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武蔵野大学ウェルビーイング学部の授業を体験。幸せのヒントを探してきました!

みなさん、ウェルビーイングを学べる大学があること、ご存じですか? 実は2024年4月、武蔵野大学にウェルビーイング学部ができました。大学によると、世界初だそうです。学生のみなさんは日々、どんなことを学んでいるのでしょう?

そこで、「幸せな働き方伝え隊!」は学生のみなさんに交じり、「対話」について学ぶ中村一浩准教授の授業を体験させてもらいました。 この日のテーマは、いかにして自分の「感情」と向き合うのか。授業を通して、幸せになるためのヒントを探してきました!


大学で学ぶ「対話」とは?

10月半ば、東京都西東京市の武蔵野大学武蔵野キャンパス。正門を抜けると、見事なイチョウ並木が出迎えてくれました。教室には、すでに90人近い学生が詰めかけています。

中村さんは複数の企業を経て独立し、「対話」を日常に取り入れるための取り組みを続けています。そして2024年4月、ウェルビーイング学部の准教授に就任しました。この「自己理解入門」の授業も「対話」がテーマです。

ウェルビーイング学部准教授の中村一浩さん

中村一浩さん
武蔵野大学ウェルビーイング学部准教授、株式会社森へ 代表取締役。ミスミ、リクルートなど複数の企業を経て独立。現在は「対話」の日常生活への実装に向けて、様々な事業を通じて社会実験中。著書に「ことばの焚き火」「森と共に、歩む日々」など。

感情と向き合うグループワーク

大学の授業といえば、先生が一方的に話し、生徒たちは黙々とノートを取っている・・・。そんなイメージがありますが、中村さんの授業に座学の時間はほとんどありません。

学生たちの手元には、何やら文字がたくさん書かれた1枚の紙があります。気持ちや感情を表現する言葉のリストです。「幸福感」「喜び」「爽快感」といったポジティブな言葉と、「イライラ」「怒り」「疲労」といったネガティブな言葉がずらり。数えてみると、全部で260個ほどの言葉が載っていました。

授業では、学生たちが自分の考えや感じたことを言葉にしていました

この日、学生たちは4~5人のグループに分かれ、このリストを使って自分の感情に向き合うグループワークに取り組みました。中村さんは黒板に「出来事→解釈→感情」と書くと、ワークの内容を伝えました。流れを、簡単に説明してみます。

まず、この1週間で自分の気持ちが動いた出来事を一つ挙げ、この出来事によって生まれた感情を自分なりに解釈します。感情の振れ幅の大小は問いません。1人がその内容をグループ内で発表した後、残りのメンバーたちがリストを元に、どんな感情だったのかを話し合います。そして、その感情の背景にある「本人が大切にしていること」を探るのです。

ワークで生まれた「うれしい」感情

各グループは教室を出て、思い思いの場所でワークに取りかかりました。私が交ぜてもらった4人組は同じ校舎内の「学生ホール」という場所を選び、丸いテーブルを囲んで、それぞれの出来事について話し始めました。

ワークに取り組む4人のメンバーたち

そんな中、メンバーのユウさんは最近、中学生の妹に悩みを相談されたことを振り返りました。泣きじゃくる妹の様子に「驚いた」というユウさん。この出来事を通じて、ユウさん本人にどんな感情が生まれたか。そして、その背景にある「彼女が大切にしていること」とは何なのか。ユウさんが席を外すと、残りのメンバーで意見を出し合いました。

「やっぱり、妹を『愛おしい』と思ったんじゃないかな」「いきなり泣きつかれて、本人はかなり焦ったかもしれない」「でも、本人は意外に落ち着いて振り返っていたよね」。手元の感情リストを参考にしながら、それぞれが次々と考えを言葉にしていきます。

ユウさんが戻ってきました。残りの面々が話した内容を伝えます。

「ほっとする気持ちがあったんだと思う」。メンバーの一人が話すと、ユウさんは思わず「そう!」と言って、うなずきました。思春期を迎えた妹が自分なりに悩む姿を通して、「いつの間にか、ちゃんと成長しているんだな」という安心感を抱いたそうです。さらにメンバーから、「頼ってくれたという嬉しさもあったんじゃない?」という声が出ると、「それは自分では気づかなかった。言われてみると・・・確かに」と笑みがこぼれました。

