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スモーキーフレーバーなんじゃ

ワシじゃ! ミーミルじゃ。

ウイスキーといえばスモーキーフレーバーじゃ! ジョニーウォーカー黒とかを飲むとスモーキーで美味しいじゃろう?

朝ドラのマッサンも、毎日のように「スモーキーフレーバーが大事なんじゃ!」って主張していたんじゃ。

ウイスキー特有のあのスモーキーフレーバーはどこからくるのか? それはピート(泥炭)によってもたらされる。

地衣類が化石化して泥状の燃料になったのがピートじゃ。

モルトウイスキーが大麦麦芽から作られる事は知っての通りじゃ。大麦からもろみを作るためには発芽時の酵素が必要なんじゃ。しかし、発芽した大麦がそのまま芽を伸ばすと、モヤシになってしまう。だから麦芽の成長を止める為に、加熱して乾燥させる必要があるんじゃ。この燃料として登場するのがピートなのじゃ。

……ワシがまだ成人して数年という、小さな巨人族だった頃の事じゃ。やけに焦げ臭いウイスキーに出くわした。そのウイスキーは「ラガヴーリン」じゃった。

まだ詳しくないワシは、この強烈な焦げ臭さは、木の臭さ、木の樽のニオイなのだと誤解した。これが「ウイスキーの樽感」なのだと勘違いしたんじゃな。そしてそのまま普通に受け入れて飲んでおったが、実際のところ、この焦げ臭さは、樽ではなく、ピート由来の香りなんじゃ。

ラガヴーリンはスコットランドの西側、アイラ島にある蒸留所じゃ。

アイラ島で作られるウイスキーは、麦芽の乾燥にピート(泥炭)を用いる事で有名じゃ。泥炭はアイラ島のそこらへんの地面の土なので(?)、石炭よりもずっと安上がりに用意できるものだったのじゃ。そして湿地の泥には強烈なニオイがついておるのじゃ! これがスモーキーフレーバーの理由なのじゃ!

ヘヴィ・ピーテッドのモルト原酒は、スモーキーを通り越し、潮のにおい……もっと言うと、磯臭さ、消毒液とか保健室とかうがい薬とか言われるような強烈なニオイを発している。これは、ダメな人はまあダメなニオイじゃ。しかし適度にこのピート感が付与されていることで、ウイスキーにはスモーキーフレーバーがもたらされ、コクと重みが増し、味の説得力が上がるのじゃ。一般の人々が想像する「ウイスキーの味」には、ピートが欠かせない。ピートは非常に重要な要素といえるんじゃ。ブレンドの際には、ピンポイントでピーテッド・モルト原酒が使われているんじゃ。

そしてそもそも、手加減なしのダイレクトアタック、強烈なピーテッドモルト原酒100%のニオイというのも、慣れてくれば意外と心地よい香りなんじゃ。嫌なものではない。だいたいにおいてピートが強烈なウイスキーというのは、味そのものがやたら美味いんじゃ。だから、ハマってしまうと、ピート香が強烈なウイスキーばかりを求めるピートジャンキーになるんじゃ。

ピートジャンキーはピートしすぎた結果、もはや普通のピートをピートと感じ取ることができず、さらに強いピート感を求め、「ヨード感……」「PPM……」などとうわ言を呟きながらウイスキー沼を徘徊しておる。基本的には無害なのでそっとしておいてやってほしいんじゃ。


ノンピートのウイスキーも沢山ある!

シングルモルトのウイスキーにはピート原酒を使わないものも多々ある。ピートがないウイスキーは華やかで美味しいんじゃ。そもそもアイラウイスキーに代表されるような強烈なピート感は、本国スコットランドの人々の中でさえ、受け付けない人間は沢山いるんじゃ。ピート感が「どうしても無理」だからといって、引け目を感じる必要はないんじゃ。それでも……急に平気になったり、なにか素晴らしく美味いウイスキーがきっかけでピートが大丈夫になったりする事も往々にしてあるので、時々試してみてほしいんじゃ。世界が広がるんじゃ。


ピートと言えばアイラ・ウイスキー

せっかくなので、この機会に「ピートと言えば」のアイラ・ウイスキーを並べてみるんじゃ。

アイラウイスキーをアイルランドのウイスキーだと勘違いしてしまうのは、微笑ましい初心者あるあるじゃ。カタカナが似とるからの。


アードベッグ

アイラ島の南には三つの蒸留所がある。アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグじゃ。どれもピート感が強烈なウイスキーを作っておる。このアードベッグはかなり特徴的なウイスキーで、強烈なスモーキーさは勿論じゃが、薬草のようなニュアンスが強く出ており、飲んでみると草餅のように甘いのじゃ。デザインもブラックメタル的で厨ニ感にあふれておる。

アードベッグの主力はTEN、その名の通り10年モノじゃ。とにかく美味いウイスキーなのだが、ウイスキーを知らない初心者にいきなりこれを飲ませるのは真剣に止めたほうがよい。


ラガヴーリン

ラガヴーリンは強いスモーキーフレーバーを持ち、焚き火の灰のような香りを漂わせておる。それでいて比較的飲みやすい仕上がりになっているのじゃ。ワシがそうだったように、このラガヴーリンからアイラ島のウイスキーを始めるのも良いかもしれん。

主力商品は16年じゃ。16年がメインというのは他になかなか例を見ないんじゃ。同時に、8年とか10年とかも存在しておるので、いつかラインナップから16年がなくなってしまうのではないかと気が気でないんじゃ。


