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今は亡き共謀者のための Ⅱ
※この記事は以下の続きですが、これ単体でも問題なく読めます。
私は過去、不適切な時期に、不適切な場所で、運命の相手と出会い、それが死んでいくのをじっと見守っていたことがあった。
その時の私がもっと若かったら、もっと派手にこねくり回していたかもしれないけれど、当時はそこそこ経験も積んで、守りたいものもあって、他者への執着を手放せるようになってきた歳だったから、
その恋は電源を外された電子機器みたいに徐々に力を失っていき、最終的には息を引き取ることになった。そして二度と充電されなかった。
でも人生の輝きとか深みって、そういうところにこそあるのかもしれないと、最近思う。
つまり、死んでいった恋、叶わなかった約束、確かに運命を感じていたのに二度と会うことのない相手とか。
そういうものは心の中で小さな結晶になるのだ。宝石と言ってもいい。
時々思い出して取り出しては、そのキラキラするものを眺めてみる。
当時の出来事に思いを馳せてみる。当時の2人に。
そしてその人に。
と、なんかカッコつけたあらすじですが、かつて私が愛したSMプレイのパートナー(変態)の話です。
続きを読みたいとリクエストしてくださった方がいらしたので、その方のために書きました。万人受けでないことはわかっているけど、求めてくれるたった一人のためにnoteを書きたい私です。リクエストありがとうございます。
***
朦朧とする頭がやたら軽く、発熱しているように熱い。
首から伸びるリードを引かれた反動で、私の頭蓋骨はカクンと揺れた。
「何の時間か分かるね?」
上からKの声が落ちてくる。私の身体を移動させたいのは分かるが、四つん這いの無理な体勢で死ぬほど責められたせいで脚が動かない。Kは素早くリードを手繰り寄せ、私の後頭部をまるでバスケットボールみたいに掴む。私は思わず小さく声をあげた。
「ほら、」
なんとかKの身体に辿り着いた私は、赤ん坊が目を閉じたまま母乳を探すように、その腿に唇をつける。視力が奪われているので触覚と位置関係だけでそれを探り当てるしかない。とかやりつつさりげなく焦らしているつもりなのだがKはそういうの望んでないのだろう。不要、とばかりに乱暴に髪を掴まれて位置を示された上、また彼の手のひらにコントロールを奪われる形になった。
「そう、奥までちゃんと咥えて」
“奥まで”が苦手な私は、空気を確保したくて何度も踠き、その度にKの強い腕で押さえつけられた。咳き込むたびにKは嬉しそうだ。
目隠しされていても分かる。Kが今どんな顔をしているか。
きっと口を大きく開けて笑っているのだ。般若の面みたいに。
いつもありがとうございます。あなたの貴重な時間やお金を、このような形で私に使ってくれること、すごいご縁だと感謝しています。私の力の源です。