呪われた女 11
立川 M 生桃
たけのこ婆は、家の般若湯を持って来るように言われた。
不老不死の女に苦労して、やっとの思いで会えたと思えば、実は偶然良く出会う若い女だった。
その女が、またもや無理難題を言い出した。
たけのこ婆は、馬鹿かー。ここまで来て、簡単に帰れるもんかね。
どこか、近くの般若湯を探し出し、それを渡すことにしたのでした。
たけのこ婆は、天狗を呼ぶことにしました。天狗を呼ぶには、烏を呼ばないといけません。たけのこ婆は、4〜5年前から烏を手なずけていたのです。おーい。五右衛門の乗、来ておくれよ。お前の好きな黒弾薬だよ。そう言って呼ぶと、空から一羽の烏が鳴いて、たけのこ婆の肩にとまりました。
たけのこ婆は、掌の黒弾薬を烏に食べさせました。
さあ。五右衛門の乗や。天狗の所はお行き。そして、私のところへ、天狗どんを連れて来ておくれ。
そう言うと、烏は空高く飛んでいきました。
しばらくすると、天狗がやって来ました。
おい。たけのこ婆。何のようじゃ。
よく来てくれたよ。この近くの、般若湯が湧き出る所を探しておくれよ。
たけのこ婆。なくはないが。。。七面池の所にあるが、あそこは近寄らない方が良い。
お前の井戸の般若湯をわしが、瓢箪に入れて持って来てやろう。その代わり、お前の井戸の般若湯をわしが、いつでも持って帰って飲んでも良いな。
わかったよ。3回だけ、好きに持ち帰っても良いよ。だけど3回だけだよ。いいね。
天狗は、たけのこ婆の頼みを聞く事にして、約束をするのでした。
そして、空高く飛んで行きました。
しばらくすると、天狗が瓢箪に、般若湯を入れて戻ってきました。
お前さん。ありがとうよ。たけのこ婆は瓢箪を持って、一目散にあの屋敷に行きました。
今度は、すんなり四脚門も、大蛇の階段も通ることができました。
屋敷の中に入ると、そこに先客が、5人座っていました。
いや違う。私の方が先客なのにと、たけのこ婆は思いました。
そこへ、乞食の男が、湯呑み茶碗を持ってきました。
おい。たけのこ婆。早く、その瓢箪の般若湯をわしによこせ。
そう言って、湯のみ茶碗の中に、般若湯を注ぎ、皆んなに振る舞うのでした。
そこへ、あの若い女がやってきました。
さあ。早く般若湯を飲みなさい。
今、阿弥陀様へ般若湯のお供えをしたから、さあ。飲みなさい。
たけのこ婆も飲んだのです。すると不思議と、いつもの味と違っていました。なんとも言えず、甘過ぎず、濃くがあり、それでいてサラッとしていたのです。
みんなが次々、もう一杯と呑んでいると、みんなの姿が変わっていきました。
たけのこ婆は、それを見て、怖くて怖くて身動きができなくなったのです。