振込での入金を促してくる。当たり前だが、入金したところで商品が送られてくる事などないんじゃ。

さすがに事前に気づくと思うが、何日も徹夜しておかしなテンションになった時などにサイトを見てしまうと、騙されてしまう可能性もある。そもそも、URLをクリックした時点でマルウェアのインストールに誘導されたりする可能性もあるし、それだけでも相当ダルいので、絶対クリックしないようにしてほしいんじゃ。

ネット購入を行う場合は、まずドメインを必ずチェックじゃ。そして実店舗で営業しているかどうかを確かめ、店の実態をよく調べた上で、さらに不安がある場合は、決済に商品代引き決済を利用する事じゃ。


罠6:木の棒

マニア用のアイテムとして、ウイスキーに木の棒を入れてアルコールに樽成分を溶かし込み、味をランクアップさせると謳う商品を色々見かける。値段も数百円でお手頃じゃ。木の棒をウイスキーに入れると実際そこから成分が染み出して色が濃くなる。そして味が追加される。味が追加されるのは確かじゃ。しかしそれが良い結果を生むとは限らんし、取り返しがつかん。ワシは実際に幾つか安ウイスキーで試し、結論に至った。「そんな甘い話はない」という結論じゃ。

そもそもウイスキーの樽熟成とは、非常に長い年月をかけて外気と樽の中の成分が呼吸するかのように行き交い、アルコールの蒸発と外気の取り込みの繰り返しの中で、分子と分子が反応し、影響を与え合う、極めて複雑で微妙な化学反応のプロセスじゃ。「樽成分をウイスキーに追加で混ぜれば熟成のかわりになる」とか、そういう簡単な話ではないんじゃ。


罠7:「界隈」

ウイスキーは嗜好品の「ジャンル」なので、その流れでSNS上にオタクの「界隈」が発生し、権威的な人間が生まれ、人間関係の軋轢が生まれる。これはどんなジャンルでもそうじゃ。そして百害あって一利なしじゃ。

「君、このボトル飲んでないの?」「君のテイスティングコメントおかしくない?」などとマウンティングを行ったり、派閥闘争したり、叩き合ったり、くだらない炎上に皮肉なコメントを残したり、YouTuberに陰口を叩いたり、不穏なエアリプをしたり、学級会をしたり、「ウイスキーに疲れた」とか愚痴っておる。さらに、こういう連中自身が「最近のウイスキー界隈は息苦しい」とか言っておる。そんなのは連中自身のせいじゃ。全て人生の無駄じゃ。オヌシはそんな見苦しい軋轢ネットワークに依存してはならん。

ウイスキーは神秘の液体じゃ。そこにはクラフトマンシップと化学反応の不思議と歴史の重み、つまり「美しさ」が凝縮されておる。グラスに注ぎ、香りを感じ、五感を動員して、その「美しさ」とフェイストゥフェイスで対話し、楽しみを分かち合うものじゃ。それが全てじゃ。

ウイスキーは争いの道具ではない。60sのアレを飲んだ、コレを飲んだ、こんな入手困難ボトルを持っている、そんな話を羅列しても、同じクチで他人への嫌味や初心者を萎縮させるマウンティングをしておれば全部無駄じゃ。オヌシはそうならんようにしてほしいし、悪いオタクを視界に入れず、のびのびとウイスキーを楽しむべきじゃ。「界隈」には最初から近づかん事じゃ。


良いウイスキーライフを

以上じゃ! これで、オヌシが踏んでしまう失敗はかなり減ったはずじゃ。事故を避け、楽しくウイスキー坂を登るんじゃ!


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