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POOLのちょっとだけウンチク  第12回 クリスマス・ソング selected by Maika Loubté / 中田クルミ

WOWOW MUSICがお送りする、音楽好きのためのコミュニティ"//POOL"
その企画・構成を担当する吉田雄生が、いつものあの曲の響きがちょっと変わる(かもしれない)
とっておきのウンチクを書き綴ります。

今回のPOOLはクリスマス・スペシャル企画、マイカ・ルブテさんをお迎えして、中田クルミと“とっておきのクリスマス・ソング”をお互いにかけあうという「クリスマスじゃんけん(?)」を行った。王道あり、変化球あり、と多彩なクリスマス・ソングの掛け合いもまた楽しい。ということで、今回は僕も自分のとっておきのクリスマス・ソングについて語ろうと思う。

『Happy Xmas War Is Over』

この時期になると、必ずチャートインしてくるクリスマス・ソングがある。ほとんどが古い曲たちで、1971年の12月に発表されたジョン・レノン&オノ・ヨーコの『Happy Xmas(War Is Over)』もその代表的な曲の一つだ。

ジョンとヨーコが「WAR IS OVER IF YOU WANT IT」(戦争は終わる もしあなたがそれを望むなら)というメッセージを世界中に発信したのは1969年のクリスマスのことである。

アーティストが、曲のプロモーションでもない時期に、こうしたメッセージを該当広告として掲げたのは、今も昔もジョンとヨーコだけだろう。当時は、ベトナム戦争が泥沼化していた1969年は若者たちが“LOVE&PEACE”一斉に唱え始めていた。1969年夏に行われ、40万人の若者が集まったウッドストック・フェスティバルはその象徴的なイベントだった。

「WAR IS OVER IF YOU WANT IT」

先頃配信された『ザ・ビートルズ:Get Back』も1969年1月の22日間の出来事だった。この22日間をありのままに収録したその内容は、いままでビートルズの概念を覆す嬉しい事実が淡々と描かれている。

それはまた別の機会にたっぷり語ることにして(これについては止まらなくなる・・・)、後半の映像に、ヨーコの離婚調停が成立してみんなが祝福するシーンがある。つまり、この時までジョンとヨーコは夫婦ではなく単に恋人だったわけだ。

ゲット・バック・セッションが終わったわずか2か月後の3月、ジョンとヨーコは、イベリア半島の小さな街ジブラルタルで挙式を行い、正式に夫婦となる。新婚旅行ではホテルの一室に籠り、ジョンとヨーコがベッドで記者のインタビューを受けるという「ベッド・イン」パフォーマンスを行った。

二人の背後には「LOVE&PEACE」と書かれたメッセージ(おそらくはヨーコが毛筆で書いた文字)があった。興味本位で集まった世界中の記者たちが、その模様を一斉に報じたたわけだから、そのメッセージは瞬く間に広がった。
いまでこそ、この出来事は歴史的に意味あるものとなっているが、当時は単に「スーパースタースターの奇行」、「奇妙なカップル」と捉える人も多かった。それはそうだろう。

ゲット・バックの映像に映っているオノ・ヨーコは、ジョンにべったりと張り付いて、確かに妙な存在にしか見えない。二人が世界中のビルボードに「WAR IS OVER IF YOU WANT IT」とメッセージしたのはその年のクリスマスのことだったのだ。
このメッセージに曲をのせてクリスマス・ソングとして発表したのは、それから2年後の1971年の12月のことだ。僕がこの曲が素敵だと思うのは、冒頭のささやきである。「ハッピークリスマス、キョーコ」、「ハッピークリスマス、ジュリアン」これは言うまでもなく、離別したパートナーとの間に生まれた子供の名である。

『Happy Xmas War Is Over』は決して大上段なメッセージではなく、個人的な出来事から発想したものなのだ。だからこそ、この曲には嘘がない。人としての、弱さも苦悩もありのままに表現する。ジョンとヨーコのメッセージが時を超えて愛されている理由は、その嘘の無さだ。『Get Back』の映像を観てその意を強くした今年のクリスマスである。

(文・吉田雄生・WOWOW MUSIC//POOL企画・構成担当)

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