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【ゲームシナリオ志望者必須】ゲーム制作に必要なテキストとシナリオのお話し   2-1.自らがディレクター兼シナリオのゲームシナリオ作法

キミは見事にゲームを作る環境を手に入れた。自らの企画をプレゼンして機会を得たか、膨大な資金を元に開発環境を構築したか、それとも個人制作か。

ともあれ、ゲームを作り始めるまでの道のりは大変だっただろう。これで大好きなゲームを作って、ゲームのシナリオを書ける。幸せの絶頂である。
そして一歩間違えれば、いや間違えなくても、行く先は苦難の連続。であるのは疑いようのない事実だろう。そんな天国と地獄が混在する開発のるつぼへ、見事足を踏み出すことになる。

そんなわけで、本講座で何度目になるだろうか、読者をうんざりさせてしまうだろうが、今回も判断をするための選択が立ちはだかる。

2-1-1.まずはシナリオのテーマとコンセプトを構築しよう

テーマ/コンセプトとは企画書の範疇ではあるのだが、今回はキミがその企画書を作る(もしくは作った)当人だ。

なので、シナリオの根幹と言っても良い、テーマ/コンセプトの構築方法を解説していこう。なお、シナリオ執筆に必要なテーマやコンセプト及び世界観は、企画書に書かれているものとはまた違う物となり、まとめてシナリオ仕様書と呼ぶべき物なので、企画書作法ではない事をまずは留意してもらいたい。(企画書作法に関してはまた機会があれば……)

これ以降、[テーマ][コンセプト]と記載する物は、全て「シナリオにおけるテーマやコンセプト」とさせていただく。

さて。テーマ/コンセプトと一緒くたに書かせてもらったのは、この二つはほぼ同じタイミングで作られる物だからだ。
ことシナリオにおいて列順は、テーマが優先となる。テーマがあってコンセプトが決まる方が望ましい。だが、コンセプトからテーマを導く方法もあるので、ほぼ同じタイミングで決まると考えて貰って差し支えはない。

では「テーマ」「コンセプト」とはそれぞれどのような物だろう。
おそらく読者の中には理解している人も多いとは思うが、非常に大切な根幹であるにも関わらず、プロでも違う意味合いで運用している事も多い。

結果としてゲームや作品が完成し、それが評価されるならばテーマやコンセプトの運用や理解が違っていても正解なのだが、答えは貴方の心の中に……では無責任すぎるので、ここでは私が長い制作経験から考える一つの回答例を紹介しよう。

ゲームシナリオにおける「テーマ」と「コンセプト」ってなんなんですか?


例)
「テーマ」=正義は必ず勝つ事の証明
「コンセプト」=世界を支配しようとする魔王を、
        特殊な力を駆使して倒し、世界を救う物語

簡素と感じただろうが、特にテーマはできるだけ簡素な方がいい。コンセプトもできれば一文で説明できる程度に収まるのがいいだろう。
できるだけ簡素な方が良い理由としては、制作中に迷子になった際、ここに必ず戻ってくるからだ。

シナリオ執筆に迷った時には、まずコンセプトに戻る。コンセプトに迷った場合は、テーマに戻る。テーマとコンセプトを揺らぎようのない程に簡潔化する事で、目指すべき標榜として機能させる事が肝要なのだ。テーマが揺るがなければ、シナリオ執筆中に降りたひらめきによって、コンセプトを変えてしまってもいいだろう。

だがその場合も、テーマだけは絶対に変えない方が良い。標榜を失っては、物語は自分勝手に歩き出し、誰も望まない結果に辿り着いてしまうなんて事もままあるのは、ある程度執筆経験のある諸氏であれば、頷いて貰えるのではないかと思う。

執筆中、テーマを変えなければならないと感じるのであれば、それは最初に見据えたゴールの方向から逸れているだろう。その場合はテーマで据えた方向に舵を切り直すか、そもそも自分が定めたテーマが自分が書きたい物とは違って設定してしまっていたと認識し、テーマか執筆物のどちらかを却下する方が良いだろう。

ここまでテーマとコンセプトに関して書いたが、先に述べた通り、とても重要な部分なのに運用は人それぞれである。再度言うが、これはあくまで私が定めている物であり、これを下敷きにするでもよし、全く違う方法でもよし。自分が誰しもを納得させられる様に定めて運用するのが、結局一番大事である。

