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怪談 黒い猫【お題:恋猫と】 #シロクマ文芸部参加作品 ※危険
※ガチガチの怪談なので、心が弱い人は読まないように。あと猫好きも見ないでください。
恋猫と布団に入っていると起きたくない。小学生の次郎は、猫のやわらかな手触りを楽しむ。
(お前は、かわいいな)
クロは名前の通りにカラス色の猫で切れ長の目で次郎を見る時は、なんとなく色気すら感じる。だから次郎はクロをかわいがった。
「クロ、クロ かわいいよ」
「ニャーン」
頭を次郎にこすりつけて甘えるクロは、まるで恋人のようにも見える。
「いいかげんに起きなさい」
「わかったよ」
母親が布団をはがすと次郎もクロも仕方なく朝ご飯を食べに行く。学校にいって、早く帰ってクロと遊びたい。次郎はもうクロの事で頭が一杯だ。
「次郎君、おはよう」
「オハヨウ、咲ちゃん」
通学路で、学級委員長の咲に会う。頭がよくて美人でやさしい。理想的な同級生はクラスの中で誰からも好かれていた。
「今日もうれしそうね」
「クロと一緒に寝てた」
「……猫?」
「もう恋人と一緒さ」
所詮はこどもだ、他意があるわけもないが、だが彼女の心に悪意がめばえる。その悪意は嫉妬から発生した。
(わたしなんかより猫を……)
別に次郎が好きなわけでもないが、他人の幸せが自分の心を不安にさせる。咲は、次郎の家でクロをさがす。黒くてきれいな猫は、庭でひなたぼっこをしていた。
「気味悪い猫」
しのびよると金槌で叩いた。ギャっと一声するとヨロヨロと動けない。何回も叩いてから川に捨てた。彼女はとても気持ちが良かったので、にんまりと笑う。ほほに血が飛び散っている。
「クロ、クロ」
次郎はクロを探すが見つからない、川まで探しに行くとクロがいた。怪我をしているクロは動けない。
「おかあさん、クロが!」
「大変、箱に入れて」
箱に入ったクロを心配そうに見る次郎は、なにができるわけでもない。ひたすら猫を見つめながら涙を流す。自分が悪い、クロと遊ばなかった自分が悪い。クロ助かって、クロごめんよ。
いつしか眠くなり母親が布団につれていく。あたたかい布団なのにさみしい布団。クロが居ない布団なんて意味が無い。うとうととすると、布団の中にクロが入ってきた。眠くて眠くて仕方がないけど、とっても嬉しい。やわらかい毛をなでた。朝になると母が起こしに来る。
「次郎、起きて」
「なに? おかあさん」
「クロが死んだの」
「え?」
飛び起きると母に連れられて箱を見る。クロは、まるまって冷たくなっていた。ポロポロと涙を流す次郎は、いつまでもクロの毛をなでた、固い体は、もういつものクロじゃない。
「ぎゃーーーーーーーー」
母が悲鳴をあげている。あわてて自分の部屋に戻ると自分の寝床を凝視している母がいる。硬直した母は、布団を指さす。布団の上にはクロがいた。
「クロ?」
近寄ると、クロじゃない。長い髪の毛のまるいかたまりは、咲の頭部だ。次郎が寝ている間に、クロは復讐をとげていた。クロは、次郎に見せたくて、自分を殺した犯人を布団の中までもってきた……
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