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とくべつな お花

あるひ、おんなのこがセレソという星からひっこしてきました。
どうしてかは分かりません。
おとうさんの転勤でしょうか。
おかあさんの実家があるのでしょうか。
なぜかはともかく、おんなのこはその日から、ルーシュという星で生活するようになりました。
ルーシュは、おんなのこが育ったセレソとはちがって、あしばやに時間がながれていきます。
おともだちができました。とてもきれいでやさしい子です。
でも、おともだちは歩くのがとてもはやいのです。
ひとの多いところで、おともだちとおんなのこは、はぐれてしまいました。
おともだちは、レンラクサキをコウカンしようと言い、みどりの板を見せてくれます。
でも、おんなのこには、よく分かりません。セレソでは見たことのないものばかりです。
おんなのこは、ひとりでお散歩にいくことが毎日のたのしみでした。
おともだちは上手くつくれないし、おかねもないし、ルーシュのことばも上手くしゃべれません。
でもお散歩ならとくいだからです。
ルーシュの星では、セレソでは見たことのないお花や草木やムシやドウブツにであうことができます。
セレソでは毎日みていたのに、ルーシュにはどこをさがしてもないものもあります。
おんなのこは、ひとつのお花を見つけました。
いろは、シロとクロのあいだ。あまいかおりがします。
「これ、なんていうお花なのかな」
まわりを見ると、にたお花がたくさんはえていました。
でも、おんなのこはその、ひとつのお花をだいじに、もってかえりました。
ママ、びっくりするかな。
パパ、いいっていうかな。
それでも、おんなのこは、ひとつのお花をだいじに、もってかえりました。
そのお花をそだてるために、どうしましょう。
もってかえったはいいものの、どうしていいかわかりません。
こまりました。
やがて、おんなのこはそのお花をあいするようになりました。
そのお花にピセリとかわいい名前をつけました。
でも、お花はおせわをしないと死んでしまいます。
このお花を死なせないために。
たいせつな、だいすきなピセリといっしょにいるために、
おんなのこはかんがえました。
ちいさなあたまで、いっしょうけんめいかんがえました。
そうだ、トショカンへいこう。
トショカンには、本がたくさんあります。いろいろな本があります。
かわいい本も、むずかしい本もあります。
おんなのこは、ピセリのことをしるために、本をさがしました。
「これと、これと」
トショカンで本をかりて、おうちでいっしょうけんめい読みます。
おんなのこは、読むのが速くないです。
よく知らないルーシュのことばで書かれているので、いっそうむずかしいです。
でも、おんなのこはがんばって読みます。
ピセリは、ほんとうはダンデライオンというなまえだと知りました。
でも、おんなのこのそだてているお花はピセリです。
どこにでも、たくさん咲いているお花のひとつですが、
おんなのこにとっては、とくべつだからです。
やがておんなのこは、トショカンの本は、かえす日がきまっていると知りました。
まだよめていない本があります。
トショカンはとおいので、いつも行けるわけではありません。
おんなのこは、いそいで読みました。
ピセリのことを知るために。だいすきなピセリを、きずつけないために。まもるために。
おんなのこにとって、こんなにがんばるのは、はじめてでした。
セレソでは、じかんはいくらでもあるからです。

ときはすぎ、おんなのこはピセリをそだて始めて3ねんになりました。
ルーシュでの生活にもなれ、ピセリへの愛もおおきく大きくなりました。
おんなのこは、いまでもピセリのことをべんきょうします。
トショカンに行っては、ズカンをかりてダンデライオンのページをしらべます。
しらべるために、ルーシュのことばも勉強します。
とてもたいへんで、つかれますが、それでもがんばります。

ピセリは、おんなのこの愛するとくべつなお花だからです。

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