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重量拡散の間 - 大ピラミッドの巨大構造を支える驚異の空間に迫る
古代エジプトの建築家たちは、世界最大級の建造物の一つである大ピラミッドを建設する際、独創的な部屋を内部に作りました。それが、古代の知恵と技術力が結集された「重量拡散の間」です。今回は私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)による調査内容と共に、「重量拡散の間」についてご紹介します。
大ピラミッドの内部構造
約4000年前、古代エジプトの人々は世界最大級の建造物の一つである、クフ王の大ピラミッドを築き上げました。200万個以上とも言われる石材が積み上げられ、総重量約580万トンにも及ぶその壮大な姿は、古代エジプトの技術力の結晶ともいえます。
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大ピラミッドの内部は、他のピラミッドと比べ特異な構造をしており、大小様々な部屋や通路が存在しています。その中で、クフ王が埋葬されたと考えられているのが「王の間」。花崗岩製の大きな石棺が置かれたこの部屋は、ピラミッドの中央にあり、天井の梁にはピラミッドの中でも最も重い石材が使われました。
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王の間を守る五層の空間「重量拡散の間」
クフ王の大ミラミッドにおいて、最も特徴的なのが、5つのレイヤー状の部屋と、切妻構造の最上部を持つ「重量拡散の間」です。下から、デーヴィソンの間、ウェリントンの間、ネルソンの間、アーバスノット夫人の間、キャンベルの間と名付けられました。「重量拡散の間」は地上から約60m〜70m付近に存在し、ちょうど玄室の真上に存在しています。これは「王の間」の天井にかかる重みを拡散し、守るためではないかと考えられています。
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「重量拡散の間」の発見
1837年、イギリス人のハワード・ヴァイスによって「重量拡散の間」は発見されました。大きな発見ではありましたが、ハワード・ヴァイスの発掘方法は、ダイナマイトでピラミッド内部を爆破して進むという荒々しいものだったため、遺跡の破壊にもつながりました。他にもメンカウラーのピラミッドも、ハワード・ヴァイスによって爆破された生々しい痕跡が今もなお残っています。
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19世紀のダイナマイト爆破によって生じた窪みがある
近年「重量拡散の間」はエジプト政府によって厳重に保護されていました。そのため2015年から7年もの間、世界各国の研究機関やメディアも立ち入ることが出来ませんでしたが、2022年、私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は、エジプト政府から特別な許可を受け、この空間に入り3Dスキャンに成功しました。
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3Dスキャンによる調査
大回廊の上部にある小さな穴から入る「重量拡散の間」での調査は、困難を極めました。しかし、建設当時の人々が残した落書きや建造の痕跡を3Dスキャンすることは、この空間が持つ歴史的、機能的な意義について解明するために重要な手掛かりとなります。また、今回取得した3Dスキャンのデータは、今後研究発表やVR、メタバースのサービスとして多くの人の目に触れることでしょう。
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ワールドスキャンプロジェクトの目指す未来
ワールドスキャンプロジェクトの3Dスキャンの目的は、時間や場所などの制約を超えるアーカイブデータとして遺跡の姿を後世に残すこと、そして考古学研究のデータとして役立てることです。また、私たちの先進的な技術を用いたVRやメタバースを通じ、これまでアクセスが難しかった場所を広く世界に公開し、多くの人々が気軽に訪れることが可能になるでしょう。
世界を、未来を、好奇心を、身近に
「重量拡散の間」における最新の調査は、私たちの野心的なミッションの大きな第一歩となりました。これからも世界中の遺跡調査とスキャンを続け、デジタルアーカイブとして保存することで、人類共通の財産を未来へと繋げていきます。ご興味があれば、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローいただき、ぜひ応援をお願いいたします。
重量拡散の間についてはこちらの動画もご覧ください。