私の番が来ました。そもそも、この1週間の出来事を振り返ることなんて普段からしていないので、新鮮な気持ちになります。「そういえば、最近作った晩ご飯が、思いのほか美味しくできたな」。ささやかなことですが、シェアしてみました。

テーブルを離れると、4人が話をしています。内容は聞こえませんが、そのとき不思議な感情がわいてきました。自分のことを話してくれている。そう思うと、何だか嬉しい気持ちが湧いてきたのです。

そして、メンバーたちがフィードバックしてくれました。「料理がうまくできたという満足感や達成感が、その時の感情の大部分を占めていたけど、家族の反応を期待する気持ちも少しあったのかも」。なるほど、確かに・・・。

学部1期生たちの気づき

入学して半年。ウェルビーイング学部の1期生たちは、この日のワークや学部での学びを通して、どんな気づきを得ているのでしょうか。

江口こころさんは「ポジティブな気持ちの中にもネガティブが交ざっていることが分かり、自分の感情についてより深く考えるようになりました」と話します。以前は友達や人脈が多いほど幸せになれる、と考えていたそうです。「でも、だんだん疲れてしまって」。最近は自分の気持ちやコンディションと向き合うようになり、仲間とゆるくつながったり、気持ちが休まるように自分の時間を大切にしたりしているそうです。

牧野迅左衛門さんは「入学から半年たって、前よりも寛容で楽天的になった気がします。実現性があまりないことでも小さなことでも、とりあえずやってみるようにしています」と笑顔で話してくれました。

自分の感情と仲良しになろう

この日のワークや授業には、どんな狙いがあるのでしょうか。授業が終わった後、中村さんに聞いてみました。

「自分の中にある感情を、まずはちゃんと見つめること。そして、その感情を無理にコントロールしようとせず、仲良くなってほしいんです。なぜなら、その感情には絶対に意味があるから」

「例えば、『怒り』という感情にも意味があって、怒りに向き合うことで、自分が大事にしている何かをないがしろにされたということに、ちゃんと気づくことができます。でも、『怒りは良くない感情だ』と思ってコントロールしようとすると、自分の感情にふたをする、なかったことにする、という発想になるんですね。そうなると自分の感情自体を大事にできないし、ひいては相手の感情も大事にできなくなってしまいます」

そういえば、ワークを通して学生たちや私が感じた「嬉しい」という気持ちは、なぜ生まれたのでしょうか。中村さんが、話してくれました。

「人は本能的に『つながっていたい』『関心を向けられたい』と思っています。だから、自分のことを話してもらうと、やっぱり嬉しい。これは当たり前の反応です」

そして大事なのは、こうした気づきを学生自らが体験することだと言います。「自分のことを語られると嬉しいんだな、という体験が残っていれば、どこかのタイミングで自分の人生に紐づき、そして人生が豊かになっていくはずです」

働くことを、ほぐしてみる

実は中村さんの授業には、社会人もゲストとして参加しています。この日も数人が学生たちとワークに取り組みました。

コーチングの会社を経営する三好シゲルさんは、中村さんが個人的に開く「対話塾」で学んだ縁で、この日の授業にも参加しました。対話を学ぶことで、「相手を表面的に評価・判断するのではなく、その人の感情に向き合い、背景や経験をより深く受け入れられるようになりました」と話します。

「伝え隊」としては、働く人のヒントになることを持って帰りたい!そこで、中村さんにメッセージをもらいました。

「『働く』というイメージを、少しほぐしてみてはどうでしょうか。もう少し分かりやすく言えば、自分で自分を閉じ込めている『枠』や『箱』に気づくことです」

例えば、働いているときの自分の感情や、自分が大切にしていることについて振り返ってみる。自分では年収や出世に価値を求めていると思っていたけれど、実はこうした考えは自分で作ってしまった枠なのかもしれません。

「仕事がうまくいっている人は、振り返らなくても大丈夫。でも、いつも順調とは限らないですよね。何か違和感を覚えたとき、『あ、ちょっとほぐしてみようかな』と立ち止まってみてください。いったんほぐせば、つむぎ直せますから」 

武蔵野大学
武蔵野女子大学を前身とし、2003年に武蔵野大学に名称変更。2004年の男女共学化以降、大学改革を推進し12学部20学科、13大学院研究科、通信教育部など学生数13,000人を超える総合大学に。2024年に創立100周年を迎えた。ウェルビーイング学部は、一人ひとりの多様な幸せと世界全体の幸せをデザインしカタチにしていく人材の育成を目指している。

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