Writingエッセイ02) WHATとHOWから見た評価基準
※IELTS®の評価項目に関して修正しました (4/29/2023)。
◆「WHATとHOW」から見た評価基準
通常WHATとHOWというとき、何を(WHAT)、どのように効果的に伝えるか(HOW)という意味で使うことが多い。しかしここでは、英語のテストということを加味して、WHATは伝えたい内容そのものに関連した項目、HOWは“英語という道具を通して”それをどのように表現していくか、という範囲を指すことにしたい。それで、前述のように試験であるからには評価基準が存在するわけだが、多くの場合、これらの基準もWHATとHOWの両面に光を当てている。
たとえば英検®だと、①内容・②構成(→WHATにあたる)、そして③語彙・④文法(→HOWにあたる)という4つの観点で評価される。具体的には、各4点満点で採点され、合計16点満点がスコアへと換算される(何点だとどんなスコアになるかは変動する)。この①~④の4項目は頭に入れておくと良いだろう。
◆WHAT ~①内容・②構成~
ここでは、英検®の評価基準が端的で分かりやすいので、これをもとに考えてみよう。
まず①内容だが、文字通り、「問題文で要求されている内容が書けているか」がポイントになる。もちろん、大抵の受験者はお題で与えられたテーマに沿った内容を書くだろうから、それだけで即座に満点というわけにはいかない。ただ自分の意見を「賛成・反対」等と述べるだけでなく、それを支える=サポートしてあげることで、説得力のある内容を構築する力が求められている。そのためには、自説の理由を明確にするのはもちろんのこと、より詳細な説明を付加したり、具体例を挙げたり、対比を入れてみたり…と、いろんな技を駆使することになる。基本的にWriting問題では、「Aに賛成か反対か」と問われて、どちらの立場を選んだか自体によって評価されることはない。それよりも、その立場・意見をいかに効果的にサポートできているか(→これが説得力につながる)が問われることになる。
続いて②構成については、「文章の流れ」というのが感覚的に分かりやすい。要は読み手がスラスラと“流れるように”読み進められることが1つの基準になる。これをTOEFL iBT®の公式ガイドでは面白い表現をしていて、構成(Organization)というのは、構成を上手くできて“いない”ときに採点者が気づくもの、らしい。構成がしっかりしており流れるように読めるなら、読み手が「構成」という観点に意識を向けなくてもスラスラと読み切ってしまう、ぐらいの意味合いだろう。素晴らしい演奏を聞いたとき、曲の流れが心地良すぎて細かな演奏テクニック等には全く気づかないのにも似ている。そこまでいかなくても、いま書いているのは何の具体例なのか、それとも反対意見に対する反論なのか、そういったパーツごとの役割が明確に伝わるように書いていく必要がある。ここで有効なのが、転換語である。たとえば“For example,”なら「今から具体例が待ち受けているな」と伝わるし、“In contrast,”は「今から対照的な内容を書きますね」というシグナルになる。またそれ以前に、ひとまとまりのエッセイを書く場合は、全体の構成、つまりIntroductionで話の導入を行い→Bodyで本論を展開して→Conclusionで結ぶ、といった骨格も理解しておく必要がある。
◆HOW ~③語彙・④文法~
WHATの①内容・②構成に引き続き、ここからは、英語で表現する技術(ここではHOWと呼ぶ)に関わる項目になる。
③語彙は「適切な語彙を正しく効果的に使えているか」ということになるが、ここでやや意識を転換したいのが、「減点主義を絶対視しない」ということである。通常、学校のテストや入試などでは、いかにミスしないか(減点されないか)に主眼が置かれることが非常に多い。学校のテストでも、いわゆるスペルミス(spelling mistakes)ごとに1点ずつ引かれていき、「英作文でほとんど点数が残っていなかった」という経験がある人もいるだろう。もちろん、エッセイを書く際にもこうしたミスはできるだけ減らさないといけない。しかし、「減点されないように、できるだけ簡単な単語を中心に選ぶ」という姿勢にまで至ってしまうと、これはエッセイにおける語彙の評価としては危険信号である。たとえばIELTS®の評価項目では、“uses a wide range of vocabulary”が高評価のポイントとなっており、幅広い語彙力があることをアピールする必要がある。ちなみにIELTS®では、Band 8 (かなりの高評価)の欄には“uncommon lexical items” すなわち普段はあまり使わないような語彙 についても言及があり、これは「どうぞ身につけた語彙をアピールしてくださいね」と言われているようなものだ。もちろん、あくまで文脈に沿った適切な語彙を使うべきで、ただ評価を上げるためだけに不自然に難しい単語や熟語を用いようという話ではない。が、少なくとも「減点されないようにシンプルな単語だけで答案を作る」という作戦は、エッセイの世界では、目指すレベルが上がるほどに評価されにくくなっていく。