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『Pearl パール』にみる、『X エックス』シリーズ躍進と悪徳の栄え
ミア・ゴズ主演のスラッシャー・ホラー3部作として始まった「X エックス」シリーズ第2弾。
前作の恐ろしい老婆殺人鬼パールの誕生に迫る、若かりし頃の物語を描く。
1918年、テキサスの貧しい農場に暮らすパールは純真無垢な娘。
映画の中の華やかな踊り子に憧れる一方で、現実は厳格な母親に支配され、父親の介護と家畜の世話に追われ、戦場へ行って還らない夫を待ちわびる鬱屈した日々だった。
ある日、町で若い映写技師と出会い、これを機に外の世界への憧れがますます募ってく。
そんな折、旅一座のオーディションがあると知ったパールは、参加したい気持ちが抑えられなくなり農場を抜け出すのだった―
シリーズ以前の逸材ミア・ゴスに気づかず、『ニンフォマニアック』や『ハイ・ライフ』で観ていたはずなのに思い出せない。
それが、タイ・ウェスト監督のミューズとなったいまでは幅広い演技力に驚かされるばかり。
彼女の体現する狂気が時に無垢で、愛らしく、凛として、エロティック。
銀幕ダンサーに憧れる本編に必要な舞台に映える魅力さえ顕在する。
現実から抜け出したい田舎の小娘の育んでいた激情は、じわじわとかなり早い段階から観る者を不穏な心理状態へと引きずり下ろしていく。
若い映写技師が見せたスクリーンの向こう側の世界へ、誘惑はけして彼女を弄ぶのじゃなく運命を握るのは常にパールなのだ。
踊り子になるためなら恋人も家族も親戚も、根こそぎ消し去ることも厭わない。
何も知らずに帰還した夫を出迎える殺人鬼となったパールが、第1弾『X エックス』の惨劇へと繋がっていく。
すでに製作されている第3弾はタイトル『マキシーン』、『X エックス』の主人公の名で、後日譚を描いているそうだ。
そもそも『X エックス』を観たのは偶然、アマプラにあったノーマークのホラー映画のあらすじを読んでいたとき。
”映画の撮影で田舎の農場を訪れた若者6人が殺人鬼の餌食となって―”云々。
映画の撮影というのが気になっただけで課金するつもりのないものを、ポチっとボタンが押ささって...勿体ないので観ただけなのだった。
そうして卒倒、映画撮影じゃなくてポルノ撮影のために農場を訪れた陽気な若者たちがいかにも往年ホラーのノリで、愚かしくエロく、おぞましかった。
最後まで生き残ったマキシーン(ミア・ゴス)と対峙する老婆パールを一人二役でミア・ゴスが演じている奇妙にここまでくると少しは捨てておけない気持ちになっていたけれど、感想を書くこともなく忘れてしまった。
第2弾にして製作費倍増以上か、画面の質から明らかに違った『Pearl パール』の躍進はやっぱり俳優ミア・ゴスの魅力の賜物といえそうだ。
道で拾った黒いハットを被り、トウモロコシ畑で案山子相手に煽情的に踊るパールが忘れがたい。