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なぜボードフェロープログラムをはじめたのか。

こんにちは、World in You代表の山本未生です。
現在、ボードフェロープログラムという2021年に立ち上げた新プログラムの参加お声がけをしている真っ最中なのですが、
「今までにないプログラムですね」、「なかなかニッチなプログラムですね」というコメントとともに、「なぜこんなプログラムを立ち上げたんですか?」と質問してくださる方も多いので、立ち上げの背景などを書いてみたいと思います。

ボードフェロープログラムの構想的なものを描き始めたのは、2014年にさかのぼります。 World in You(※)は、2011年東日本大震災を機に設立しました。(※:設立当時World in Asia→2014年World in Tohoku(WIT)→2022年World in Youへと改称)
被災地で復興や新しい社会づくりに取り組む社会起業家が、中長期で持続可能なインパクトのある活動をしていくことに貢献できるよう、経営支援や日米のビジネスリーダーや多様なバックグラウンドの人々と共創を目指しつなぎ、人や組織を育てることをしてきました。

「代表一人で決める」の弊害から脱するには?


熱い想いを持ち活動に取り組む社会起業家に多く出会ってきたのですが、代表一人やコア数名の限られた人で物事を決めて実行していく団体が特に設立初期は大半で、バーンアウトしたり色々な問題が生じるのもみてきました。

団体の経営者が団体にとってより良い意思決定をしていくためにも、団体や代表のことをよく理解した上で、多様な視点を団体のミッションのために掛け合わせられる、そんな「意思決定のパートナー」がもっといたらいいのに、と思ったんです。

経営における意思決定のパートナーというのは、要はボード(理事会、取締役会)です。(NPOや社団法人では社員総会も団体の重要事項を決定しますが、理事会が団体の方向性や戦略を決めるケースが多い。)

ところが、日本の非営利セクターでは、ボードに関する研修はほとんどなく、勉強する機会もほぼない。また、ボードメンバーの多様性についても、例えば私が住むアメリカでは、若い、あるいは成功したビジネスパーソンがNPOの理事になっているのを非常によく見かけます。彼らにとっては、自身の経験やつながりを活かし社会貢献する機会、リーダーシップを磨き実践する機会にもなっているのです。日本ではビジネスパーソンがNPOの理事で貢献する例は、まだまだ聞かれません。

そんな時に、Governance as Leadership(『非営利組織のガバナンス:山本未生・World in You訳 の原著)を井上英之さんから教えていただき、読んで「あ、これだ」と思いました。

ボードの重要性については、私自身がWITの2代目代表になった時にも思ったことです。自分だけで考えられることや視点は非常に限られているので、代表就任後にボードをほぼ総入れ替えしたのですが、理事会でのインサイトや個別理事との対話に本当に助けられてきました。

ボードが何をするかだけでなく、「あり方」から考える


ただ座っている理事ではなくて、団体の代表に親身になり伴走すること。代表をただ「頑張ってね」と応援するだけではなく、真に団体のミッションに向かうためにどうしたらいいのか、自分ごととして考えるようなボードメンバーや運営陣が増えたらいいなと思っていました。

他のボード関連の本や研修は、ハウツーものが多いんです。ボードの役割はこれとこれ、ここに注意しましょう、ということが書いてある。一方でその背景にある「あり方」、マインドセットについて扱っているものはそこまでないので、Governance as Leadershipはすごくいいなと思いました。

ボードやガバナンスと堂々と言えるようになった


社会起業家の「意思決定のパートナー」となるような人々が出会い、議論し、関係性をつむぐようなことをしたいと思い、ラーニングジャーニーやメンターマッチングを始めたのが2014年です。
ボードやガバナンスという言葉は、当時は、あまり通じないだろうなと思って使わないでいました。ボードメンバーに将来なってほしいとこちらは思って、(ビジネスパーソンと社会起業家を)繋ぐのですが、実際のプログラムではメンターやアドバイザーなど、皆さんがイメージしやすいような表現を使っていました。

