数多、映画の原作『不思議の森のアリス』
評論家で翻訳家の仁賀克雄氏による<ダーク・ファンタジー・コレクション>第2弾。
フィリップ・K・ディックの『人間狩り』にはじまり、論創社より全10巻刊行されているシリーズ。
仁賀氏は存じ上げず、ただ収録の短編「血の末裔」を探していて見つけた一冊。
いつか高原英理さんの『ゴシックハート』のなかで、”憧れとしての怪奇をよく描いている小説”として紹介されていた。
自分のなかのゴシックハートを試してみたいとメモしたのだ、たぶん。
結果”感動”はしなかった、けれども長短16作品のなかでもっとも面白い短編のひとつだった。
陰気な世界が好きでドラキュラに憧れているジュールス少年が、人間的な生活を捨て吸血鬼になろうと無理を続ける先に、何ものかの訪れを感じる。
それは言うのだった。
「わが息子よ」と―。
頁にしてわずかに16頁、怪奇趣味の粋がつまっていた。
そんなワケで、作家リチャード・マシスンのすごさすら知らずに読み始めたら、あれもこれもが映画の原作なのだった。
古くは『縮みゆく人間』『地球最後の男』『ヘルハウス』『奇跡の輝き』『アイ・アム・レジェンド』『リアル・スティール』..etc。
もっとも驚いたのは名作『ある日どこかで』、スピルバーグ監督の『激突!』までがマシスン原作なのだった!
映画好きのくせになんにもわかっていなかった。
さらに「二万フィートの悪夢」なんか、かの『トワイライトゾーン/超次元の体験』のなかで一等おもしろかったお話であるのだ。
ソッコーぴんとくるストーリーにマシスン氏の凄さを思い知らされる。
ぼんやりした作品も当然あるなか、やはり気に入ったのは「血の末裔」「二万フィートの悪夢」。
それから「こおろぎ」、ボディ・スナッチャーっぽい「生命体」、胸の苦しくなる「生存テスト」、作家の矜持のような「生き残りの手本」、最終話のすばらしい中篇「不法侵入」。
こう書くとほとんどが好きだったみたい。