40歳自営業、痔瘻になる #5 カレーの恨み |見舞い品の感激
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糖尿病シリーズで入院した病院よりも、この病院はメシがうまい。
彩り、献立、様々な面からいって高水準である。といっても基準値がそこしかないわけなので、そこまで詳しいわけでもない。
あくまで"病院食"として期待していなかったジャンルにしては健闘している、という意味合いだ。ワイフの手料理に敵うものなど現世には存在しない。あるとしたら子供が大きくなってお父さん今日はカレー作ったよなんて言ってくれた日だろう。そして10歳の娘が非常に近い将来それを叶えてくれることを切に望む。
今日の献立:カレー
さて、この病院では献立表の掲示がされていた。残念なことに、術日当日はUDONだったが絶食のためパスされてしまっていたのだ。
仕方ない、UDONは退院後に丸亀に行けばいいとして、次のターゲッティングはここに絞られていた。そう、シーフードカレーである。
エビ、ホタテ、イカ、シーフードミックスが散りばめられた海の宝石箱。それを惜しげもなくブチ込んだシーフードカレー。当然辛味は抑えているだろうが、カレーはカレーだ。
食事のタイミングはナースコール用のスピーカーで音声案内される。
「お食事の時間です。歩ける患者さんは廊下まで取りに来てください」
これを確認すると、各階のエレベータ前に配膳車に向けて患者が並ぶ。トラップを踏んで小部屋からゾンビがわらわら出てくるかのように、おそらく手術当日、せいぜい翌日とか以外の患者が食糧車に列を作るのだ。ゾンビと違って礼儀正しく並ぶわけではあるが。
部屋番号と名前を言って膳を受け取る。いい匂いだ。間違いない。
皆心なしかウッキウキでカレーとともに部屋に戻っていく。
今日はどの部屋の空気清浄機もフル稼働だろう。
「310、三田です!」
「はい、三田さんはー・・・、こっちね」
おい。
「カレーじゃないんすか?」
「んー、三田さんはこちらになってますね」
「え?いや今日カレー・・・」
このへんで後ろに並んでるゾンビ達が不規則な動きをし始めたのでいったん引くことにする。
そして少し観察する。みんなカレーを受け取っている。
みんな、カレーだ。
僕だけ、カレーもらえなかった。
嫌がらせなんてものは人生で何度も受けてきたし、別に大半がワイの環境や能力に対する嫉妬によるものだと思っているので笑い飛ばせるが、食べ物のいじめだけは許せない。衆人環視のもと1人だけご飯を配られなかったとかではない。カレーを、くれなかったことに深い悲しみと屈辱を覚える。
そりゃ残さず食うよな。おいしそうだったもんな。
灰色とまではいわないが得意の算数で思考分割高速化、アトラスの叡智を展開。カレーがもらえなかった理由。感情論。否。そこまで悪目立ちしたり我儘言ってナースを困らせたりしてない。そも配膳係と患者係は違う。栄養論。否。見た限り老若男女幅は広いがカレーは統一されていた。階級論。否。このフロアにはいくつか差額ベッドの個室があるがそこから出てきた患者にもカレーが当たっていた。糖尿論。残るはこれしかない。偶然にも糖尿病患者向けの特別メニューが存在し、それに該当するのがワイだけだった場合。しかしこれには裏付けの数値が必要である。カロリー脂質、食物繊維の値も献立表には載っていた。カレーは確かに糖質脂質ともに高めのメニューであることは認めよう。であるならば、献立表にあるメニューの中で本日までにワイが除け者にされたものは他にあるか。術前の絶食期を除くとそれは見当たらない。そういうことか。
半ばあきらめる。そして目線をひとつ下の枠にずらすと、翌日の昼食はカレーよりも熱量、タンパク質、脂質、食物繊維すべての値が上回っている。
ということは明日のお昼もワイだけ除け者か。けものはいてものけものはいない、そんなパークは所詮アニメの中にしか存在しないのだ。
翌日の昼食。
おい。
出てるじゃん鶏の親子煮。
やっぱカレーいじわるされてんじゃん!!!!!
メロスは激怒した。必ず、かの邪知暴虐の王を除かなければならぬと決意した。ナースコールを握りしめ、今度こそウンコではなくカレーについて一般質問の権利を行使するのだ。これは北海道地区総務室長として健全な組織運営を図りガバナンスの徹底を
セリヌンティウス「ちょっとケンちゃん待った」
ワイ「ファッ!?」
セ「確かに鶏の親子には献立にもあるし、実際出てきている」
ワ「せや」
セ「献立の"和風パスタ"はどこにある?」
ワ「ファッ!?無いやんけ!!」
セ「あとそら豆のかき揚げ。たぶん、これも糖質系の調整」
ワ「ファー・・・」
セ「つまるところ、あなたのメニューは献立表から少しずつアレンジされてる。昨日のは糖質脂質の代替案が他になかったからカレーそのものが替わった。今日は和風パスタが冷奴とオクラになった」
かくしてカレー騒動は患者の健康状態に合わせた措置として納得いかざるを得ない結論となった。
退院したら、退院したらカレーが食べれるぞぉっとワイフに懇願する。決して鬼嫁とは呼ばないのだ。軍曹は機関銃の歌だけでいい。
お見舞いの品
前回は某大人向けチクワとかがやってきたが、
今回は自身でも初の見舞い品をいただいた。
フルーツバスケット、という単語は子供向けレクリエーションの名前だけだと思っていたが、よもやこんな見舞い品で受け取る日が来るとは思わなんだ。ただ冷静に考えてみると確かにフルーツ見舞い品というのはあるわけだし、自分用にはちょっと躊躇しても他人の見舞いなら、と考えることもできる。
何もそんな頂きものに偉そうに語りたいわけではなく、わざわざ来てくれて渡してくれる心遣いには感謝である。尻のようなものが見えるね、と某SNSでは突っ込まれたが、桃は確かに尻によく形容されどワイの尻はどちらかというとボツボツの梨に近い。今は毛も剃られているのでなおさらだ。共感を生む文章というのはこういうことをいう。罪のない柿と蜜柑、シャインマスカットが気の毒である。
そしてもう一方、北見から札幌に用事があったついでに寄ってくれた仲間からは、まぁ北見といえばそうだよね、そう来るよね。いや嬉しいのは何をくれたかよりも来てくれたことなんだけどさ。
患部以外に適用するのはとても爽快なのは間違いないので、これを当てて悶絶するか否かを快癒度合いのバロメータにするのが適切な使用方法と言えるだろうか。
なおワイフとパッパとマッマも来てくれたんだが、75歳になって40歳の息子を見舞う気分というのは如何なるものか。見舞い品というか注文品は「色の濃いボクサーパンツ」。ワイはトランクス派だったので、ボクサーパンツはそれほど持っておらず、術後の治療やら出血しても安心尻穴ガーゼやらでボクサーパンツのほうが何かと都合が良さそうだったという経緯。
いくつになっても息子は息子か。
息子といえば先日カテーテルを通されてしまって以来ずっと元気のない息子が心配であるが、余計なことまで書きそうなので今日はここらへんにしておく。SNS関連のリテラシーは臨界点を見極めること。できなければそもそもやらなければいい。組織の炎上対策マニュアルはワイが作ってから3年使いまわされているが、根本的なところは変わらない。
次回予告、退院。
その前に、ケツ穴ガーゼの貼り方実習っていう屈辱的なのかご褒美なのかなんとも判断ができないイベントが発生します。
今回もご覧いただきありがとうございました!
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