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「micro」と「macro」、「nano」と「mega」|言葉ノート#1

〖2023年4月25日更新〗

伝統的に、コウモリ(蝙蝠)はオオコウモリ(大蝙蝠)とココウモリ(小蝙蝠)に分けられる。日本語では「大」/「小」の対比となっており、原初的な二項対立で分かりやすい。

いっぽう英語では、オオコウモリを「megabat」、ココウモリを「microbat」と呼ぶ。「bigbat」/「smallbat」の対比とはなっていない。とくに「microbat」に鑑みて、経済学の用語(マクロ経済/ミクロ経済)のように「macrobat」とはならないのかと怪訝に思ってしまう。

「mega, micro, macro」でGoogle検索をかけてみると、ソーシャルメディアで活躍するインフルエンサーの影響度合いの指標としても使われているようだ。概して言えば、「nano」<「micro」<「macro」<「mega」の順に影響度合いが大きくなっていく。

「nano influencer」と呼ばれるためにはフォロワー数が1,000〜10,000人必要らしいので、インフルエンサーとあまり縁のない人からすると、「ナノ」の基準は釈然としない。おそらく「micro influencer」が用語として先にあって、それより小規模のインフルエンサーを定義する際に、SI接頭語に準じて名付けられたのだと思われる。

ところで、「micro, macro, mega」は進化論を語る上でも使われるようだ。「小進化(microevolution)」と「大進化(macroevolution)」の2つは日本語ソースの所在をすぐ確認できるが、「巨大進化(megaevolution)」はほとんど見当たらない。

…中間型として有名な始祖鳥の場合でも,爬虫類と始祖鳥の間,始祖鳥とその後の鳥類の間の形質の差はきわめて大きい。G.G.シンプソンは,この形質の差の規模からすれば,種間の差が生ずるのを大進化と呼ぶのだったら,科やそれ以上の分類群が生ずるのは〈巨大進化mega‐evolution〉とでも呼ばねばなるまいと記している(1944)。この〈巨大進化〉に対して大進化ということばを用いる人が,古生物学者のみならず,分類学者や生態学者には多い。…

巨大進化(きょだいしんか), コトバンク
出典:株式会社平凡社 / 世界大百科事典 第2版

「oe」/「ae」という綴りは英語っぽくないので、ハイフンを入れたり、分かち書きしたりした例も見付かった。ただ、「mega evolution」はすっかりポケモン用語になってしまっているようだ。

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