官能小説風健康診断
「全てを調べられて」
その日、をとぎは憂鬱だった。
年に1回の健康診断は、をとぎのテンションを日常の半分以下にすることは容易だった。
をとぎは、面倒臭いという気持ちを抱えながら、渋谷のとあるビルへと入っていく。
受付を済ませた後に待合席で待っているをとぎは、少しの気だるさと、大きめの不安と緊張を考えながら、自分の名前が呼ばれるのを待っていた。
「をとぎさん。」
かれこれ15分ほど焦らされたのち、着替えを受け取り、更衣室へと向かう。
更衣室の中には仕切りなど無く、他の男から丸見えの状態で着替えを済ませなければならなかった。
をとぎは着ていたトレーナーを脱ぐと、男にしては細く、白い腕をあらわにし、そのままズボンに手をかけた。するりと落ちるをとぎのズボン。中からはうっすらと毛の生えた脚が姿を見せ、をとぎは局部を下着で隠している以外は裸になっていた。
着替えは茶色く、少し艶のあるTシャツと、同じ色、同じ素材のズボンが提供されていた。それを着ることで、布越しでも肌の質感が分かるくらい、それが生地の薄い服であることが分かった。
待合室には、同じ格好のオスが、自分の番号を呼ばれるのを待っていた。緊張している者、落胆している者、悟っている者。さまざまな表情を横目に、をとぎは光沢のある濃い茶色のソファに座った。
をとぎは、男に番号で呼ばれ(をとぎの番号は37番)、言われるがままに機械の前に立った。をとぎは抵抗する術を知らなかった。男はをとぎを独りにさせ、お気に入りのポーズで立たせると、真剣な表情で隣の部屋に移り、そして出てきた。
「撮影が終わりましたので、またソファでお待ちください。」
をとぎは写真を撮られることも知らず、男の思う最高のポーズで立っていたのである。
をとぎは、悔しさと恥ずかしさが同じくらい溢れかえり、逃げるようにその部屋を後にした。
その写真がどう使われるかも知らずに。
次に37番が呼ばれ、部屋に案内されると、今度は女性がをとぎの身体の隅から隅まで、をとぎの生きてきた26年間をなぞるように、大胆に距離を詰め、しかし丁寧な手つきで計測し始めた。
をとぎは計測されることに対して、恥ずかしさと共に、それを受け入れている自分を発見し、なぜ自分は計測を受け入れているのだろうと考え始めたが、途中で考えるのをやめた。それよりも、計測されることに集中したかった。
計測を終えると、をとぎの身体は、強張りを残しつつも、少し力の抜けた、何とも言えない状態になっていた。
自分の身体を休めようと、ソファに座った時だった。
「37番の方」
再びをとぎの番号が呼ばれた。
女性の案内に従い、着いていくと、椅子に座らされ、右手を出すように言われた。
女性は鈍い銀色の、硬い棒を手に握り、をとぎの体内へと挿しこんだ。
「...!?!?」
をとぎは何が起きたか瞬時には理解できなかったが、痛みを感じ、その光景を見て驚きを隠せなかった。
硬く、細くて長いソレが、自身の自慢でもある、透き通った白い肌に潜り込んでいた。高まる鼓動。抜く素振りを見せない女性。痛み、恥じらい、今までに感じたことのない感情がをとぎを包み込む。そして、トクトクと体外へと流れ出るをとぎの体液。その数分は、をとぎにとっては一生のように感じた。
「あと2本分あります。」
をとぎは女性の言葉を聞いても、抵抗する気も起きなかった。
青白い血管が浮き出るをとぎの肘の内側の雪原には、立派な槍が突き挿さっていた。をとぎはその景色に目を向けたり、そこから目を背けたり、落ち着きの無い一面を女性に見られていた。をとぎは、痛みに耐えながら、目を半分開け、下唇を噛み、今までの人生で誰にも見せたことのない表情を、目の前の、今日初めて出会った女性に、まじまじと見られている。淡々と"作業"をこなす女性。今にも声が出そうなをとぎ。をとぎの綺麗な腕に挿さる鋼鉄の銀棒。溢れ出るをとぎの体液。一心不乱にそれを溜める女性。周りに人がいる状況も気にせず、2人は互いの様子を繊細に確認しながら、各々の絶頂に向かい、そして達した。
「ありがとうございました。」
をとぎの口からは、感謝の言葉が漏れ出ていた。
をとぎはあのようなことをされながらも、自分がまた一歩大人になれたと感じていた。
家に帰ったをとぎは、挿入された箇所に、優しく唇を重ねた。