秋の向日葵9
立川 M 生桃
ホストクラブのオーナーが、私と恵子にニッコリ笑って挨拶した。
すると、カウンターのホストがフルーツ盛りを私と恵子のテーブルに置いた。
『オーナーからです。』と言ってニッコリ笑った。
オーナーが『この店、初めてですか? 』と話しかけてきた。
恵子が『はい。初めてです。あそこの方は? ビップなお客様ですか? 』
『え。常連のお客様ですよ。 』と返事が返ってきた。
『そうですか? 常連さんは車の送迎してもらえるの? 』と恵子が聞いた。
オーナーは少し困った顔をして『実は、昼間デイサービスと建築関係の仕事で夜はホストクラブを経営しているんですよ。』と話した。
昼間の従業員が夜、当番制でホストをしている。
と説明してくれた。しかし、恵子は納得いかない顔をした。 私も同じだった。常連さんの送迎の話をはぐらかされた感じだったから。
結局。話はそこで終わってしまった。
私と恵子はオレンジジュースを頼んだ。
お店にオーナーを含めホストは3人だった。
お客は私達とビップの3人だけだった。まるで貸切状態だった。
それからは、少し顔の濃いホストが私達を接客した。恵子が年齢や恋人がいるのか? など、前の職業など聞いていた。
20代後半や30代で、既に家庭を持っている人達ばかりだった。
恵子はホストの男性が独身でなく、子供がいる人ばかりで、夢がないと私に小さな声で話した。
1時間が近づいた頃。『延長しますか?』と聞いてきた。恵子が首を横に振った。
私と恵子は結構、この店に飽きていた。
会話が全然弾まないからだ。普通の世間話ばかりで面白くなかった。
私が時間も無いので、美容師のバイトの事を聞いてみた。
すると『純ちゃんの事? 』そう返事が返ってきた。
恵子と私は顔を見合わせた。 美容師のバイトが純? その純ちゃんは、体調が悪く休みがちになり、3日前に辞めたいと電話があった。と聞かされた。
彼を目当てであった事や友達だとわかると内緒だとお店を辞めた理由を教えてくれた。
私達は、お店を後にした。
お店を出て恵子が私と同じ疑問を持っていた。恵子が『彼が純ってどういう事? それに仮に純と名乗っていたとして、本当に病気なの?』
私は、『美容師のバイトの彼にラインしてみる。』そう言った。
純純にしてもその彼にしても、嘘と言うか……。謎が多い。
街のネオンも消え。とても同じ街と思えなかった。私達の気持ちと同じだった。