ご一緒に鬼と化した奥様などいかがでしょうか。
例えばだけど、足繁く通うお気に入りの飲食店があったとして。
ある日、お会計を済ませてお店を出ようとした時に、店のおばちゃんが「いつもありがとね!」と声を掛けてくれたとしたら。わたしは心の中で「いいお店だったのに……」とつぶやき、以後そのお店の利用頻度を少し下げる。
それでもやっぱりいいお店なので、今まで通りまた通い出す。でもある日の注文時、店のおばちゃんに「今日もいつものやつね」と先回りして聞かれたとしたら。わたしは心の中で「さようなら……」とつぶやき、二度とそのお店に行かない。
必ずではないけれど、思い出せるだけで過去に2回はそんな事があった。わたしはお店との関係は出来るだけ希薄でありたい。まして常連になるなんて論外だ。
わたしにとって「いつもありがとう」「いつものやつね」は、「これからもこのペースで来店し続けろよ。そして可能なら来店ペースを上げやがれワレコラー」「こっちはいつものだと思ってもう作り始めてんだぞ。よもやよもや他のものをオーダーする気じゃねえだろうなワレコラー」にしか聞こえない。感謝や気遣いの言葉ではなく、いつもどおりの行動を強要する脅迫と捉えてしまう。
わたしはお店側が放つ『溢れ出す常連感』がものすごく苦手だ。いつも安定してお金を使ってくれる常連さんが大切なのは分かる。でも表向きだけでいいから、お店側には常連さんも一見さんも分け隔てなく扱っている感を出して欲しい。
そもそも『常連』『一見』という言葉自体に反吐が出るほどの気持ち悪さを感じる。なぜどちらも同じ『お客さん』ではダメなのか。だからお店側から「常連さん」という言葉を聞くと一気に冷める。亜高速でスンッてなる。
以前、知人がお店を開いたというので訪ねた事がある。これからちょくちょく通わせてもらおうかと思ったけど、イカれた九官鳥レベルで「常連さん」を連呼する知人を見て、何だか冷めてしまってそれ以来一度も足を運んでいない。キャバクラですごく楽しく飲んでお話した後の会計時くらいキンキンに冷めた。冷めたというか覚めた。そしてキャバ嬢さんの名刺をゲットすることが出来なかった悔しさから次の店にアタックし、やっぱり名刺をもらえなかった上に終電を逃してネカフェで一夜を過ごすところまでがセットだ。ご一緒に鬼と化した奥さまなどはいかがでしょうか。