創作民話 悪徳お姫様は吸血鬼に狙われる3
王は困惑をしていた、四女のローゼットの結婚が2回も失敗している
「少しランクを落とすか」
新しい婚約者を側近に探させる。
専用メイドのアメッタは、姫の部屋に入ると服が散らかし放題だ
「王様からお呼び出しがあります」
私はアメッタに着替えをしてもらう。
「もう私は結婚できないわ」
悪い噂もある、しばらくすれば落ち着くだろうが、適齢期が過ぎてしまう
そうなれば、見知らぬ国へ嫁がされるかもしれない
風習も言葉も違う国では、自分がどう扱われるかは予測できない
下手すると、邪険に扱われて病気で死ぬ場合すらある
「もう尼寺に行こうかしら」
「尼寺へ行くのですか?」
アメッタが興味を持ったようだ
「変な国に嫁ぐくらいなら、この国で尼として生きるわ」
「尼寺には女性が大勢いますよね?」
変な事を聞いてくる、尼寺に男が居たら問題だ
「当たり前でしょ、さっさと行くわよ」
父王が「婚約相手は決まった」と言うが、そのあとは沈黙する。
「どこのお方ですか?」辛抱しきれずに聞くと
「ガザール伯爵だ・・」
「ガザール様は、お体が悪く寝込んでいると聞きました」
病人に嫁ぐのだろうか?
「いや体ではなく、心の病の方だ」
私は呆然とするしかない、父を恨むべきなのだろうが、私はそれも出来ない
女として生まれた宿命のような価値観がある
王の命令は絶対だ
今回も式は無く、馬車でガザール伯爵の館へ行くと
年老いた男性の召使いが一人だけ出てきて、私とアメッタを案内した
部屋に案内されると、そこは旦那様のお部屋で私だけが中に通される
アメッタは部屋の外だ
「奥様がご到着されました」
それだけ言うと、従僕は出て行く
薄暗い部屋の中で、様々なものが散乱しているのがぼんやり見える
窓近くで椅子に座るガザールは、頭の毛がほぼ抜け落ちて老人のように見える
手足も細く、立ち上がるのも大変そうな筋肉の量しかない
第一印象は、廃人だった
「旦那様・・ローゼットと言います」
少しお辞儀をしても、反応がない
私にはもう、心が消えた人形か何かに見える
近寄りながら顔を見ようとすると、ガザールがその弱々しい手を伸ばす
「妻のローゼットです」
私は彼の手を握る。
それは義務というよりも死を間近にした一人の人間を介護しようとする
自然の行為かもしれない。
彼の手を握ると同時に彼は立ち上がる。
予想しない動きで私は逃げようとしたが、想像以上の力で私を羽交い締めした
そのままベットに押し倒されると、乱暴に私のスカートをはぎとろうとする
彼は私の内股をこじあけるように体を入れてきた
「たすけて・・」か細く声を上げると、ベットの反対側にアメッタが居た
何故いるのか判らずに混乱をしていると、アメッタは吸血鬼に変化する。
「やぁお嬢さん、また会いましたね、私の名前はヴァリア・カイン・シュタイン」
暢気に挨拶をしているが、現在進行形で私の貞操が危ない
妻なのに貞操を言うのも、おかしい
「なにしに来たの!」
もうわけがわからない
ヴァリアは、ベッドに飛び乗ると伯爵の頭を掴んで、そのままひねる
まるでワインの栓を開けるみたいに、くるりと伯爵の頭は反対側を向いた
死んだ伯爵が私に覆い被さると、その衝撃が痛くてたまらない。
「ちょっと助けて」
吸血鬼に命令している自分がちょっと笑えてくる
もう頭が変になっているのだろう
吸血鬼ヴァリアは、私を助け出すと隣に座る
「私の妻にならないか?」
「それよりアメッタはどうしたの?」
私が睨むと、おどけたように「大丈夫だ、私が一回だけ血を吸うと眷属になった」
「眷属?」
「そうだ、人間は血を吸われると吸血鬼になる、私たちの仲間だな」
私を見ながら
「でも君は変化しない、たぶん吸血鬼への耐性があるのだろう」
「アメッタはまだ生きているの?」
「私の城で、召使いとして働いているよ、
私は君を観察しながらプロポーズの機会を狙っていた」
少し考える、このままでは父から次はどんな男に嫁がされるのか判らない
「私を吸血鬼にして、あなたの国へ行くの?」
吸血鬼はやさしく頬をなでながら、「私はこの国の大公だよ」