『ライド・オン』にみる、香港映画の終焉再び
いつからだろう、ジャッキー・チェン氏の作品を追わなくなって久しい。
反日発言がどうとか言われるずっと以前、ハリウッド映画に出始めた頃だったろう。
中学生の当時、ひとり劇場で新作を観るほどにはカンフー映画が好きだった。家
族旅行で香港へ行けば誰よりも興奮した。
それさえ今は昔、古希を迎える大スターによる懐かしいアクションと聞いて、本当に久しぶりに劇場へ足を運ぶ。
先日の『無名』もそう、偏愛していたむかしの香港映画はもう作られない。
ジャッキー氏といえども、過去の栄光となったアクション・スターの無様な老年を演じるばかり。
所々の演出に悲しくなり、それでも体を張った惜しみないアクションに感嘆して、また老体ギャグに悲しくなる。
ケガをきっかけに第一線を退き、愛馬チートゥとともに撮影所でエキストラをしながら再起を図る元スタントマンのルオ・ジーロン。
ある日、友人の債務トラブルに巻き込まれ、チートゥを借金のカタに連れ去られそうになる。
そこで、疎遠だった一人娘のシャオバオを頼ろうとするのだが、家庭を顧みなかった父親を娘はなかなか許せないのだった。
チートゥに引き合わされるように、やがて父と向き合いはじめたシャオバオは、恋人で新米弁護士のナイホァに協力を求め、理不尽な悪に3人で立ち向かっていく―
予定調和、ベタベタ、娘と愛馬を想って泣いてばっかり。
こんなにドンユイちゃんみたく泣くジャッキーなんて見たかないとおもいきや、香港時代から痛いときや嬉しいときも泣いてたのだ、そういえば。
ドラマ演出で泣くから全編湿っぽいのだ。
もう一度、愛馬チートゥと返り咲きたいジーロンの悪あがきが、時代遅れのスタントを馬鹿にするCG全盛期の撮影所の面々に蔑まれ、さらに悲しい。
それでも無理やり体を張るジーロンの老いや諦めの場面が繰り返される。
もっとも痛々しいのは、かつて氏が世界を席巻したアクション・シーンを繋げて、主役ジーロンのものとして見せる演出だ。
ジャッキー氏が涙を流し、歯を食いしばるようにしてフィルムに見入る姿を、まるで見世物のようにスクリーンにでかでかと映し出す、中国資本の無神経さに虫唾が走る。
もちろん大好きな忘れられない名場面集だとしても、こんな形で流れたのではジャッキー氏に失礼ではないか。
好評価ぽかったのに、悲しく腹立てて感想を書くとはおもわなかった。
(監督 ラリー・ヤン/126min)