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AI時代のライターさん生き残り術「私」を載せて書くために必要なことStep01:「私」ってなんだ? 自分を見つけて定義する

皆さん、こんにちは。ライターの谷垣です。

「AIに仕事を奪われそうっす」

「案件募集が減っでぎだぁぁぁ!!!」

「継続案件のクライアントがAIに乗り換えるって、まじかよ?」

最近、こんな不安の声もしくは悲鳴をときどき耳にします。ある程度の歴があるみなさんほど、差し迫った不安を感じているようです。

実は私自身も同様の不安を抱えつつ、AIを相手にどう生き残るかを真剣に模索しています。かれこれ30年近くこの稼業を続ける中では、さまざまな環境の変化を経験してきましたが、「AI台頭!」ほどのビッグウェーブは初めてです。

心してかからねば一瞬で波にのまれる――そんな危機感にあぶられつつ脳細胞を絞り上げて考えた結果、ひとつの結論にいたりました。

たぶん、この道しかないだろう、という生き残りルートをこのシリーズではなるべく具体的に語っていこうと思います。


◆AIの弱点はここ! 「出来杉くんの作文」しか書けない

ライターにとって、AIはとにかく強敵です。文章力は中の上くらい。考察力を備えているので、中堅のライターさんがあまり手がけていない企画の作成を得意とします。深みはあまりないものの、AIが作る企画は網羅性が高いので、簡単な記事用なら人より上手かもしれません。

なんといっても抜群にタフです。365日24時間フル稼働できますし、深夜2時に「記事を書いて」と依頼しても激怒したり飛んだりしません。しかも格安。サブスクなので、クライアントにとっては、たくさん書かせれば書かせるほどコスパがよくなる、という夢のような相棒です。

「人間のライターに勝ち目があるんやろか?」と不安になりますが、実はAIにも弱点があります。それは「偏ったコンテンツ」を作れないこと。これにはおそらく二つの要因があると考えられます。ひとつは提供している企業による制約。もうひとつは平均値や中央値を正解とするAIの性質です。

そのためAIの答えはどこまでも「優等生的」であり面白みに欠けます。『ドラえもん』にたとえるなら、出力してくるのは出来杉くんの作文みたいなものばかり。情報を伝えるツールとしては使えますが、「別のコンテンツも読んでみたい!」という興味や関心を惹起する力は弱々です。

読者の感情は人らしさに触れた際に大きく動きます。人らしさとは偏りであり、弱点やダメなところの露呈もそれに含まれます。出来杉くんの作文に興味を引かれない人も、のび太やジャイアンの作文なら「ちょっと読んでみたい」となるはず。勉強嫌いでなまけ者だったり、粗暴だったりする彼らですが、そこに「人間性」を感じる人は少なくありません。だからこそ、彼らがなにを書くのか知りたくなるのです。

マーケティングの初歩的な法則の一つに「人は人に反応する」というのがあります。つまり書き手が自身の「人間らしさ」を載せて書くコンテンツ、あえて偏らせたコンテンツこそ、AIには書けない(今のところは)領域であるはず。

では、具体的にはどうやって「人間らしさ」を載せればよいのでしょう? いくつかのステップに分けて解説していきますが、Step01ではまず、テキストに載せる「人間らしさ」の確立について語ってみます。

◆そもそも「私」って何者? 自己を深掘りしてみる

当然のことながら、あなたが語るべき「人間らしさ」とは、「自分らしさ」にほかなりません。「人間らしさ」を原稿にのっけるためには、自分がどんな人間なのか、どんな価値観を持っているのかをしっかり理解する必要があります。

自己理解にいたるやり方はあちこちで紹介されているので、興味ある方はググってみてください。今回はライティングにつながるものを選んでみました。

①自己分析を行う
自己を理解する上でいちばんの基本になるのがこれ。やり方はたくさんありますが、たとえば、「自身の強みと弱みを書き出してみる」といった手法も有効です。それぞれ50個ずつというように、個数を決めるのがコツ。多めに設定すると、自身のことを深く観察する時間が増えるので、「ちょっと無理っぽい」と思える数にするのがオススメです。

②過去を振り返る
過去の出来事を思い出して書き出してみてください。たとえば、「人生でいちばん嬉しかったこと」「いちばん悲しかったこと」「いちばん笑った出来事」などのタイトルを決めて、人生を振り返ってみると、自分はなにを大切にしているのか、なににこだわっているのかがわかってきます。

③他者からのフィードバックを受ける
①や②として書き出した内容を信頼できる身近な人に見てもらい、感想を聞いてみましょう。他者の感想は社会の中であなたが受けている評価にかなり近いはず。どんな言葉もいったん素直に受け入れ、自己評価とすり合わせることで、自己理解につながる正当な「自分像」をイメージしやすくなります。

◆「私は○○」 自己を定義し価値観を確立する

前項で挙げた自己理解には、実はちょっとした副作用があります。ナルシズムの傾向が強い人にとっては、終わりのない楽しみになりがち。「自分探しの旅」を延々と続ける人の多くは、その沼に腰まで浸かってしまい泥濘の中でモチャモチャとあがく「自分マニア」です。

それはそれで楽しみとしてはありかもしれませんが、ライターとしての成長を志す方にとっては時間のロスにつながります。テキストに載せる自己を確立するためには「自己理解」の沼を早々に抜け、「自己定義」を打ち立てる必要がある、とぼくは考えています。

こちらもさまざまなやり方がありますが、ぼくのオススメは以下のようなルーティン。

①コアバリューを言語化する
ライターとして活動する上で大切にしている理念を設定し、言語化します。「誠実さ」「創造性」「情熱」等々、自身に合うものを選んで、書いてみてください。

②「私は○○である」という定義を言語化する
自身を定義する名詞を選択してみてください。ちなみにぼくの定義は「私は物書きである」というものです。「私はママである」「私は不動産ライターである」等々、なんでもありです。

③差別化につながる自分の強みを言語化する
自分の強みの中で、他のライターとの差別化につながるものを言語化してみてください。たとえばぼくなら、「ストーリーが書ける」「扱えるジャンルが幅広い」等があります。

④共感呼ぶ弱みを言語化する
人は他者の弱みに反応し、共感を覚えます。漫画家の藤子不二雄氏はそのあたりの機微をキャラクター造形にしばしば活用しています。ドラえもんがネズミを苦手なのも、オバケのQ太郎が犬を苦手とするのも親しみを醸成する演出のひとつです。同じく、ライターもわかりやすい弱点を定義しておくと読者から共感してもらいやすくなります。

⑤使命を設定する
「○○をするためにライターをしている」といった使命につながる設定を言語化してみてください。使命は価値観とも密接につながるため、自己定義の輪郭を際立たせるのに役立ちます。また、公共性の高い使命を掲げることには、他者からの共感や支持を得やすくなる、という利点もあります。

◆まとめ

いかがでしたか? AIが台頭する中、これからは「私」を載せるライティングが生き残りのカギになります。その一歩目になるのが「私」の確立。自身の価値観や使命感に照らして、社会や世界を語ることにより、AIには書けない独自性の高いコンテンツを制作できます。

このコラムではそのやり方についても詳しく語りました。個性を自分で理解し、確立できるよう、ぜひ日々の活動の中に取り入れてみてください。

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