SS 散歩【レトルト三角関係/魅力的な主人公】#毎週ショートショートnoteの応募用
いつものように川辺で散歩する。土手の下は石だらけの川原だ、そこで遊んでいる子供達を横目で見ていると、十五くらいの男子が近寄ってくる。学生服を着てる彼は迷子らしい。
「すいません、ここはどこですか」
「どこにいきたいの?」
私の顔を見て少し照れている。自慢じゃないけど私は美人でやさしい。雰囲気がほわんとしている。話しやすいのかもしれない。
「――家に帰りたい……と思う」
さみしげな彼の本心はわからない。家族に会いたいのではなく、不安だから家に帰りたいように思える。
「あの、すいません。近くの駅を教えてください」
長い髪の少女は、私たちと同じくらいの年齢に見える。白いワンピースを着て笑っているが、少し怖い感じだ。眼がきつい。
「駅は……歩きながら話しましょう」
三人が土手の上を歩きながらSNSやYouTuberの話題で盛り上がる。もちろん私はそんな事は知らない。
学生服の男の子と親しげに接しているワンピースの少女は、ちらちらと私を値踏みする。嫉妬なのかもしれない。偶然出会った私たちはレトルト三角関係かな? この年頃は、恋や愛が好きだ。
「どこに向かっているんです?」
「どこに行きたいの」
「家に……戻りたいです」
私は不安で苦しそうな彼の腕にやさしく触れた。彼は驚いたように私の顔を見る。いきなりワンピースの少女が彼の反対側の腕を持ってひっぱる。
「彼は私のものよ!」
怒鳴る彼女もさみしそうだ。私はゆっくりと光をまとうと素顔を見せる。
「彼は……戻れるから、大丈夫よ」
ゆっくりと彼の姿が消える。残されたワンピースの少女は、呆然としながら涙をながす。子供のように泣いている少女を抱きしめる。川で死んだ少女は恋人が欲しくて、たまに連れてきてしまう。
「あなたも早く成仏しないとね」
菩薩様に抱かれた少女は、はらはらと光の粒にくだけると川原に散った。