「泡沫少女とイデアの少年」読書レポート
2018/3/26 はてなブログ自記事より
こんにちは。あすぺるがーるです。
今回は、私が最近(と言っても、数か月前になってしまいましたが…)読んだ『泡沫少女とイデアの少年』という本の感想文を書こうと思います。
本の紹介
この本は、ボーカロイド曲を小説化した、いわゆるライトノベルというジャンルの本です。
原曲は、「林檎売りの泡沫少女」と「イデアの青年」です。
「林檎売りの泡沫少女」は、作詞・作曲者であるyukkedoluce(黒髪ストロングP)さんの中でも比較的有名な方なので、ボカロ好きの方なら聞いたことがある…かも。
(ボーカロイドが好き≠同じ曲・同じ作曲者の曲が好き、なんてことは珍しくないほど、ボカロ界隈も裾野が広いのです…どのジャンルでも同じ?)
林檎売りの泡沫少女
イデアの少年
世界観が深い。そしてなじょさんのPVが綺麗。
そんなわけで「林檎売りの泡沫少女」が大好きな私は、ノベライズの存在を知った時から「いつか絶対に買って読もう!」と思っていました。
さて本の感想を…とその前に、この話の構成とあらすじを紹介したいと思います。
※ネタバレはありません
あらすじと構成
この小説は、「林檎売りの泡沫少女」の世界と「イデアの少年」の世界の話が交互に繰り返される構成になってます。
大まかな時系列は「イデアの少年」→「林檎売りの泡沫少女」で、小説が進むにつれて2つの世界の関連性が明らかになっていきます。
林檎売りの泡沫少女
全ての人が永遠の命を持つ、永遠の世界。
その世界でただ一人有限の命を持つ少女、イルは、森の中の家に老人と二人で暮らしています。
イルは「街へは決して行ってはならない」という老人の言葉をよそ目に、毎日のように家を抜け出し、永遠の世界の街へ出かけます。
ある日、永遠の世界の街に時計塔があるのを見つけたイルは、好奇心に導かれるままに時計塔の内部へと入っていきます。
そこで出会ったのが、時計塔主である一人の少年。
自分の過去や大切な人の名前、そして自分の名前さえ忘れてしまった少年は、イルに「マド」と命名されます。
それからイルは度々時計塔へと行くようになり、マドとの親交を深めていきます。
そんなある日、イルは永遠の世界の街に通い続けたことで老人と喧嘩し、家出。
行くあてのないイルは、マドが住む時計塔のそばにある寄宿舎の一室に住むことにしました。
「何か仕事をしなくちゃ」とイルは家出の途中で見つけた赤い実でパイを作り、それを市に売りに行ったのですが、そこで事件が──
イデアの青年
酷い火傷を負った少年、エデクは、双子の弟のウェルドと共に、イヴリンという少女の家に引き取られます。
イヴリンとその父で、街一番の名医であるオーレンと家政婦のフィラリエに看病されながら、エデクとウェルドは傷を回復させていきます。
一家は様々な事件に巻き込まれながらも、着々と絆を深めていきます。
全ての事件の鍵は、ウェルドが期せずして持った「永遠」──
感想
最早ラノベというより、哲学書。
読んで考えたことと感想を一緒のブログに書こうとしたら、考えたことを言葉にまとめるのが上手くいかなくて…(そのため読んでから書くまでに2か月もかかりました)
ちょっと文体は堅めですが、文章は読みやすかったように思われます。
風景の描写とか情景描写が、すごく鮮やかで臨場感満載です。
心地よい木漏れ日が少女の頭上から降り注ぎ、枝葉が切り取った蒼い空は、森の奥へと延びる道の上にも光の筋を降ろしていた。陽光に透かしだされた緑は驚くほどに瑞々しい。
葉と葉が擦れ合う風の音や、時折思い出したようにさえずる小鳥の音、軽快なリズムで呼応しあう虫の音が聞こえてくる。まるで森全体が、少女のためだけに用意されたオーケストラのようだ。(P.8)
「ラノベは低俗」とかいう頭の固い人に見せてあげたいですね。
本のデザインも、期待を裏切らないクオリティー。
表紙・裏表紙
原曲を知らない人にもラノベになじみのない人にも読んでほしい、オススメの一作です。