ポケモン御三家を選ぶように、最初のシングルモルト・ウイスキーを決めてみよう
ワシじゃ! カスクストレングス18太郎じゃ。好きなウイスキーはハイランドパークじゃ。
なんじゃと? スーパーに売っているブレンデッド・ウイスキーでは飽き足らず、シングルモルトのウイスキーを飲んでみたくなった? しかし、何から飲めばいいかわからない?
それはすなわち旅立ちの時じゃ。ウイスキーが美味いと思った人間は、シングルモルトの冒険に旅立つ瞬間が必ず訪れる。ジャパニーズウイスキーのブランドに踊らされてワケもわからずプレ値に張り付いたり、フロム・ザ・バレルの在庫復活botを監視する日々も終わりじゃ。スコッチのシングルモルトに行くのじゃ!
以前にまとめた事があるが、「ウイスキーのシングルモルト、まずは何を飲むべきか」は、あらゆる人類が直面する巨大なテーマなので、ネタとしては何回擦ってもいいんじゃ。ワシはいつだってハイランドパーク12年を真っ先に勧めるが、今回はそれ以外の銘柄を吟味して、「三種類から選ぶ」ものとした。
ウイスキーは実質ポケモンみたいなものじゃ。出会った時にモンスターボールを投げて集めるんじゃ。ポケモンという事は、スタート時に御三家からどれかひとつを選ぶというのがよい。あるいはソシャゲでよくある赤、青、緑の三属性じゃな。
ワシは今回、ほのおタイプ、みずタイプ、くさタイプの三種類のシングルモルトウイスキーを用意した。ほのおタイプはパワフルで濃厚なシェリー樽熟成、みずタイプは潮の香り、くさタイプはエレガントでフルーティーな甘味のあるシングルモルトじゃ。早速いってみるのじゃ!
ほのおタイプ
まずはエドラダワーじゃ。どっしりとしたシェリー樽熟成の味わいは普通のブレンデッド・ウイスキーでは味わえない、シングルモルトならではの体験なので、飲みごたえは十分じゃ。しかもこのエドラダワーには、他にない独特のクリーミーな味わいがある。フルーツケーキのような濃厚なこってり感は、ウイスキーの凝り固まったイメージを変えるだけのパワーがある。シェリー樽熟成のウイスキーは濃い琥珀色なので、ほのおタイプじゃ。
みずタイプ
次に、潮の匂いが特徴的なこのタリスカーを、御三家のひとつ、みずタイプとして持ってきた。このタリスカー、グルタミン酸っぽいコクのある磯の旨味成分と、「黒胡椒」「舌の上で爆発する」などと物騒な言葉で語られるスパイシーな個性の主張が強く、ハマれば完全に癖になる。旨味成分としっかりした甘味が見事に調和して、独自の美味を形成しておるのじゃ。
タリスカーの磯の香りは、麦芽を燻すピート(泥炭)に起因するものじゃ。ピートの風味はとっつきにくいが、慣れると独特の良さがあり、楽しめるスコッチウイスキーの銘柄が倍増する。無理して飲む必要はないが、だからといって避けて通る必要もないんじゃ。タリスカーのピート感は、ピートを特徴とするアイラ島のウイスキーよりは比較的大人しい。最初に飲むにはぴったりと言える。
ハイボールにした時に美味いことも入門者には嬉しい要素じゃ。炭酸に負けない個性によって、角ハイと全く違う味のハイボールが飲める。そしてシングルモルトとしてはかなり安いのもポイントじゃ。なんでこんなに安いのかよくわからん。オススメじゃ。
くさタイプ
最初の一本としてはちょっと高めではあるが、クライヌリッシュは極めて質の高い、完全に美味いウイスキーじゃ。非常に鮮やかで豊かな花の香りがグラスから漂い、口に含めば多彩な果実のフレーバーが同時に発生する。その華やかさ、素晴らしさ、情報量の濃密さ……もはや神秘体験じゃ! 美味いウイスキーとは何なのか……それを端的に体験するならばこのクライヌリッシュという事になるじゃろう。
こういうめちゃくちゃ美味いウイスキーを飲むと、多分、買い占められてばかりで適正価格でちっとも手に入らんジャパニーズウイスキーに拘っている事が、だんだんアホらしくなってくるはずじゃ。このクライヌリッシュはなにしろ花の香りなので、くさタイプとした。
君だけの三属性を考えよう
以上の三種が、今回ワシがオススメする「シングルモルト最初の一本」じゃ。無論、数え切れぬほどに存在するシングルモルトの銘柄の中からたった三つをピックアップして当てはめた形なので、この三種類が絶対の正解ではありえない。選ぶ人によっても毎回なんの銘柄になるかは変わってくるものじゃろう。
エドラダワー、タリスカー、クライヌリッシュ。三種類のどれを選んでも間違いない素晴らしいウイスキーで、個性のかぶりが全くないので、これでよしじゃ。あんたがもし初心者ではなくウイスキーをある程度飲んだ人間であれば、ご自身の「御三家」ウイスキーを設定して、ぜひ紹介してみてほしいんじゃ。
今日はこれまでじゃ。
またの。