いい夢

同窓会に行く夢を見た。

今より少し若くなっていて、昔のドラマなんかで見るような大規模な立食パーティみたいな会場で、すごく見覚えのあるようなないような面子と話していると、自分を呼ぶ声がする。

するとそこにはこれまた見覚えのあるようなないような、どちらかと言えばあるような女性が立っていた。顔に「昔も今もお調子者で通ってます」と書いてあるような男が横にいて、「この子昔お前のこと好きだったんだって!」「ちょっとやめてよ、もう…」みたいな感じのやつ。

夢の中の俺は夢だと思っていないので「え~ベタ~そんなんあるの~」と思いつつも何かガチッぽくリアクションしたら全員気まずいなと思いそのお調子者以上にお調子を極めて「やだ~ンモ~照れちゃうじゃないの~」と結果的にわけの分からないリアクションをしていた。

気が付くと会場は電車の中になっている。ボックスシートに向かい合って座ると、窓の外を流れる田園風景を見つめながら彼女がゆっくりと話し出す。ちなみに地元に田園はなかった。魚臭い加工工場、真っ黒な煙を吐き出す大きな煙突、巨大なガスタンク、そんな街だった。

「今まで来なかったけど、ある程度歳を取ると同窓会もいいものだね。昔はどうしても嫌だったり受け入れられなかったりしたこともあったけど、今となってはどうしてそんな些細なことに拘っていたのか思い出せないぐらいなんだもの。それでね…」
そう言って、彼女は俺のこんなところが好きだった、あんなところが好きだったと、普段俺ってこういう面もあるんだよな~まあ自分では公言はしないけどさ~はずいから~みたいな、そっと気付いてもらえたら絶対に嬉しいようなポイントを全て抑えてくる。

「結婚したけど、なんだか懐かしくなって。言い出してたらどうなったんだろうね?」

俺はお調子者の仮面を取れずにそうね~いや~言ってくれたらよかったのに~なはは~みたいなことを言っている。

そうしている内に窓の外の景色は煤煙まみれで魚臭かった地元のあの風景、夕暮れの中電車は駅につき、皆それぞれ降りていく。

何があるわけでもない、彼女も自分もまた電車を降りて日常に戻っていくだけだ。くだらない、本当はお調子者ですらない自分に戻りたくなくて、「じゃあせっかくだし今日は送っていくよなんつってガハハ」と彼女の目を見れずに言って即後悔したが時既に遅し。

「…いいの?」

そしたら別の友達がなんか一万円渡してきてなんか生々しいな…でもいるのかな…と思ってたら目が覚めた。こんな夢でまあまあ自己肯定欲求が満たされるのだから夢ってのは不思議なもんである。

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