賃貸併用住宅から始まった二度の家づくりが、夫婦に自由な暮らしをもたらした
「賃貸併用住宅に挑戦したい」
夫がこう言ったとき、正直私は戸惑った。一戸建てのマイホームに強い憧れがあったからだ。
話し合いを重ねるうち、最初に賃貸併用住宅を建てて、しばらく運用した後に売却し、改めて一戸建てを建てるというプランに行きついた。
マイホーム一軒目として賃貸併用住宅に挑戦した結果、私たちの価値観や働き方にも大きな変化が生まれた。
家づくりは「一度きりのものではなく、暮らしに合わせて自由に変えてもいい」という柔軟な考え方が、私たちも想像していなかった未来への道を開いてくれた。
「賃貸併用住宅に挑戦したい」夫の一言がすべての始まり
夫が賃貸併用住宅に挑戦したいと思ったきっかけは、実際に賃貸併用住宅で暮らしているオーナーから話を聞いたことだった。
賃貸併用住宅で特に魅力に感じたのは、次の2点。
家賃収入をローン返済に充てられる
要件を満たせば住宅ローンを利用できる
賃貸併用住宅に暮らすオーナーのリアルな話を聞いたことにより、「今住んでいるアパートの家賃を支払うのがもったいないし、賃貸併用住宅に挑戦するなら早い方がいい」と思い始めたらしい。
夫から話を聞き、私も賃貸併用住宅の金銭的なメリットは理解できた。しかし、私には「一戸建てのマイホーム」への強い憧れがあり、賃貸併用住宅は長く暮らす家としてイメージしにくかった。
私の実家は小さな土地に建てられた家、いわゆるペンシルハウス。周囲には似たような細長い3階建ての家が並んでいた。
利便性の良い立地で環境は良かったが、やはり狭かった。私は5人きょうだいだったため、家で暮らす人数が多い。最大8人で暮らしていたときは常に物の置場に困っていて、家族間の揉め事の種にもなっていた。
このような環境で育ったからか、私は自分の物を持ち続けることに抵抗がある。保管場所に困るからだ。だから私は、大好きな本も服もぬいぐるみも、収納スペースに応じて手放してきた。
でも、大好きな物を手放すのは辛かった。本当は手元に置いておきたかった。将来は「自分の大切な物を気兼ねなく置いておける広さの家に住みたい」と思うようになったのだ。
夫が考える賃貸併用住宅は、1棟2戸の小規模なもの。自宅部分は私の実家よりもさらに狭くなる予定だ。長く暮らすことを考えたら、もっと広い家に住みたかった。
また、同じ建物内に別の家族が住んでいる状況が何十年も続くのは大きなストレスになりそうだった。一人で過ごすことが好きな私にとって、他の人との距離感を常に気にする暮らしは負担だと思えた。
ただ、夫が挑戦したいと言っていることを否定したくなかった。だから私は「賃貸併用住宅は一時的に暮らす住宅にしたい」と伝えた。夫はすぐに「それでいいよ」と納得してくれた。
こうして私たちは、まずは賃貸併用住宅に挑戦し、住宅ローン控除が終わる10年を目安に売却。その後、二軒目のマイホームとして、一戸建てを建てる計画を立てたのだった。
住み替え前提の家づくりから学んだこと
賃貸併用住宅を建てる際、「この家はいつか手放す」という前提があったおかげで、収益性を重視する賃貸アパートを建てる感覚で計画できた。
長く暮らす自宅であることを踏まえると、自宅部分と賃貸部分のバランスを取るのが難しく、家づくりが難航していたかもしれない。
賃貸併用住宅は夫がやりたいことだったので、住宅メーカーや間取り、設備などは夫にすべてお任せした。ただ、夫が希望していたエリアは私の希望とは異なっていたので、私も土地探しだけは協力した。
収益性重視で家づくりを考えた結果、総価格を抑えるために賃貸併用住宅の建築プランを持つローコストメーカーで建てることにした。将来的に売却しやすいよう、賃貸アパートにもなるよう自宅部分と賃貸部分の間取りを同じに。そして、賃貸需要やエリアの特徴を考慮して「縦割り2LDK+2LDK」の間取りに決定した。
賃貸併用住宅体験記は「ニコイチブログ」に詳しく書いているので、興味のある人がいればこちらもどうぞ。
マイホーム一軒目の賃貸併用住宅では、収益性を意識したり、将来の売却を見据えたりした家づくりになった。この経験から、家は単なる「住まい」ではなく、私たちの人生計画の一部としての意味を持つようになったのだった。
ライフステージと働き方の変化
