壊れても、前を向くということ。「傷」に人生を乗っ取られないために。
今回は久しぶりに心理学っぽいお話をしてみようと思います。
いわゆる教科書的なお行儀のいい心理学でなくて、現場で密かに感じているナマの心理学です。
私は朝も昼も夜も人の心の“病”みたいなものと取っ組み合いをしている人間なわけですが、最近本当によく思うのが、
「病んでない人見つける方が難しいな」ということです。
それは私の職種や環境が特殊なものだからってこともあるけど、それだけじゃなくて。
仕事関係ない友人も、親族も、親族の知り合いも、知り合いの知り合いも、
たまたま見かけた人も、読んだ人も、子どもも大人も老人も、
とにかくみんな、何かしら“病”を抱えているなあと思うのです。
逆に「この人(精神的に)めちゃくちゃ健康だな!」って思う人、100人に1人くらいの割合です。体感的に。そう考えるとむしろこの世界を健康なまま生きている人の方が異常者なのではないかという気さえしてきます。
うつになって休職した、親の虐待が影響して人が怖い、小学校の頃のいじめで対人恐怖症がある、人の反応を気にしすぎてしまう、過剰適応的になってしまう、醜形恐怖があって整形がやめられない、過食嘔吐がやめられない、病的な嘘をついてしまう、性被害の経験があって男性が怖い、異様な程の異性交友をしてしまう、上司に発達障害といわれた、ADHDの特徴が当てはまる、愛着障害じゃないかと思う、パニック発作みたいなのが起きた等々。
もちろんグラデーションはありますが、みんな怖いものがあってトラウマがあって忘れられないものがあって、不得手なものがあって、手に入らないものがあるわけです。
私も例に漏れず、幼少期虐待、愛着障害、パーソナリティ障害、社交不安、多動優勢のADHDと、数えればキリがないくらい“病”を抱えていると思います。本業を偽って心療内科なり精神科なりをしれっと受診すればいくつも診断がつくでしょう。
「え、そんなわけないじゃん!だって私の周りの人、みんな“ふつー”にやってるよ?」
と思うかた多いと思いますが、
それは“ふつー”の人ではなくて、“病んでるけど努力して普通にやってるように見せてる人”なんじゃないか? その人もきっと別の場所では病んだ自分を解放していたりするんじゃないか?と思うのです。
内界は結構病んでる・すごいことになってるけど、普通に生活している人、機能している人、結構多い印象です。ていうか、人の秘密の本音ばかり聞かせていただいている私は、これが世のマジョリティーなんじゃないかって思っているくらいです。
これを読んでくださってるあなたはどうですか?
「あー自分結構やばいなー」と思う時、ありませんか?
「どうしようもうこれ以上は無理かもしれない」と思うこと、ありませんか?「もうこのへんで終わりにしたい、ふっと消えてしまいたい」と思うことは?
それでも、ギリギリの精神状態で朝起き上がり、世間一般に受け入れられるきちんとした格好をして、求められる役割を演じて、心のうちの混乱を他人に見せずになんとか“ふつう”に、無事1日を終えること、あるのではないでしょうか。
もちろん極端に重たい病気を抱えて、日常生活を送ることができない人というのはいます。一刻も早く休息と治療が必要な人というのはいます。
でもそれ以外の人は、“完全に健康”というわけでなく、“健康から病の間のグラデーション”のどこかに位置しているのだと私は思います。
そして毎日、病を抱えながら、必死に頑張って生活している。
***
このへんのジャッジは専門家にしてもらったほうがいいと思いますが、「病を抱える」といっても、その種類によって
①諸々ストップして休んだほうがいい人
②諸々ストップせず動いてるほうがいい人
③諸々を解決、調整したほうがいい人
に分けられると思います。
諸々とは、仕事や家事や人間関係や勉強や、そういう生活上の出来事、環境のことです。
①はうつ病や統合失調症の人。つまり病態の重い人。本人だけでなく医療の力が必要で、1人で無理して頑張ってもいいことありません。休養と服薬が必要なケースが多いです。
③は、本人でなく環境のほうに問題がある人。例えばブラック企業で心身ボロボロになってしまったとか、あまりに忙しすぎるとか、上司のパワハラ、夫のDV…こういうケースは、環境的な問題を解決したらもとの元気な本人に戻れることが多いし、逆に本人が薬を飲んだところで応急処置にしかなりません。こういう時本人の“病気”のせいにして社会から隔絶したり、変に薬飲ませたりすると、人生が台無しになってしまうことだってあると思います。だから注意が必要です。
でも、いちばんややこしいのは、②の人。
これ、私も該当するんですけど、「自分の中に心理的問題がある人」です。
環境はまあまあ普通。ストレスもあるけど異様なほどじゃない。何か深刻な病気を抱えていたり発症しているわけじゃない。でも苦しい。
なぜなら、物事の受け止めかたや考えかた、記憶や感情の統制に問題があるから。
本当はこの②に該当する人が、いちばん、カウンセリングに適していると思います。
そういう認知や感情や過去のわだかまりを、話して客観的に整理していくことで、自分でも気づかなかった歪みや凝りのようなものをちょっとずつほぐして、もう少し現実に適したものに変えていくと、ずっと生きやすくなるからです。
でもこういう人が、①の人みたいに「とにかく休もう!」って周りから言われて、仕事や学校から隔離されて、一度人生から戦線離脱してしまうと、その後戻るのはとても大変です。そんなふうに外界から引き離されると、一時的に楽にはなりますが、今度は自分の内界と向き合う時間が増えてしまって、自分の心の中の苦しさと四六時中向き合っていなければならなくなります。仕事をしていない、学校に行けていないことも本人を苦しめます。そして現実的にも、社会に戻りにくくなってしまいます。
②の人にとって必要なのは(もちろん休むことも必要ですが)、
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