「ない」世界へ
わたしが10代の頃、ケータイなんてものはなかった。
ポケベルはあったけれど、
仕事で父が煩わしそうに使う姿を見ていて、
持たない、と決めて。
周りの友だちにも、持っている子はそう多くはなかったし。
なので、待ち合わせをしたら、
あらかじめ約束をした日時に、そこに行く。それだけ。
でも、問題なんて起こらないのよ。
だって、直前まで連絡を取り合う必要なんてないのだから。
普通に会って楽しく過ごし、「またね」で終わり。
翌日会う子もいれば、
そこから数か月会わない子もいて、
その間のやりとりも特になくったって大丈夫。
また会えば、普通に友だち。
そんな時代を、今の子たちはどう感じるんだろう。
「無理!」という大きな声が聞こえてきそうだけれど。
昨日、オーストラリア政府が、
「16歳未満のSNS利用禁止法案」を議会に提出したと聞いた。
確かにね。
世間をまだ知らない世代が持つには、SNSの世界はあまりに怖い。
SNSを駆使すれば、子どもなんて簡単に騙せてしまう。
でもそれは、子どもに限ったことでもないと思っていて、
世間知らずだと、大人だって怖い世界。
規制よりも、SNSの使い方を知る機会を義務付ける。
ということが大事じゃないかな、とも思う。
日本もね。
成立すれば世界初。
賛成の声が多く、可決の公算が大きいという。
違反した事業者には最大で約50億円の罰金が科されるというから、
国の本気度が分かる。
オーストラリアが一歩踏み出せば、
他の国にも、その動きは派生していくのかもしれない。
わたしは、「ない世界」から「ある世界」に変わっていった世代。
でも、いま始まろうとしているのは、
「ある世界」から「ない世界」への変化。
すでにSNSにどっぷりと浸かる子ども達が何を思い、どう感じるのか。
所持するアカウントの閉鎖に何を思うのか。
もし、収益化ができていた子どもがいたならその扱いは?
エコな生活を唱えながらも、
電気もガスも、なかなか削減できずにいる今。
「ある世界」から「ない世界」を受け入れられない大人たちが、
「ある世界」から「ない世界」に子ども達を突入させる。
ものすごく興味深い出来事だと感じている。