読んで、書いて、逃げる
昨夜も家に帰って晩ご飯を食べた後に、レイモンド・カーヴァー傑作選CARVER'S DOZENを読んだ。「ぼくが電話をかけている場所」という短編で、これは1万8千字くらい。
アルコール中毒療養所に入所している主人公の男と、後から入所した煙突清掃人の若い男とのやりとり。どうしようもないもの同士の語りが抑えたトーンで続く。2人の過去はどうしようもなく不幸だけど、暗い感じではなくて、やや明るい兆しもあって(うーんどうだろう)、不安な中でも穏やかに話は進む。やや低空で進みつつ、これから上向きかどうかというあたりで話が終わる。この先2人が上手く生きて行けそうかというと、不穏な感じもしていて、どうなんだろうか…と余韻を残す。
翻訳つながりで「翻訳夜話」を少しだけ読み進めてから「中動態の世界」を読む。ゼミ用レジュメ作成に向けて、3章の4あたりで彷徨い、ノートにメモを取る。
A VS B と A VS C の B と C は違うのだが、実は B と VS してる A と、C と VS してる A は共通項だが同じ意味ではないという。それは A VS B と A VS C のカテゴリーが相違しており、パースペクティブもカテゴリー別に存在してるのだと。同じ A でも VS する B や C によって A の意味の定義が変わる。だから A VS B と A VS C そのものの意味を定義しなければならない。どうなんだろう。
夜の時間は静かに過ぎて行く。可能な限りの時間を読んだり書いたりして過ごすぼくは、余計なことを思い出さないようにしてある世界から逃げ切りを図る。少し距離を広げて逃げ切ったかに思えたが、夜眠っている間に当然のように追いつかれる。朝になり目が覚めて少しホッとする。今夜もある世界から逃げ切りを図る。