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食事だけで私を骨抜きにした「ごはんデート」の達人の話

今回は、タイトルの通りだけれど、
私のことを食事デートだけでメロメロにした男性のことについて書きたい。

別にそんな奴に興味はねえ、と思われた方も多いかもしれないが、1分だけ聞いてほしい。なぜ私がこの人について書きたいか。

私は過去、仕事や夜職やマッチングアプ活や婚活含め、ものすごい数のサシ(1対1)での「食事デート」を経験してきている(多分5、600人はくだらないと思う)。

でも、その人はブッチギリでセンスがよく、スキルが高かった。ずば抜けて、高かった。

「上手にできる人」というのは100人いれば5人くらいいる。
でも「天才」というのは1000人に1人しかいない。

まさに稀有な存在なのだ。

考えてみてほしいのだけど、誰かを食事に誘うというのは、もっともポピュラーな「親密な関係への第一歩」であり、
どんな関係においても、「食事デート」がうまくいかなければ次のステップに進めることはまずないと言っていい。

つまりこれは多くの人が人生の伴侶、恋人、親友、もしくはビジネスパートナーなどを得るプロセスの第一関門であって、人生における非常に重要な行為なのである。

そして、これは私の持論だが、
人を見るときは「一事が万事」。

つまり初回デートの誘い方、日時のすり合わせ方、店の選び方、エスコートの仕方、店での振る舞い、食事の進め方、食事中の会話を注意深く観察すれば、その人の中身•本質が見えてくる。ということ。

だから最初の「食事デート」はめちゃくちゃ大事なのである。

私は食事でつまずいた相手とは2回目に進まない。時間の無駄だからだ。

そんな私のシビアな「食事デート」において、戦闘能力とんでもなく高いパーフェクトな男性がいたから、その人について分析してみたいと思ったのである。

※ちなみにこの人、顔はごく普通、体型もごく普通(むしろちょっとぽっちゃり?)なただのおじさんであって、イケメンとかでは決してない。

天才のセンスがそのまま手に入るとは言わないが、天才のエッセンスだけでも理解していってほしい。今回はセオリーとかを書くつもりではなく、ストーリーそのままでお話するが、エピソードの中から感じ取ってほしい。


食事デートの次に繋がらない、どうしたら食事でもう一歩親密になれるだろうと悩む男性、彼氏またはパートナー募集中で、どうしたらいい人見極められるのかしらと悩む女性、もしくは単に興味を持ってくださった方。に、読んでみてもらいたい。

(それから、これはあくまでサブとしてだけど、女性側だって食事デートで切られることはある。そんな中、私がこの天才にどうついていったのか、どう繋げていったのかも、おまけとして書いていこうと思う。)


***

ちなみにこの「食事だけでメロメロ」プロセスをもう少し具体的に言うと、以下の通りである。

0回目:
会う前からすでにその店選びのセンスの良さに「只者じゃない」と震える
1回目:
こっちが仕掛けようと思ってたのに、あまりの完璧さに初回でカウンターを喰らう
2回目:
前回の話題に関連した店→ちょっとひねった個性的なレストランでテンション上がる
3回目:
店に行くと思わせて貸し切りキッチンで手料理という意外性→警戒するが何もなく逆に意識
4回目:
カジュアルに傾いてきたところに美術館→予約困難高級鮨でもう一度トキめく
5回目:
お土産を渡したかったと、景色の良いオープンカフェへ→お喋りが弾んで距離が縮まる
6回目:
しばらく焦らされたのち、素敵な本屋→またしても予約困難店がとれたとお誘いあり。マジで良い店すぎて改めて天才と確信する。関係性の落とし所も天才

恐ろしい手練れである。

***

では早速彼のお手並みを拝見していこう。

まず初回(0回目)。

とある出会いのあと、彼から「ぜひ、2人でお話するお時間いただけませんか」という典型的なお誘いがあった。ナンパみたいなものである。

同意したものの、提案された日付はなんと1ヶ月先だった。

え1ヶ月後?と普通に驚いたが、
蓋を開けてみれば彼は、普通に忙しい人だった。

そしてちゃんと意味があったのである。

彼は私が出した微妙な日時 (平日17時に有楽町駅。2時間程度) に対するベストアンサーを練りに練っていたのだ。そして1ヶ月前ならギリ取れる予約困難店を探していたのだ。

恐らく普通の感覚ならホテルのロビーかその辺のカフェでお茶になるだろうなと待っていた私は不意打ちを喰らうことになる。

彼が送ってきたリンクを開くと、それは程よくカジュアルなのにミシュランの星付きレストラン。めちゃくちゃセンスよく、身構えるほど高級でもなく、かつあまりポピュラーでない飲茶系のバー&レストランだった。もちろん予約困難店である。私は思わず目を見開いた。

