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米澤穂信によるミステリ『追想五断章』

先月の所用に携えた『奔馬』を旅先で読み終えてしまって、金沢で調達した初めての米澤穂信氏のミステリー。

推しの推しで、ずっと気になっていた作家さんはなんと、岐阜県出身の金沢大学文学部卒というから偶然にあう。

しかも、主人公は伯父の古書店に居候する大学生という、何気に魅惑の舞台設定に惹かれたのでもある。

(あらすじ) 大学を休学し、伯父の営む古書店に居候して働く菅生芳光(すごうよしみつ)は、ある女性から、死んだ父親が書いた五つの「結末のない物語(リドルストーリー)」を探して欲しい、と依頼を受ける。調査を進めるうちに、故人が20年以上前の未解決事件「アントワープの銃声」の容疑者だったことがわかり――。五つの物語に秘められた真実とは? (カバーより)

書店に持ち込まれた買い入れの本のなかに、探している雑誌”壺天”があるかもしれないから探してほしい。そんな依頼をしてきたのは芳光とあまり歳のかわらない北里可南子だった。

父・参吾が叶黒白(かのうこくびゃく)の名で認めたらしい物語は全部で5つ。同じく、父親の死で学費に行き詰まり、大学を休学している居候の芳光にとって、報酬に目が眩んだ末の散り散りになったリドルストーリー探しの日々が始まるのだが。

過去の関係者たちからのツテで一篇ずつ集まっていく掌編。可南子の手元には、父が遺したストーリーの結末だけがあり、見つかるたび、本来ありえないオチが読者にもたらされるという、作中作をたのしめる良さがあった。芳光の動向より、アントワープ事件の真相より、むしろリドルストーリーをこそが面白いって本末転倒なのかもしれないが。

芳光の家族にも、パチンコに明け暮れる伯父にも、可南子の両親にも逃れがたい人生の情況があった。人が生きるうえで避けられない難物にまで目を向けたしたたかさがそれ相当の読み応えになっていたとおもう。

ちなみに、推しの推しは<古典部シリーズ>ゆえ、つぎ機会があればそちらを手に取ってみようとおもう。

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