「テーマ」や「コンセプト」は、広い海原に漕ぎ出す為のお手製の海図やコンパスであると同時に、それ以上に必ず目的地に辿り着くと言う決意表明の為なのかもしれない―――などとかっこつけながら、事項へと進みたいと思う。

2-1-2.シナリオに必須の三本柱

「テーマ」と「コンセプト」という目的地が決まった。さあいよいよシナリオというフロンティアに足を踏み出そう―――の前に、シナリオを形作る為には、土台となる三本柱が必要になる。

建築するには土台と柱が必要ですよね。

ここまで来たら、もうお馴染みだろう。シナリオや小説を執筆した事が無い人でも、それぞれがどんなものか想像はつくと思う。

こちらサイドはディレクター兼務なので全てを構築する必要がある。
仔細はシナリオとしての領分なので、他方の「シナリオを任されたゲーム」で説明するが、本項では「企画書記載に必要」なそれぞれの作法を紹介しよう。

逆に「企画書に記載された上記三柱はどのように書かれているか」を理解する事で、他人が書いたこれらの柱から作成するシナリオに必要な事なども理解できると思うので、企画書を書かないシナリオライターも是非覚えておいて欲しい。


「プロット」

企画書時点でのプロットは、本当にあらすじである。
また、結末は書いた方が良いだろう。着地点が見えると、上記に記載した本シナリオで伝えたい「テーマ」「コンセプト」が実感を伴い、説得力が増す。
とは言え、企画書時点でのプロットで、A4一枚の文章を読ませるのは良い手ではない。
ここでは、3~5行程度、簡潔な三幕構成が適切だろう。

用いている構成技法はサンプルです

実質的な内容はもっと複雑だとしても、企画書時点ではこの形にする。
書類を見た時点で理解して貰う必要がある為である。
逆に言えば、企画書にはこの程度しかプロットを書けない為、これを元に忠実にシナリオを書いたとしても、あまり広がりは見えないだろう。
ある程度の広がりは頭の中に置きながら、ひとまずとして企画書にこのプロットを記載して貰いたい。


「キャラクター」

企画書時点でのキャラクターは、メインキャラクターのみで構わない。
物語の5割以上、主人公と行動や目的を共にするキャラクターを記載するのが良いだろう。
逆に言えば、この時点で記載されない出現割合のキャラクターに物語を動かすギミックを持たせるのは難しいと判断もできる。
主人公、ヒロイン(ヒーロー)、ライバル、と言った主要な役割を持つキャラクターを記載しよう。

理解しやすく、簡素に、完結に、的確に。難しいけどね。

記載方法は上記にとどめておく。

名前は言わずもがなである。(仮)には絶対にしないようにしよう。
キャラクターは特に、名前を着けて意味がある。
読み手にイメージを持たせる為にも、書き手が馴染むためにも、名前をつけて人格を与えてあげよう。

肩書きは、キャラクターを一言で表した物で良い。
「超特急熱血男」「癒やしを与える存在」「偏屈強欲ジジイ」「男を惑わす妖艶そのもの」
ここで必要なのは、キャラクターの第一印象だ。
深掘りした先に違う側面を持っている場合も、それはここでは書かない。
むしろ深掘りする事がキャラクターの旨味なら「ミステリアスな~」などにすればいいだろうが、これでは「わからない事がわかる」なので、企画書ではあまり使わない方がいいだろう。

性格は、肩書きに付随する事もあれば、そうではない事もあるので、重複したとしても書いておくことにしよう。
一文では肩書きと全く同じになるかもしれないので、二文ほど使ってもいい。
性格の由来など、長くならない程度になら肉付けになるので書いても良いだろう。

そして最後に、「本ゲームに必要な情報」だが、これはゲームの目的に依るところになる。
ゲームがギャルゲーで、女の子と親密になる事が目的ならば「女の子の魅力」となるので、
スリーサイズや、好きな食べ物、可愛い仕草や口調など、魅力のアピールポイントを記載しよう。
ゲームの目的が「魔王を倒す」のRPGなら、職業や得意な技能を書くといい。
格ゲーなら「使用する格闘技や流派」などになるだろう。
このキャラクターはゲームの「どのような役割」なのかがわかる様に書く事が大事だ。

また、レイアウトや演出の範囲になるが、キャラクターのセリフもあれば良い。
これは書面の都合で入れなくても良い範囲だが、キャラクターのセリフがあると、一気にキャラクターを掴める。上に挙げた「肩書き」と同じ作用をもたらす為、紙面的には強い。