「お腹が空いていたら軽くつまめるし、空いていなければお茶やお酒だけでも美味しくいただけるお店です」

「有楽町駅から少し歩かせてしまい申し訳ないですが…」
と彼は付け加えていた。

普段の私なら、初回の待ち合わせからやたら駅から遠い店を選ばれた時点でゲンナリしてしまう。
でもこの時はそんなのどうでもいいくらい、胸が高鳴った。

全然知らなかった。こんなところにこんないいお店があったなんて。

私は食に超超超貪欲なので、まず素直にそこに行けることが嬉しかった。大変美味しそうである。

普段の食事デートだと、自分が下手にお店を知りすぎてるために、相手の提案を残念に思うことが多いのだが、彼の提案に関しては改善の余地がないというか、私の能力を完全に超えており、文句なしに最高のチョイスだった。


***

そして初めての食事デート(1回目)。

私は中途半端な時間に仕事が終わってしまい、40分ほど早く駅に着いてしまった。
迷ったが「少し早く着けそうです」と連絡したら、

「では同じ建物内に〇〇のカフェがあるのでそちらのテラス席でお待ちしています。服装は〇〇です。ゆっくりお越しください」とすぐに返事が来た。

それもめっちゃ可愛いカフェーー!!!!と心の中で叫んだ。
ていうかあなたもういたのね〜到着早!!

そのエリアはやや入り組んでいて、私は目当ての建物の構造がいまいちわからず右往左往して、結局約束の時間ギリギリに到着することになってしまったのだが、彼は連絡通りテラス席で私を待っていた。

そして、時間ギリギリになることを見越して私のぶんのドリンク(当たり障りのないノンカフェインのハーブティ)を既にオーダーしてくれていた。

笑顔で簡単な挨拶を交わすと、彼はすぐに名刺を差し出した。

「多分すぐ話しちゃうと思うんで、先に自己紹介させてください」と。

私は必要以上の個人情報を開示するつもりはなかったので若干身構えたが、

「すみません私名刺を持っていなくて」としれっと嘘をつき、手元に目線を落としたあと、

そこにあった予想外の社名と肩書きに腰を抜かしそうになった。

ここでは伏せるが、彼は、私のどちゃくそ好みの業界の、トップ企業のNo.2だったのだ。


『うわすごい当たり引いた』


お前こんなとこで何やってんだよ、ていうかこんなごっつい名刺を得体の知れない女にホイホイ出すなよ不用心すぎるだろ。
と、口から心臓出そうになりつつ、そこは百戦錬磨のつかふる。

顔の筋肉も目線もぴくりとも動かさず、にっこり微笑んで
「◯◯さんとおっしゃるんですね、よろしくお願いします」と彼の苗字を読み上げた。


ただ会社名を出されたのに触れないのも失礼かと思い、その会社が提供するサービスや商品について2、3話を振り、
「そうです、それには僕は今こんなふうに関わっています」と教えてもらった。

それら全てが、威張らず、謙遜もせず、事実を真っ直ぐみている人の言葉だった。

とても知的で、飾らず驕らず、未知の私に対しても怯えがない。
正直で勇敢で素直な人だと、この時点で思った。


レストランは予想を上回る素敵な空間で、サービスも素晴らしかった。

彼は私を柔らかくエスコートしてカウンターに座り、メニューを開いて、まず私のお酒の好みを聞き、僕も同じものを、とオーダーした。

チェイサーについても当然のように尋ねてくれ、お水も選ばせてくれた。

食事についてもまずは私に目を通させ、私のお腹状況と食べてみたいものをヒアリングしながらテキパキと流れを構成してオーダーした。

それはもう“スマート/Smart”を体現したような美しい振る舞いだった。


『この人…相当できる…』


私はすでに確信しており、気を抜くとニヤついてしまう自分の口元を制御するのに必死だった。

これは10年に一度の当たりを引いたぞ、と、頭の中がお祭り状態になっていた。


彼の会話は優雅で柔らかく、全く侵入的でなかった。

私は表情と姿勢は意図的にリラックスさせつつ、頭の芯は氷のように冷やしたまま、彼の理解と分析に努めていた。食事はもちろん非の打ち所がなかったが、そんなことはどうでも良くなってしまうくらい、会話することが面白かった。

私はその日19時から別の客との仕事があり、食事デートは2時間で強制終了となった。もちろんもっと一緒にいてみたかったが、時間制限があってよかった、と思った。

こちらが仕掛けに行くつもりが、完全に彼の勝ちだったからだ。

カウンターパンチ以降、私はコーナーに追いやられてずっと攻撃を受け続けていた。
魅力・スキル・魅力・スキル・思いやり・さりげない気配り・魅力・スキル・ユーモアの連打。

正直、体勢を立て直したかった。


彼は私がお手洗いに立った間にお会計を済ませ、コートを持って入り口で待っていた。
奢り奢られ論争は遠い銀河の果てにあり、少なくとも彼の世界には存在し得ないようだった。
私は心からお礼を言った。

駅まで戻る道で、私は「どうでしたか、今日は」と聞いてみた。

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