それが、『非営利組織のガバナンス』を出版させていただき、また、日本の非営利セクターにおいてもガバナンスということが言われ始めるようになってきたので、これはもう堂々とボードやガバナンスと言っていいんだと、私も思えるようになりました。

経営の視点からソーシャルな団体と創発・貢献してみよう


そんなわけで、組織の内外から多様な視点を持った人がボードとして経営参画するとはどういうことなのか、団体にとっての価値、参画する理事個人にとっての価値は何なのか、ということに改めてフォーカスを置き、設計してきたのがボードフェロープログラムです。

イノベーションやインパクトの原石になるような、多様な視点が集まり、コレクティブな思考や智慧を経営レベルでもてたら、社会的インパクトをもっと発揮していく素敵な組織が増えるんじゃないか?! という実験です。

ビジネスセクターの方などが、ボランティアやプロボノでNPOに関わる人は増えてきています。ボランティアやプロボノも大事なのですが、その次のステップとして、全体を理解して経営の視点から参画するというオプションを考えてみよう、という提案をボードフェロープログラムには込めています。

多様な出会い、共通言語、相互理解、イシューから自分たちで探究すること


上記の意図や背景からプログラムをつくっているため、大事にしていることがいくつかあります。

まずは、多様な参加者で出会うこと。
多様な視座・経験・つながりなどは、新しい気づきや活動への後押しをもたらしてくれます。そこで、社会的ミッションを持つ3団体から、代表を含む3名ずつが参加し、そこに、ビジネス・非営利・アカデミア・公的セクターなどから多様な参加者が集まります。

次に、共通言語
多様なバックグラウンドから集まる人が、経営に関する時に抽象的な議論を本質的にしていくためには、共通言語を築いていくことが大切。非営利組織の経営やガバナンスについて、本プログラムの研修で学ぶフレームワークや知識がそのベースになるようにしています。

そして、全体性のある相互理解
参加団体のリアルな経営課題について意味のある議論をしていこうと思ったら、団体について全体感をもって理解することと、言いたいことがお互い率直に言える関係性を育んでいくことが大切。これを念頭におき、プログラムではグループワークや参加者交流を重視し、名前だけのネットワークではなく、お互いに人としで出会うことを大事にしています。

最後に、何がイシューであり、何ができるか、は自分たちで探究すること
NPOと企業などが協働するプログラムでよくみられるのは、NPO側が出した課題に企業側の参加者が提案をまとめ、それにNPOがコメントしたり受け取ったりするもの、あるいは、アワードやコンテストにNPOが応募して企業側が審査するもの。

ボードフェロープログラムはそうではなく、そもそも何が課題か、共に/お互いが何ができるのか、から出会った人々で一緒に考えていきます。一方の側の視点からだけで捉えるイシューや解決法には限界があるからです。

「そもそもこれが経営課題なんだっけ?」「●●がサポートとして必要といっていたけれど、実は■■ができるといいんじゃない?」といった創発的議論を育みたいと思っています。

World in Youがボードフェロープログラムをやる意味


私たちのビジョン「世界のどこからでも誰でもより良い社会づくりに力を発揮しあえる世界」において、ボードは1つの象徴的な話であって、どんな人でもなんらか皆さんより良い社会づくりに加担しています。
その加担度合いを深めていく、あるいは、その人ならではの加担のあり方を引き出してシェアしていけたらいいなと思っています。

一人でやるだけじゃなくて、人と人の力を合わせることで、より生まれる価値も増えると思うので、そういう動きがこのボードだけじゃなくても、色々できたらいいなと思っています。
「あなたの中の世界」world in youが、外の世界と出会うことによって、その人の中の世界が広がり豊かになりながら、外の世界をよくしていくことにも貢献していく、そういういい循環が、ボードフェロープログラムに参加くださる皆さまともつくっていきたいです。




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