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今日あるウイスキーは明日あるか?
ワシじゃ! ミーミルじゃ。
ウイスキーの価格が上がっておる。ジャパニーズウイスキーの異様なプレミア価格を眺めておったら、もはやスコッチウイスキーも対岸の火事ではなくなった。
これは実際さまざまな要因が絡んでおり一筋縄ではいかん。もつれあった糸のように大変なので、この先なんとなくウイスキーの価格が下がってくるような事は、恐らくないじゃろう。
ウイスキー値上がり要因はざっくり下記の如しじゃ。
・円安
・戦争
・コンテナ遅延
・シングルモルトの価値向上、ブランド化
・原酒がもう無い
円安
これは毎日ニュースでやっとるからわかるじゃろう。ちょっと前は113円ぐらいだった円が、今見たら144円じゃった。これは説明するとややこしい経済の話になるのだが、今のところ、来年以降にアメリカが明確に不景気に突入するまでは続くと見られとる。
円安になると海外のものが今までのような価格では買えなくなるのも必然じゃろう。昔は海外通販サイトで個人輸入するのがうまかったが、今はそれもできんレベルじゃ。
戦争
プーチン野郎のせいじゃ。最悪じゃ。そのせいで欧州の航空便がかなり死んでおり、1-2か月ぐらい空港にほったらかしにされるボトルなどもしばしば発生しておる。日本にモノが入ってこないんじゃ。
コンテナ遅延
コロナ野郎のせいじゃ。海運の流通が完全に死に、コンテナが大渋滞を起こしておる。海上運輸の荷物が港に入ってこれないんじゃ。前にポテトが全然入ってこない事とかあったじゃろう。そういう流れじゃ。
シングルモルトの価値向上、ブランド化
ちょっと前まで、ウイスキーといえばブレンデッドウイスキーが常套じゃった。ウイスキーといえばジョニーウォーカーやカティーサーク、シーバースリーガル等、ブレンデッドウイスキーの名前が挙がる。つまり万人向けに大量供給される常用の酒じゃ。無論、今もそうではあるが、今は、ちょっと踏み込めば、すぐにシングルモルト、いわば地酒の世界に入っていけるじゃろう。
シングルモルトは美味いし、個性豊かで、語りたくなるウンチク、魅力が満載じゃ。しかしシングルモルトが注目されるようになったのは実際、ごく最近と言っていいと思うんじゃ。国際社会がシングルモルトの面白さ・奥深さに注目し、シングルモルトのブランド価値はどんどん上がっていった。もはやマッカランや山崎だけではない。スプリングバンク、グレンドロナック、アイラの各蒸留所、アラン、グレンアラヒー……有名どころ、評判のいい蒸留所のシングルモルトから争奪戦になっていった。
ウイスキーをシングルモルトで楽しむ参加人数が増えれば、入手困難性が上がり、値段が上がるのは必然じゃ。需要と供給なんじゃ。もはやシングルモルト・ウイスキーは、昔のように少数のオタクが弄ぶオモチャではないという事なんじゃ。カネを持った本気の連中が入ってきて、そやつらが「この値段でも全然余裕。買う買う」と言ってゴッソリ持っていく……そういう事になれば、値段が上がるのは当然じゃ。
原酒がもう無い
80年代から90年代にかけて、ウイスキー業界は世界的に低迷しておった。これは、「Whisky Loch」と呼ばれる災いじゃ。
平たく言うと、ウイスキーを大量に作りすぎたせいで、ウイスキーがコモディティ化(消費財化。ありふれたホチキスの芯や牛丼のような、付加価値のつかないアイテムになった)してしまい、結果、蒸留所が潰れまくったんじゃ。
そんな風にウイスキーが低迷していた時代を通して、蒸留所には樽が余りまくった。余りまくった原酒を背景に、シングルモルトウイスキーがバンバン出て、ボトラーズもたくさん樽を引き受けた。
しかし、やがてウイスキー自体のブランド価値が確立され、需要が供給を上回ったとなれば、当然、溜まっていた原酒も無くなってゆき、余裕がなくなるじゃろ。ウイスキーをちゃんと作るには10年ぐらい仕込まないとダメじゃ。急には揃えられん。そうなると、余っていた原酒を背景にした「余剰のバフ」とでもいうべき状態が永遠には続かないのも道理じゃ。
特にコロナ以降は家飲み需要とか色々あって、値段が上がってきたな、という皮膚感覚を誰もが持っていたと思うが……。半年前くらいに、特異点が訪れたように思うんじゃ。
ボトラーズからは、8年とか9年とかのボトルが平気でリリースされるようになり、20年以上熟成のものは、高いとかを通り越して、殆ど出なくなった。「いよいよ無くなった」。そういう雰囲気を肌で感じておる。もうウイスキーは蒸留所に余っておらんので、ボトラーズには尚更、樽が回らないんじゃ。
ではどうするか
このように、マクロ経済の問題、原酒不足、底上げ的なブランド認知などが混然一体となり、今のウイスキー値上がりは発生しておる。これはもはや単なる一過性ブームとかの話ではない事がわかるじゃろう。相次ぐ終売・休売・値上がりはマジでヤバイし、ストレスフルじゃ。
今日あるウイスキーが明日あると思わない
ちょっと見てみると気づくが、15年もの等のウイスキーはもはや、ネットで見ても売っとらん。アラン18年やボウモア18年が消えた時、他の銘柄も消えるとは思っておらんかったじゃろう。だがあれは、今にして思えば「序曲」じゃった。マジで無い。ダルモア18年も無い。タリスカー18年も無い。アードベッグ10年も入ってきたり入ってこなかったりじゃ。ボウモア12年も怪しい動きじゃ。レッドブレスト15年も消滅した。白州山崎でおおさわぎしている人々を白い目で見ておったら、他のウイスキーも大変な事になってきておる。まず言っておかねばならんのは、好きな銘柄があれば今買っておきんしゃいという事じゃ。クライシスじゃ!
しかし!
だからといって、文句ばかり言っていたところで、それでウイスキーが値下がりするわけでもあるまい。特に、「ブランド価値が高まって値段が上がった」という側面は、ある意味で「適正化」と考えて納得するしかなかろう。
小奇麗なレストランで、他の客が優雅に楽しんでいる中、「前はこんなにここの料理は高くなかった!」「昔はもっとコスパがよかった!」とか騒いでいる客がおったら、どう思うかの? ちょっとすさまじいものがあるじゃろう。
では、他の酒に移行するのか? そんな簡単にはいかん。ラムやブランデーでは結局ウイスキーの代わりにはならん。別ジャンルじゃ。それこそ過去のウイスキー低迷期は「ホワイトラムやウォッカしかみんな飲まなくなる」とか言われていたようじゃ。しかし、そんな甘い話ではないんじゃな。
ここはひとつ、「腹を据えてウイスキーと付き合う時が来た」とマインドセットするしかなかろう。数年前と違って、BARにも行ける時代じゃ。家飲み用にシングルモルトを片っ端から買って試す必要はなくなった。狙いを定めて本当に気に入ったものを買えば良いんじゃ。
そして、まだまだコスパの良いウイスキーも存在しておる。そういった銘柄の中から家飲みの日常的なウイスキーを決め、とっておきの日には、素晴らしい貴重なボトルを開けて楽しむ……そういうメリハリをつけて、丁寧に付き合う時が来た。これからは今まで以上に丁寧にウイスキーを楽しんでいこうという事なんじゃ。