SS くされ縁【お題:#腐れ縁だから】青ブラ文学部参加作品(550文字位)
出会いは偶然で永遠に思える。海の中でそっと触れた時に、つながれた。
「私と死のう」
「わかったよ」
何回も繰り返す言葉。海を散歩すれば気が晴れて忘れる。彼女が落ち込み、僕がなぐさめる、くされ縁だと思う。いつもと同じで夕暮れの中を歩けば気分がかわるはずだ。その日も一緒にでかけると大きな波がうねるように砂浜を洗う。彼女は嬉しそうに近寄っては逃げた。
「危ないぞ」
「平気よもう平気」
波にさらわれる、いやさらわれるのが運命だと感じる。
「おなかも大きくなったから……もういいでしょ」
「お別れなのか」
「十分よ」
「また会えるといいな」
「私とあなたは永遠だと思う、あの時から」
ふくれた腹は大きくせりだしている。彼女は海に近づく。
「さよなら」
「さよなら」
ざっと大きな波が来ると彼女を飲み込んで、そのまま連れ去った。彼女は海の中で卵を放出する。僕も終わろう。ゆっくりと波に近づいた……
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「これが古生代のめずらしい甲殻類の化石です、やわらかい泥の中で死んで化石になりました」
化石は、まるで誓い合った恋人のように……雄と雌が足をからめている。みんなが次の展示へ移動するが、僕と彼女は動けない。
「ちいさいね」
「うん」
彼女の手が僕に偶然ふれると、どこか遠くで懐かしい感じがした。