そのウイスキーはどんなウイスキーなのか
ワシじゃ! ミーミルじゃ。
今回は入門編じゃ!
ウイスキーは美味しいんじゃ。多分オヌシは、ウイスキーに何かのきっかけで興味を持ち、色々知りたいと思い、この記事に辿り着いたのじゃろう。
ウイスキーの銘柄は膨大なので、丸腰で飛び込んでも、何が良いものなのか悪いものなのかもわからないし、次に何を飲んだらいいのかもわからんじゃろう。判断の手掛かりとなる基準を色々知る事で、オヌシはもっとウイスキーを主体的に楽しむ事ができるようになるんじゃ。首輪を外して自由な世界に飛び出す時が来た! ラグナロクじゃ!
オヌシが手にしたウイスキーを他人に見せて訊いてみて、答えてくれる相手がいれば、話は早い! その一方で、それを自分自身でわかるようになれば、どんなに素敵じゃろう? ウイスキーのスペックを知ることで、色々わかるんじゃ。
では早速見ていくぞ!
ブレンデッドウイスキー
まずはブレンデッドウイスキーじゃ。スーパーとかでまず見かけるものはだいたいこれが多い。
これは、メチャクチャ乱暴な言い方をすると「大麦麦芽のウイスキー(モルトウイスキー)やその他穀物のウイスキー(グレーンウイスキー)を色々混ぜて、商品として完成させ、名前をつけたもの」じゃ。
店に並んでいる銘柄のなかで、たとえばオールドパー、響、角、ブラックニッカ、シーバス・リーガル、ジョニーウォーカー、デュワーズ等がこれにあたる。
名前の由来も様々じゃ。オールドパーは150年ぐらい長生きした地元の胡散臭い爺さんの名前からだし、響はサントリーの「人と自然と響き合う」のキャッチコピーから来ていた気がする。そういうふうに、タイトルみたいに名前がつけられているのじゃ。
ブレンデッドウイスキーは、各社のブレンダーが気合いを入れて大量の樽から原酒を選定し、混ぜ、加水して仕上げる。スコッチウイスキーにはルールがあり、混ぜて良いのは、水、モルトウイスキー、グレーンウイスキー、カラメル色素だけじゃ。これらを混ぜて作るのじゃ。
ウイスキーの主役は「モルトウイスキー」じゃ。これは大麦麦芽だけをポットスチルで蒸留して作った酒であり、味の個性が強い。
一方、「グレーンウイスキー」は、トウモロコシや小麦、ライ麦等の穀類を連続式蒸留機で蒸留して作った酒で、味の個性は穏やかじゃ。連続式蒸留機は上のポットスチルと違って、クラリネットとか川崎工業地帯みたいな見た目の蒸留器じゃ。大量生産が出来るし、使用する穀物も様々なので、グレーンウイスキーはモルトウイスキーよりも全然安い。
大体の場合、モルトウイスキー2-3割、グレーンウイスキー7-8割の含有比率でブレンデッドウイスキーは作られる。少しモルトウイスキーを使ってそれをグレーンウイスキーで延ばすと、モルトウイスキーの強い個性を残しつつ、ちょうどバランスの取れた味になるという事じゃ。
シングルモルトがよく飲まれるようになったのはつい最近のことで、20年前くらいの時点ではまだ、ブレンデッドのほうが一般的だったのじゃ。
ブレンデッドウイスキーは飲みやすさが重視されておる。バランスのよい甘さと、丁度いいスモーキーフレーバーで、オヌシらがなんとなく想像する「ウイスキーの味」というのは、つまりはブレンデッドウイスキーじゃ。いわばウイスキーの王道といえる。しかし、ウイスキーを知るという観点では、ブレンデッドを無理して色々な種類飲む必要はあまりないような気がしておる。これはワシの勝手な偏った意見じゃ。
本番は次項のシングルモルトウイスキーじゃ。
シングルモルトウイスキー
シングルモルトは単一蒸留所の(シングル)大麦麦芽(モルト)で作られたウイスキーの事じゃ。さっき言及した「モルトウイスキー」を単独で取り出したものだと考えるとよい。
この「グレンフィディック」には、グレンフィディック蒸留所以外の原酒は入っておらん。マッカランとかグレンドロナックとか山崎とかの原酒は混ざらん。だから「シングル」なのじゃ。
シングルモルトは他と混ざっておらんので、蒸留所ごとの特徴が前面に打ち出されており、個性豊かじゃ。ポケモンを集めるように様々なシングルモルトを体験すると楽しいんじゃ。
シングルモルトはスーパーにも普通に売っておる。ほとんどの場合、蒸留所の名前がそのまま銘柄の名前じゃ。グレンリヴェット、ボウモア、山崎、余市などがこれにあたる。
ブレンデッドウイスキーにとっては、モルトウイスキーは部品・材料のようなものじゃ。たとえばカーデュやクライヌリッシュのようなシングルモルトウイスキーは、ジョニーウォーカーを作る際の重要な原酒となる。歴史の流れで言うと、逆にむしろ、ブレンデッドウイスキーの原酒を生産する蒸留所が、後から、自分たちのところのシングルモルトを出すようになった、という流れが多い筈じゃ。
しかし敢えて言うならば、シングルモルトこそがウイスキーの真髄じゃ。たとえはアレだが、ブレンデッドウイスキーは、いわばネギトロ、あるいは合挽き肉じゃ。一方、シングルモルトウイスキーは大トロ、あるいはサーロインじゃ。混合物に使われていた稀少な部分だけを使って作られたウイスキー、それがシングルモルトなのじゃ!