ラフロイグ

ラフロイグはアイラの王様と称されるウイスキーじゃ。アイラウイスキーの中でもピートのクセの強さは上位に入る存在で、磯臭さが強い。海の要素じゃ。ヨード、かじめ焼き……そういう感じなのじゃ。「Love or Hate」をキャッチコピーにしておる。個性が強いから、好きになるか嫌いになるか、どっちかというワケじゃ。海っぽいニオイなので、刺し身につけたりする奴もおるんじゃ。

主力は10年。正規輸入品のアルコール度数は43%と、並行輸入品の40%よりも度数が多いので、正規輸入品にすべきじゃろう。正規輸入と並行輸入は大体の場合、モノは同じなのだが、こういうケースは珍しいんじゃ。


ポートエレン

アイラ南部の三兄弟は昔は四兄弟だったんじゃ。ポートエレンという蒸留所がかつて存在したが、1983年に閉鎖された。当時のウイスキーは高額で取引されておる。さいきん再稼働したとかしてないとか言われているが、なんにせよ、再び通常の商品を出すにはまだまだかかるじゃろう。


ボウモア

ボウモア蒸留所はアイラ島の真ん中あたりの入り江に作られている。海抜0メートルじゃ。そんな場所に建物を作って大丈夫なのか? ボウモアのウイスキーは、ふわふわした優しいピート感が特徴で、そういう意味では初心者向けかも知れん。しかし味は当然、本格派じゃ。「最後に帰ってくるのがボウモア」などと言われる事もある。とにかく美味しいんじゃ。

ボウモアは80年代末に経営母体の倒産・閉鎖の危機に陥ったあと、サントリーに買収されて閉鎖を免れて復活し、味も良くなったという過去がある。そういう紆余曲折もあってか、年代によって全然味が違うのが特徴じゃ。伝説のボトル「ブラックボウモア」は350万円ぐらいで取引されておる他、「1966年のボウモアは最高」「93年のボウモアはトロピカルフルーツの味がして最高」「95年のボウモアは昔より最高」「2001年は新たなビッグビンテージ」等々、ハマり始めると完全に沼じゃ。危険なんじゃ。


ブナハーブン

アイラの最北に位置する蒸留所がブナハーブンじゃ。ここではアイラ島でありながらノンピート原酒がメインじゃ。とはいえ「アイラのくせにノンピートかよ」などとナメたクチをきいてはならん。華やかな味わいで、とても美味しいんじゃ。また、最近はブナハーブンでもピートの効いたウイスキーを作るようになってるんじゃ。それらはブレンド原酒としての提供がメインじゃ。


カリラ

アイラ島の北側にはブナハーブンと、このカリラがある。カリラはライトボディで鮮やかな味わいが特徴的なウイスキーを作るんじゃ。カリラはジョニーウォーカー等のブレンド原酒としても使われており、生産量がめちゃくちゃ多いんじゃ。年数の若いカリラは独特の素晴らしい美味さがあり、一桁台の熟成年のカリラはメリハリのある味で非常に美味い。愛好家も多いんじゃ。

主力商品は12年じゃ。カリラ12年はハイボールが異様にうまく、ヤバいんじゃ。アイラ島入門としてはカリラもなかなかオススメと言えるんじゃ。


ブルックラディ

アイラ島の西側……ちょうどボウモアのある入り江の対岸で最近稼働し始めた蒸留所その1じゃ。大昔にあった同名の蒸留所を、元ボウモアの凄い人、ジム・マッキュアンが復活させたんじゃ。

ここでは「ブルックラディ」「ポートシャーロット」「オクトモア」を出しておる。ポートシャーロットはブルックラディの近くにあるまた別の閉鎖蒸留所の名前だが、実際のところはブルックラディと同様にブルックラディ蒸留所で作っておる。ややこしすぎるんじゃ!

「ブルックラディ」はノンピート、「ポートシャーロット」はピートありじゃ。今回の記事ではポートシャーロットに注目したい。これがとても美味しいんじゃ。そして「オクトモア」はスーパーヘヴィピートの銘柄じゃ。とにかくピートを強く焚き染めて作った問題作なのだが、オクトモアはとんでもなく美味いので、ピート感のあるウイスキーに慣れてきたら、体験する価値が大アリじゃ。

ブルックラディは最近の蒸留所なので、ミレニアル世代的なアプローチをしており、地元の雇用の促進だとか、オーガニックの地産地消とか、昔ながらの蒸留方法だとか、そういうコンセプトを打ち出してやっておる。日本にもアンバサダーが来るし、ボトルのデザインも現代アート感がありカッコいいんじゃ。ブランディングがうまくて勢いがあるんじゃ。


キルホーマン

アイラ島の西側で最近稼働し始めた蒸留所その2じゃ。

2005年にスタートした新規蒸留所じゃ。全てをアイラ島内で作ろうというコンセプトでやっており、アイラ島内で育てた大麦をアイラ島内で蒸留し、瓶詰めも行っておる。そういう意味ではブルックラディがアピールして色々やろうとしてきた内容を横からスッと現れて実現してしまった蒸留所とも言える。ブルックラディ関係者はライバル意識が相当ビキビキきてるじゃろうか?

主力商品のマキヤーベイはモルトの旨味がしっかり出ており、フルーティで美味しいんじゃ。そして様々な変わり種の樽熟成の限定品をリリースすることでも知られておる。


以上でアイラ島の蒸留所は全制覇じゃ! ピートについて学んだついでに全部まとめてしまったんじゃ。これでオヌシはピートについてもイキりたおす事ができるようになった。あとはどんどん飲むだけじゃ。


次回は飲み方についてじゃ

次回はウイスキーの飲み方についても触れておこうと思うんじゃ。グラスとか、ストレートとか、ハイボールとか、色々あるんじゃ。でも違う記事を書いているかも知れないんじゃ。未来は謎に満ちておる。

またの!


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