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手を伸ばしても届かないモノ




アイスランド→ロンドン→イスタンブール→デリー→バンコク

と旅を終えてからも5時間ほどのフライトを数珠繋ぎに4ヶ国の寄り道をしながら日本へ近づいてきた。

日本に帰国する最後のフライト

バンコクから福岡

ドンムアン空港の14番乗り口に待つ客は大半が日本人。アナウンスも時折日本が流れている。

「もう旅が終わったんだな」

日本語が聞こえてるそう思えてくる。

日本人大学生のグループが10人ほどでバンコク最後の乾杯をしていた。他の国では一切目にすることのなかった光景。

「カンパーイ!!」

周りの目も気にせず、大きな声でお喋りをしている。周りの目を気にしないのは悪いことではない。でも、日本人は大勢集まるとこうなってしまう。

そんな事を考えてしまう僕もまた、日本人のど真ん中にいるのだろう。

他国の人はどんな目で見ているのだろうか?
団結力ととるのか?
同調意識ととるのか?
はたまたそれ以外なのか

学生の頃、僕は大学には行っていたが、校庭の芝生に座り込み男女でお喋りをしたり、学園祭でお祭り気分になったり、ゼミで旅行にいくなど、、、僕の周りには何一つ転がってこなかった。

今思えば、目の前でビールを飲んでいるようなグループに入れる種類の人間ではない。

楽しくないのにニコニコすることは辛く
仲良くないのに仲良くするのは切なく
それができない自分が抱えていたのは嫌悪感

団体行動が極めて苦手で、同調意識が芽生えた瞬間その場から離れたくなる。


今は、これでよかったと思うようになれた。
成長したのか
何かを諦めたのか



飛行機が飛び立つ
加速するエンジン音
ガタガタと揺れる機体
地面から浮き上がり
気がつけば空の一部になり
バンコクの夜景が広がる

なんだか、アイスランドが急に恋しくなってしまった。

あれだけ暇を持て余したアイスランド滞在にも関わらず、遠く離れてしまうと、あの頃を手繰り寄せるように記憶の引き出しを漁り始める。

もう、ここにはないあの頃。
いま、アイスランドに戻ってもそれは無くなっている。

もう戻ることの出来ないあの頃
人は悲しいほど時間に囚われてしまう

未来には行けず
過去には戻れず
未来と過去の隙間に存在する今という無限の世界を徘徊することしかできない。


手を伸ばしても届かない
今僕の手のひらには何があるのだろう

文字を打つスマホから手を離して
自分の手のひらを眺めてみる

もちろん何もない

たが、この手でアイスランドの大地を撫でてきた事は覚えている。






それだけでいい。
今はそれ以外は何もいらない。

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