ユーモレスク 4
1章 アルツとオグリ(4)
tatikawa kitou
その翌日。教室でオグリは2枚のカードを同級生に見せびらかした。どうだ(ええじゃろう)と言わんばかり、自慢げな調子にだ。同級生の数人はオグリのカードを見た瞬間、(プッ)と心の中で噴いた。
おおよその同級生が同調して「そうじゃね」と合わせたのは、どうかんのオグリが怖かったせいで、本当のことはアルツにだけ伝えた。
「蜂須賀君。小栗君のアレ価値ないよ。『質札』にもならんよ」
「なして?」
「ショッカーしかおらんカードはハズレじゃもん。人気ないよ。ババ抜きのババみたいなもんだもん」
カッ、ときた。 同級生にではない。イクタにだ。
アルツの家で作戦会議を開いた。
オ:「やるか(ケンカするか)?」
ア:「喧嘩両成敗じゃ(割に)合わん。騙されたほうより騙したほうが絶対悪いじゃろ」
オ:「先生に言うんか?」
ア:「めめしいっちゃ」
へそくりを切り崩し、二人とも初めてライダースナックを1袋ずつ買った。包装されたライダーカード2枚。小栗のほうの1枚を開けた。幸い、いいカードが出た。仮面ライダーが空を飛んでライダーキックを放つポーズ。
『質札』ができた。アルツのほうの1枚は開けなかった。
「アルツ。これは50年後に一緒に開けようぜ」
アルツのほうの1枚は開けなかった。どうしてオグリが50年後と言ったものか。ともかくスナックは2袋ともアルツの父が棲む仏壇に供えた。
合掌。
(南無阿弥陀仏)
(南無大師遍照金剛)
「よしっ」
筋が通った。
定規とピンセットとボンド。それにプラスチック板とカッター。二人は息を殺していた。お互いに眉をひそめ将棋盤に差し向かい、カードへ移植手術を施していた。
ショッカーカードの裏表、薄い紙面をピンセットで剥ぎ、残った厚紙とそっくり同じサイズの厚さ0.5㎜プラスチック板に差し替えた。(ふーっ)2枚のスーパーショッカーカードを完成させた。最強の『打ち札』ができた。
ベニヤ板の上で打った。風圧がまったく違った。
ライダーキックの『質札』は、いともたやすくクルクル回りひっくり返った。時に勢い余り一回転して表に戻ってしまった。それで念には念を入れ、打つ入射角、力加減をとことん練習し、やがて極めた。
「復讐じゃ」
Continuer
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