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メンカウラー王のピラミッド3Dスキャンプロジェクト〜ワールドスキャンプロジェクトの挑戦
ギザの砂漠にそびえ立つクフ、カフラー、メンカウラー王の巨大な三大ピラミッド。古王国時代の繁栄の象徴であり、王の権力や神聖さを表すこの巨大な王の墓のうち、最も新しく築かれたのがメンカウラー王のピラミッドです。
私たちワールドスキャンプロジェクト(W.S.P)は、名古屋大学のエジプト考古学者でナショナルジオグラフィック協会のエマージング・エクスプローラーでもある河江肖剰博士と共に、このメンカウラー王のピラミッドで共同調査を行いました。
メンカウラー王のピラミッド
このピラミッドは紀元前26世紀頃、古代エジプト第4王朝のファラオであるメンカウラー王によって建造されました。「神聖なるメンカウラー」という意味の「ネチェル・メンカウラー」、または当時ピラミッドの3分の1が赤色花崗岩で覆われていたことから中世のエジプトでは「赤いピラミッド」とも呼ばれていました。
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クフ王やカフラー王のピラミッドと比較するとメンカウラー王のピラミッドの規模は小さく、高さは約65mで基底部の面積は約4分の1、石材の総重量はクフ王のピラミッドの10分の1程度。縮小化の理由は諸説ありますが、王権の弱体化、財政不足、土地の不足などが理由として考えられています。
また、通常ピラミッドの周囲には葬祭殿や参道、河岸神殿といったピラミッド複合体(ピラミッド・コンプレックス)が建造されますが、メンカウラー王のピラミッドにおいては、王の急逝によりピラミッド複合体は未完成のままとなりました。
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破壊によりできたピラミッド の「窪み」
メンカウラー王のピラミッド は、三大ピラミッドの中では最も規模が小さいものですが、ピラミッドがどのようにして建造されたかを知るための重要な手がかりになっています。
それがピラミッド北面にできた窪みです。この窪みは元々イスラムの支配下にあった12世紀に、ピラミッドの解体や内部への侵入を目的とし掘削されました。そして19世紀にはイギリス人の軍人であるハワード・ヴァイスが、ピラミッドの入り口を見つけようとダイナマイトで爆破を行い現在のような形になったのです。
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歴史的遺物の破壊という暴力的な行為ではありましたが、内部構造が露出し石組み構造が表れたことで、ピラミッドの安定性を図るために階段状に積まれたコア構造などの発見に繋がりました。
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そして今回、ワールドスキャンプロジェクトは特別な許可を得て窪みのさらに奥を調査することに成功しました。3Dスキャンによって取得したデータを用いてピラミッド内部の解析を行いながら、建造方法の解明に挑んでいます。
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ピラミッドの内部
破壊から免れたピラミッドの入り口は地上4mの高さにあり、通路を進むと「パレスファサード」と呼ばれる凹凸の壁面装飾が施された部屋に辿り着きます。この装飾こそがクフ王やカフラー王のピラミッドとは異なる点であり、王宮のモチーフを模した凹凸の壁面は、ピラミッドが単なる墓ではなく永遠の住処としての役割を果たしていたことを物語っています。
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部屋の奥には前室がありますが、設計当初はメンカウラー王の玄室として建造される予定でした。しかし何かしらの理由で変更され、前室の下に玄室をつくる拡張工事が行われた痕跡が見られます。このような点から、古代エジプト人は図面通りにピラミッドを建造したのではなく、試行錯誤しながらピラミッドを発展させていったということが分かるでしょう。
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特に興味深いのはクフ王のピラミッドの内部にある「重量拡散の間」のような空間が、メンカウラー王のピラミッドにもあることです。ピラミッドの重量で玄室が潰れないように、玄室の屋根の上に空間をつくるという古代エジプト人の建築技術の高さがうかがえます。
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前室を下りると花崗岩でできたメンカウラー王の玄室に辿り着きます。発見当時、玄室には棺が置かれていましたが、ロンドンの大英博物館に輸送される際に船が沈没し海に沈んでしまいました。そのため、玄室に眠っていた遺体がメンカウラー王のものだったのかは未だ謎に包まれたままです。
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世界を、未来を、好奇心を、身近に
メンカウラー王のピラミッドは古代エジプトの建築技術への理解を深める上で貴重な資源であり、私たちワールドスキャンプロジェクトは、このピラミッドを含むエジプトの遺跡群に対して3Dスキャン調査を行っています。
遺跡を記録しデジタル化したデータとして保存することで、遺跡が時間の経過とともに損傷したり破壊によって失われたりしても、後世に古代の知識と素晴らしさを伝え続けることが出来ます。デジタル技術を通じて古代から現代、未来へと続く歴史のバトンを渡していくこと、それが私たちの目的です。ご興味があれば、ワールドスキャンプロジェクトの活動をフォローいただき、ぜひ応援をお願いいたします。
メンカウラー王のピラミッドについてはこちらの動画もご覧ください。