ただでさえ個性の際立つシングルモルトだが、さらに加水すらせず瓶詰めしたものがある。それがカスクストレングスじゃ。だいたいアルコール度数が高く、60%を超えるものすらある。そして美味しいんじゃ。さらには樽原酒を混ぜることすらせず、そのまま出すシングルカスクというものもあるんじゃ。
仕込みの方法、蒸留器のタイプ、熟成樽の個性、環境、それらがダイレクトにそのまま現れる個性豊かなポケモン、あるいはゆるキャラ、それがシングルモルトじゃ。
その他1:シングルグレーンウイスキー
合挽き肉の豚肉の部分がグレーンウイスキーだとすれば、「だってじゃあ豚肉のハンバーグだって食べたいもん!」「ポークソテーは?」という人もおる筈。そういう人はシングルグレーンウイスキーを手に取る。
日本だと特に有名なグレーンウイスキーは、サントリーの知多じゃろう。スコッチだとキャメロンブリッジとかじゃ。グレーンウイスキーは大量生産が出来るので、入手が容易で、値段もシングルモルトより安めじゃ。逆に、グレーンウイスキーなのに妙に高級感をアピールしている銘柄があるとすれば、なんか怪しいと考えたほうが良かろう。そして勿論、これはこれで美味い。アグー豚の焼き肉とかポークソテーとか食べたいじゃろ。そもそもアメリカに目を向ければ、バーボンウイスキーはそれ自体がグレーンウイスキーみたいなものじゃ。51%以上がトウモロコシで作られておるからの。
その他2:ブレンデッドモルトウイスキー
グレーンウイスキーを混ぜず、様々な蒸留所のモルトウイスキーだけをブレンドして作る銘柄というのもある。
モンキーショルダー、ジョニーウォーカー緑、ロイヤルサルート緑、竹鶴、コンパスボックス・スパイスツリー等がこれにあたる。ジャンル自体はニッチだが、日本の竹鶴は押しも押されもせぬ人気銘柄じゃ。日本ではピュアモルトという言い方をする場合もたまにある。スコッチではピュアモルトという表記は法律で禁止された。まぎらわしいという理由じゃ。
なぜモルトブレンドはニッチなのか? いろんな蒸留所のものが混ざる時点でなんとなく有り難みが薄れ、かといってグレーンを混ぜる普通のブレンデッドよりコストも高いので、手間ばかりかかって、存在の意義で負けてしまいがちだからかもしれん。シングルモルトは要するに単一の蒸留所内でブレンデッドモルトを作っているようなものであり、成分自体は、シングルモルトとブレンデッドモルトは同じじゃ。
オヌシの手にしたウイスキーはどれだったかの?
さて、これで、今オヌシの手の中にあるウイスキーがどの分類に含まれるウイスキーなのかがわかった筈じゃ。どれだったかの? ここから、オヌシの長く面白いウイスキー坂が始まるというわけなのじゃ。
おさらいをする。ウイスキーの原酒には、
の2種類がある。そして、それら原酒を使って、
・ブレンデッドウイスキー
・シングルモルトウイスキー
・その他(略)
として瓶詰めする。
乱暴にたとえると、ブレンデッドウイスキーは合い挽き肉のハンバーグ、シングルモルトウイスキーはステーキみたいなものじゃ。どちらも美味しいじゃろう。でもジャンルは違うじゃろう。そしてハンバーグよりステーキのほうが高いのもわかるな? そういう事じゃ。
次回は熟成樽の種類についてじゃ
ここまでで、一番重要な区分である「ブレンデッドか、シングルモルトか」という部分についてはまとめる事ができた筈じゃ。ハンバーグのたとえはわかりやすいがウイスキーにはあまり使いたくないたとえじゃな。許してほしいんじゃ。
長くなったので次回に続くんじゃ。次回は樽熟成についてまとめるつもりじゃ。アメリカンオークのバーボン樽熟成とヨーロピアンオークのシェリー樽熟成が2大巨頭で、バーボン樽熟成は黄色く、シェリー樽熟成は焦茶色じゃ。これだけだと乱暴すぎるから、ちゃんと書いてみるんじゃ。
またの。