SS 放置子【#ひとりぼっち】#青ブラ文学部(480文字くらい)
「清美、あの子はどこの子?」
「知らない」
家に遊びに来たグループの中で見なれない女の子がいた。娘に聞いても知らないと首をふる。誰とも遊ばないでひとりぼっちで座っていた。
(放置子?)
貧困の家庭が増えて親が子供を放置した。そんな子は、どこか見知らぬ家庭に入り込んで、家庭のあたたかさを疑似体験する。私は髪の長い無表情な子に声をかけた。
「こんにちは」
「こんにちは」
「あなたの、お名前を教えてくれない?」
「真由」
心音が高まる。
「真由ちゃんは、どこに住んでいるの?」
「ここです」
「……ここは私の家なの」
「はい」
「お母さんに電話をするから、番号を教えて」
「お母さんは死にました」
どんよりとした眼で私をみつめる彼女は……私だ。ぐいっと腕を引っ張られる。
「おかあさんどうしたの?」
「え? なんでも……」
真由は消えていた。母が死んで父は私を放置して育った。真由は私だ。私は気分が悪くなり急いでトイレに入る。扉を開けると、真由が立っている。
「ねぇ、代わって」
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「おかあさん、どうしたの?」
「なんでもないわ」
「なんか嬉しそう」
「そうね、もうひとりぼっちじゃなくなったから」