マイホーム一軒目として賃貸併用住宅を建てた時点では、夫は不動産会社、私は住宅メーカーで働く会社員だった。
私たちは「収益化できるマイホーム」を目指していたので、月々のキャッシュフローがプラスになるように計画した。毎月かかる経費や住宅ローン返済よりも家賃収入の方が大きければ、その収益を生活費や将来の投資に充てることができる。
住居費がかからず、むしろ収益がプラスになったことで、家計に余裕が生まれた。そのおかげで、私は会社を辞めてフリーランスになる決断ができた。
時間にとらわれずに自由な働き方ができるおかげで、子どもを優先する生活にも柔軟に対応できている。
夫は賃貸併用住宅を計画した後に戸建て投資を始め、その実績をもとに中古アパートも購入。住居費がかからないことで以前よりも自己資金を貯めやすくなったことも影響し、少しずつ規模を拡大して法人化するまでに成長できた。
こうして夫は会社員として働きながら、不動産賃貸業を営む会社の社長にもなったのだ。
賃貸併用住宅を建ててから5年以上経ち、子どもが生まれて家族は4人になった。下の子は生まれつきの難病で入退院を繰り返していることもあり、実家・義実家に協力をお願いすることが増えた。
実家・義実家はどちらも遠方なので、こちらに来るときは泊まりがけになることが多い。長期間泊まりに来ても問題なく過ごせるよう、賃貸部分を空けておくのも良いのではと思うようになった。賃貸併用住宅なら完全分離型の二世帯住宅にもなるので、水回りなどのプライベート部分もお互い気にせず生活できる。
賃貸併用住宅を建ててから、夫婦の働き方やライフステージが変化。家を柔軟に使い、暮らしや働き方の変化に合わせて住まいも更新していく方針が生まれた。
マイホーム一軒目として賃貸併用住宅を建てたことで、夫婦ともに自由で自分たちらしい生活スタイルになったと思う。
売却後に始まる「2度目の家づくり」への期待
家族が増えて今の家が手狭になってきたので、売却してマイホーム二軒目を建てようと計画している。土地を購入し、賃貸併用住宅の売却先がほぼ決まり、現在は2度目の家づくりに向けて住宅メーカーを選んでいる最中だ。
マイホーム一軒目は夫が好きなように建てたので、二軒目は私の好きなように建てる予定。長く住む家を想定しているが、何があるかわからないので、今回も将来の売却を見据えて立地を選んだ。
私が理想とするのは「物を置く場所に困らない家」。床に物を置かない、掃除をしやすい家が良い。さらに、子どもが成長しても対応できる間取りを考えているところだ。
前回の家づくりでの反省点を書き出して、家族みんなが暮らしやすい家にしていきたいと思っている。
今回の家づくりでは「シンプルで快適に暮らせること」を第一に、将来の変化にも対応しやすい家を目指している。長く暮らす家だからこそ、家族が成長したり、暮らし方が変わったりしても住み続けられる工夫をあらかじめ取り入れておきたい。
マイホームは一度きりじゃなくていい
マイホームは、人生の中でも大きな買い物になる。だから、ほとんどの人は「マイホームを一度きり」と考えているのではないだろうか。
私も以前はそのように考えていたが、今は「家は暮らし方や状況に合わせて変えても良い」と思えるようになった。家族が増えたり、働き方が変わったりすると、家にも新しいニーズが生まれるからだ。
私たちはマイホームを2回建てることで、夫婦どちらも希望を満たすことができた。
一軒目の賃貸併用住宅は、収益を生み出すマイホームとして経済的な安心感をもたらしてくれた。家賃収入があることで家計にゆとりが生まれ、私たちは働き方や暮らし方を柔軟に見直すことができた。
夫は不動産投資を通じて新しい道を切り開き、私はフリーランスとして自分のペースで働くようになった。
そして、二軒目の家づくりでは、家族の成長や生活スタイルの変化に対応できる家を目指している。物をすっきり収納でき、家族がそれぞれ快適に過ごせる空間を重視し、子どもたちが成長しても住みやすい家にしたい。
「マイホームは一度きりじゃなくていい」という考え方を持つことで、家に縛られず、ライフステージに合わせた住まい方ができると気づいた。
人生は変化の連続だからこそ、家もまた、柔軟に変えられる「暮らしの器」として見つめ直すことができるだろう。