美はわずか数秒の中にある
中嶋悟さん、
アイルトン・セナ、
ナイジェル・マンセル、
ジャン・アレジ、
ネルソン・ピケ・・・。
この方たちをご存じですか?
そう彼らは、かつて大活躍したF1のレーサーたち。
あぁ、懐かしいなぁ。
この方たちの名前を聞くと、高校生の頃のあんな思い出や
こんな思い出が私の頭の中を駆けめぐります。
車には全く興味のなかった私ですが、
その頃好きだった人がF1の大ファンで
「この人の話についていくために、見てみよう!」と
思ったのがきっかけでした。
レースそのものも面白かったのですが、
私が好きだったのは、ピットストップでのタイヤ交換のシーン。
この時間だけは唯一レーサーが何もできない瞬間。
もうピットクルーに任せるしかない。
先を急ぎたい気持ちを抑えながら、マシンがピットに入ってくる。
ピタッとラインの前で止まるや否や、
15名ほどのピットクルーがマシンを取り囲み、4本のタイヤが瞬時に交換される。
その時間、わずか6秒(今は2秒!)。
もう神業としか言いようがない手さばき。
コンマ1秒のタイムを争うF1では、
1秒の遅れでさえ、その後のレースの命取りになるもの。
もしレーサーがコース上で1秒の遅れを取り戻そうと思ったら、
仮に300kmで走っていた場合、1/10秒差だとしても8mちょっと。
と言うことは1秒だと80m以上の差・・・。
この距離を縮めるのは、
どんなにテクニックがあるレーサーでも至難の業。
だから勝つための“コンマ1秒を削る戦い”が
メカニックたちの中で日々繰り広げられている。
車体の軽量化や耐久性のためにどの素材を使うのか。
さまざまなパーツの組み合わせでできているマシンゆえに
小さなネジやボルトといったパーツが大きな存在感を持つ。
こんなことを聞いてしまうと、
職人好きの私はキューンとしてしまいます。
話は大きく変わりますが、
先日の土曜日と日曜日は、熱海で2年ぶりの親族との再会がありました。
私の指だけでつなげた姪たちや甥の小さかった手が、
ギュッと私の手を握ってくるあの感じ。
とても愛おしいものでした。
2年ってやっぱり長かったなと思います。
なぜ今回熱海に行ったのかと言えば、それは“花火を見るため”。
熱海湾では毎年『熱海海上花火大会』が行われていて、
ホテルから見ることができます。
私たちが泊ったホテルでは、その時間だけ屋上が開放されました。
温泉を満喫した後、温かくして屋上に上がったものの
「寒いからお部屋に帰ろう」と子どもたち。
「じゃぁ、ちょっと見てからお部屋に戻ろうね」と話していたその時、
ドーンと大きな音が。
その音の大きさに一瞬たじろいだ子どもたちでしたが、
目のすぐ前で徐々に膨らんで迫ってくるような花火に
「ワオー!」「オー!」「きれいだー!」「うるさいっ!!」
「おおきい!!」「いっぱいだ!!」と大興奮。
もう寒さなんてすっかり忘れている様子です。
彼らの目の前には屋上の柵だけで、誰の背中も頭も見えません。
間近で何も遮るものがない状況で見た、20分間のあの花火。
絶対に忘れることはないでしょう。
私たちが楽しんだこの花火は、何人もの職人さんの手を通して
1か月以上の時間を経て作られたもの。
夜を今から楽しみにしている観客のために、
それらを朝の早い時間からセッティングをして
その時を待つ。
開始時刻が刻々と近づいてきて、
10、9、8・・とカウントダウンが始まり、
0の声と共にボタンをON!
ドーンという大きな音と共に打ちあがった花火も
わずか6秒ほどで終わってしまう。
なんとあっけないものなのか。
でもそれゆえに美しい。
F1のピットクルーやメカニックはレーサーやチームのため、
花火師は空を見上げる観客のため、
ほんの数秒のことのために命をかけている。
あー職人さんってかっこいい。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。