そこで、テスト本番はやや安全にいく(自信のある表現を使う)として、練習の段階では、語彙の幅を広げるべく、少し難しめに感じる表現にも挑戦するのが良いだろう。「かなり」と言いたいなら、veryだけでなくconsiderablyやsignificantly等の表現もある。good・badのかわりにpositive・negativeと書ける場面もあるだろう。「ミスはないか」という減点主義だけでなく、「語彙力を発揮できているか」という、いわば加点主義の考え方もとりいれたいのが、この「語彙」という項目である。(※ただし、これは各テストの性質に合わせて調節する必要がある。たとえば減点主義で採点される大学の入試答案なら、やはりミス無しを大きな目標に置くべきかもしれない等。)
終わりに、④文法について。ここでも、ミスをしないというだけでなく、様々な表現を駆使していくことを意識したい。IELTS®などでは、4つあるライティング評価基準のうち1つは“Grammatical Range and Accuracy”という名称である。上でも登場したこのrangeという語には「幅」とか「範囲」といった意味があるから、正確性(accuracy)だけでなく、幅広い文法事項を使いこなす力を見せてほしいということになる。また、たとえば「不定詞」や「関係詞」といった文法書の項目だけでなく、もう少し広く「様々な文構造」で表現する、ということも意識したい。SV. However, SV. は SV, but SV. と表現することもできれば、また Although SV, SV. の形に変換することもできる。SV. And this … を SV, which … と表現できる場面もあるだろう。色んな英語表現ができることを示していきたい。(※ただし、テストの性質に合わせて調整すべきというのは文法でも同じ。)
〔コラム〕認識語彙 vs. 運用語彙
「減点主義 vs. 加点主義」を紹介したが、語彙の分野では「認識語彙 vs. 運用語彙」という軸もある。認識語彙とは読んで字のごとく、見たり聞いたりして認識できる語彙のことで、一方の運用語彙は「自分で使いこなせる」語彙ということになる。たとえばprosperを「栄える、繁栄する」という意味の単語だなと認識できる人もいれば、さらにWritingやSpeakingにて自分でprosperという語を駆使できる人もいる。私たちが英語を使うとき、認識語彙レベルでOKなものもあれば、ぜひ運用語彙にまで高めたいものもある。Readingで見知らぬ単語が登場したとき、「これはエッセイを書くときにも使えそうだ」と感じれば、綴りまで含めて覚えてしまい、次にエッセイの練習をするときに機会があれば積極的に使っていく。そうした姿勢があれば、運用語彙が格段に増加していくだろう。
〔コラム〕パラフレーズ
HOWの③語彙・④文法に関係する非常に重要な概念が、パラフレーズだ。これは、同じ内容を、違う表現に変換することを意味する。「WHATは同様でもHOWを工夫していく」技ともいえるかもしれない。たとえば読み聞きした内容を自分の言葉で人に伝えるとき、私たちは機械のように一言一句暗記しているわけではなく、無意識に自分の言葉を使って言い換えて説明しているものだ。一般に、英語では同一の表現を繰り返すことはあまり好ましくない。記事を読んでいると、人名が出てきたあとに、次の文ではThe Spanish doctor is…(このスペイン人の医師は…)と表現するなど、人名ですら別の言い方に置き換えていたりする。単語レベル、または文の構造ごと変えるなどして、伝えたい中身は一緒でも、異なった表し方をするように練習していきたい。そうすることで、「幅広い表現ができるんですよ」とアピールすることができる。
〔コラム〕減点主義
少し触れたように、減点主義を意識せざるをえない場面もある。定期テストの和文英訳問題ではミスするごとに減点されていくのが一般的だし、入試などでも減点主義で採点する場面は今でも多そうだ(もちろん採点する学校ごとの方針による)。減点主義には「間違いを減らし正確な英語を使えるようにする」というメリットがあるし、他方で加点主義は「間違いを恐れずに英語の幅を広げていけるよう促す」という利点をもつ。どちらが良い悪いの議論ではないし、また二者択一という問題でもない(実際TOEFL®等でも、ミスが目立つ場合はしっかり減点されるはずだ)。それで、実際的な話をすれば、「今から受けようとしているテストはどちらを重視しているのか」を知り、それに合わせた調節を行うことが必要になる。こう書くと、本質的な議論というよりも単にテクニックの話をしているように見えるかもしれないが、要はテストを受ける以上は評価されるポイントをおさえておこうということである。なお、どんなにミスがなくても、初歩的な英語しか書けない状態だとレベルが上がったときに対応できなくなってしまうので、「もっと英語力を広げていきたい」という姿勢の場合は、エッセイの練習を通してまずは加点主義の姿勢で挑戦するのが良いのではないかと思う。
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