マイクロファイナンスの時代
マイクロファイナンスとは簡単に言えば少額貸付のことである。最低限のお金を貸付、借用者はそれを元手に事業を始めたり、教育を受けたりと生きる術を身につける。つまり、貧困者向けのローンというわけだ。
貧困家庭で生まれ育った多くの人たちは、自分たちが教育を受ける機会を逸してしまうので結局貧困層から抜け出ることができない。いわゆる負の連鎖だ。マイクロファイナンスとはその連鎖から人を救うことが最大の目的としている半慈善事業だ。
ローンなのでもちろん返済しなければならない。そして利子もつく。返済が滞ってしまうのではないかという懸念があるが、5人程度でチームを組み、そこにリーダーを置く。そして、貸付は5人のうち2名がまずは受け、その2人が返済すれば次の2名に貸し付けるという形を取っているようで、このシステムを考案したグラミン銀行の返済率はなんと98%に登るという。
貸付なので利子ももちろんつく。グラミン銀行は年20%徴収しているそうでかなり高利回りである。しかし同銀行のあるバングラデシュの経済成長率から考えるとそれでも低いとのことである。日本であれば1%ぐらいと考えられるだろうか。今はこの考えがマイクロ保険とか貸付以外にも発展しているとのことである。
この制度は前述したが貧困層支援が基本となっている。しかしながら、最近の日本ではこの少額の考え方が世間の主流となりつつある。少額ローン、少額保険、シェアリング。自分自身もお世話になっている立場なので強くは言えないが、物の消費は経済を循環させる意味で必要不可欠だ。みんながみんな少額では結局国の発展を妨げるし、貧困層に利益も回りづらくなる。
そもそも日本人の金融資産総額は1845兆円と他の国々に比べて圧倒的だ。人生をよりよく生きる手段として貯蓄というのはとても大切だが、こんなに貯め込まれてはいずれ社会的な破綻を招くことを危惧せざるを得ない。
この背景には老後不安の強さがある。一生懸命働いてきたのに老後も金に困らされてはたまらない。だからこそ、どのような状況でも無理せず生き延びられるように人は必要以上に貯金してしまうのだ。その不安を無くし、国民が貯金額を減らしても良いと思えるようになるために政治は相当努力しなければならない。このコロナで日本人の貯蓄傾向はさらに高まるものと思われる。
国が明確に老後の安定した貯金額を示し、その金額を前提として年金や社会保険対策を講じることが必要ではないだろうか。2000万円という数字は一応示されたが、その金額を貯めさせるためには給料ベースを上げなければならないと思う。日本人の平均年収は50代以上でも600万円ぐらいと、切り詰めないととても2000万円という貯蓄額には及ばない。つまり、今後も日本はマイクロファイナンスという概念から脱却できないということだ。
消費が良いことではないが、消費しないと国は豊かにならない。日本は世界で一番そのジレンマに陥っているように思う。
世界を旅するTraveler。でも、一番好きなのは日本、でも住みたいのはアメリカ・ユタ州。世界は広い、というよりも丸いを伝えたいと思っている。スナップシューターで物書き、そうありたい。趣味は早起き、仕事、読書。現在、学校教員・(NGO)DREAM STEPs顧問の2足の草鞋。