コンパレータモデルについて
こんにちは!
最近「ダンダダン」と「アオのハコ」にハマっているヲタPTです。
青春っていいですね。私も高校生に戻りたいと思ってしまいます。
最近は、アニメから原作漫画を読むのが最近のマイブームです。
さて今回は、最近よく耳にするようになった「コンパレータモデル」について、説明させていただきます。
前回投稿した身体認知においても重要なモデルであり、
コンパレータモデルを基に行為主体感や身体所有感が構築されています。
身体認知についてはこちら⇊
今回は「コンパレータモデル」の概要と
どのように身体認知は創出されるのかについて解説していきます。
コンパレータモデルとは
コンパレータモデルとは、結論から言うと…
「能動運動時における、感覚結果の予測と実際の感覚フィードバックを比較するモデル」のことであり、行為主体感や身体所有感の生成に関与すると言われています。
例えば、「肘を曲げる」という運動時、
脳(前頭葉)からは「肘を曲げる」という運動プログラムが生成され、
指令が出されます。この指令と同時に遠心性コピーが生じ「肘が曲がるであろう」という感覚結果の予測が生成されます。
実際に「肘が曲がる」という運動実行が生じた際に、体性感覚や視覚情報が感覚フィードバックとして感覚結果の予測と比較され、
この予測と感覚フィードバックが一致した際に「この肘を曲げたのは自分である」という行為主体感が創出されます。
前回紹介した「Rubber Hand Illusion」でもコンパレータモデルを基に身体所有感が創出されていることが説明できます。
ラバーハンドが筆で撫でられる前に、ヒトは筆が手に近づいてきた際に「手を筆で撫でられた感覚」を過去の経験を基に予測します(頭頂葉)。
その感覚予測と実際に本物の手に感じた「手を筆で撫でられた感覚(感覚フィードバック)」が同期的に一致した際に身体所有感が生じます。
このようにコンパレータモデルは、
身体認知の創出に関与していると言えます。
コンパレータモデルは運動制御に関与する
このコンパレータモデルは、
適応的運動生成に重要な役割を果たしています。
ヒトは、常に視覚や体性感覚情報により更新される現在の自己身体に関する脳内身体表象(内部モデル)と、視覚情報から得られる外部環境から、
目的とする行為の計画と行為の結果から得られる感覚結果を予測し、
実際の感覚フィードバックと照合しながら、外部環境に適した行為が生成されてます。
例えば「コップに注がれた水を飲みたいな~」と思った時、
皆さんは、コップに手を伸ばしますよね。
この時、脳内では、
運動を行う前に、現在の体性感覚情報(現在の自己身体位置の把握)と視覚情報(自己身体とコップとの距離)、過去の「コップに手を伸ばして把手を把持する」という運動経験を統合し「コップに手を伸ばし把手を把持する」という運動プログラムが生成され、運動指令の後、感覚結果の予測が生じます。
その後、実際に「コップに手を伸ばし把手を把持できた」という感覚フィードバックと照合され(この場合、把持できているので一致している)、自己の運動として帰属されます。
コップが把持できず、予測と実際の感覚フィードバックの不一致が生じた場合は、誤差信号が生じ、次回の行為に向けて「コップに手を伸ばし取手を把持する」という運動プログラムが修正されます。
このように、能動的な運動において、コンパレータモデルでは、
運動の感覚結果の予測と実際の感覚フィードバックを比較しながら、
外部環境に適した運動を生成しています。
感覚結果の予測と実際の感覚フィードバックの不一致が生じると身体認知が変容する
脳卒中患者では、麻痺肢の身体認知が変容すると言われています。
それは何故でしょうか?
これもコンパレータモデルを用いて説明することができます。
脳梗塞や脳出血、末梢神経障害により皮質脊髄路や末梢神経に損傷を受けると、運動機能障害が生じます。
例えば「手を動かす」場合で考えた時、神経系に損傷を受けた患者様は、
手を動かそうとしても、運動機能障害により運動実行が困難となります。
すると、コンパレータモデルでは「手が動く」という感覚結果の予測があるのに対して、実際には「手が動かない」という感覚フィードバックが返ってくるため、感覚結果の予測と感覚フィードバックの不一致が生じ、行為主体感や身体所有感は創出されません。
この感覚結果の予測と感覚フィードバックの不一致が生じると「この手は私の手じゃないみたい」「手が痺れる」などの身体認知の変容が疑われる訴えが聞かれることがあります。そのため、麻痺肢の学習性不使用が生じると考えられています。
また感覚障害により、体性感覚による感覚フィードバックにエラーが生じると、力の調節が上手くいかず、運動制御が困難となる場合もあります(感覚性運動失調など)。
そのため臨床現場では、
患者様のこのような訴えは聞き逃してはいけません。
身体認知を再構築するためには
では、このように身体認知が変容した患者様に対して、
どのように身体認知を再構築していくのでしょうか?
結論から言うと、
同期的に感覚フィードバックを入力することが重要になります。
コンパレータモデルに当てはめて考えると、神経系に損傷を受けると、
運動実行や感覚フィードバックにエラーが生じるため、
できるだけ感覚結果の予測に合わせた外部からの適切な(かつ同期的な)
感覚フィードバックが必要となります。
近年、身体認知の再構築に向けたアプローチ方法として、
ブレイン・マシン・インターフェース(BMI)や
IVESのパワーアシストモードを使用した、筋収縮を筋電図で感知し、
本人の意思に合わせてアシストする方法が提案されています。
しかし、このような機器が無い施設や病院があると思います。
そのため、身体認知を再構築する際に重要なポイントを以下に示します。
本人の運動意志と同期的に感覚フィードバックを入力すること
運動課題は多少の努力感があると行為主体感を感じやすい
運動課題は必ず能動的な運動でないと感覚結果の予測が生じない
以上の点に注意する必要があります。
この内容に関しては、また後日解説したいと思います。
かなり長文となってしましましたが、
最後までご覧いただきありがとうございました!
今回の内容が皆様のお役に立てれば幸いです。
ではまた。
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