ただし、肩書きよりはキャラクターの第一印象を明確に提示するのが難しい事があるため、肩書きの代わりに記載するのではなく、肩書きの補足項目として抑えておく程度で良いと思う。

最後に「キャラクターのイラスト」があると尚良い。
ただしこれは素材が存在しているかどうかが分かれる為、キャラクターメインのゲームであるなら、イメージとなるサンプルを添えて置いても良いだろう。

A4で1ページもしくは半ページ程度に収まる範囲で、これらを考えよう。
(これがかなり難しく、研ぎ澄ませる事も苦労する場所だが、将来広報資料などでも有用になるため、研ぎ澄ませるだけ研ぎ澄ませよう)


「世界観」

所謂、世界観設定である。
場所、年代、特徴を書くといいだろう。

こちらも簡潔に。読む人が「一目で興味を引かれる」物が理想。最初の30秒で掴め!

「中世ファンタジー世界で、帝国領の一村。1400年代想定。剣と魔法、モンスターと妖精がいる」
「現代日本。都心から離れたベッドタウン。個々人に超能力の資質があり、政府がそれを管理している」

可能な限りわかりやすく、想像しやすい言葉を使って表現する事が肝要である。
「○○の様な」「○○さながら」と言った言葉を使うのも良い。

逆に、上記の様な凡例すら出せないのならば、世界観の説明に苦労する事になるだろうから、世界観説明のギミックなどをシナリオに盛り込む想定でなければ、世界観をもう少し簡素にする事を検討する必要があるだろう。

なお、この項目に関してはプロットに含めてしまっても構わない。
プロットを説明するのに、世界観を説明しなければならない場合などに、プロットの前段として世界観の説明を入れるといいだろう。

企画書に記載する世界観は以上だが、実際はできるだけ細部まで想定しておく方が良い。それだけシナリオ執筆の際に引きだしが増えるので、企画書作成時点から、別のノートに世界観の細かい物をメモしておくのが良い。しかし細部を作り込むのに夢中になるがあまり、上記の様な企画書やチーム内共有文書に書き込まないように注意は必要だ。キミの楽しい作業は、他人から見れば時間の無駄に見える事もある。必要な事だとしても、周囲を混乱させないように情報の出し方には注意を払おう。


以上が、ディレクターとして企画書に盛り込むべき、シナリオの要点である。
他にも些末があると思うかも知れないが、些末ならば企画書に入れるべきではない。
よって、企画書時点で必要なシナリオ要素は以上となる。

最後に、上記までに記載してきた、企画書に盛り込むべきシナリオの要点だが、全体を通して一番大事な事がある。それは

「嘘をつかない、隠さない」

広報資料やユーザーの前に出す情報なら、嘘をつく必要や隠す必要があるだろう。
しかし、企画書は端的に言えば、【作品を作るお金を貰う】ための説明資料だ。

お金を出す側は、嘘をつかれたり隠されたりして、お金を出すだろうか?
シナリオライターが企画書を書く際に、結末が決まっていないから、一番の驚きの部分だからと、要所を隠したりしてしまいがちだが、それは企画書では絶対にやってはならない事だと理解して頂ければと思う。

だが、そんな事言ってもこの時点で結末まで思いついてないよ、考えていたとしても、いずれもっといい物に変わるかも知れないし……と大半のライター諸氏は思うだろう。そういうときは「今、この時点で決まっている事」を記載しよう。将来的に変わったとしても、今はこう思うのだから、嘘では無いので胸を張って今の事実を伝えよう。


ここまでで、おそらく企画書ができただろう。自身がディレクターなら、自分のゲームの企画書、自身が専業シナリオなら、ディレクターが自分に発注する為の企画書が完成した。
また、私は小説などの企画書は見たことがあまり無いのだが、おそらく上記の様な項目が使われていると思うので、小説の企画書でも通ると思っている。まあだいたいそんなもんで、後は足りない所を流れで作ればいいんじゃないかな。多分()



前の回から長く開いて申し訳ありませんでした。原稿は出来上がっていたんですが……
と言う訳で、シナリオを書く為の企画が決まった所で、次回は「仲間がディレクターで、自分はシナリオを任されたゲーム」の項目になります。ただこの項目は、自身がディレクターだとしても、自身が書いた企画書を元にしてシナリオを書く事になるので、事項から共通項目となる事を踏まえて読んでいただければありがたいです。
それではまた次回、出来るだけ近いうちに……(汗

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